株式会社NTTデータイントラマート
代表取締役社長中山 義人氏
桔梗原 今、働き方改革が国を挙げて大きなテーマになっています。多くの企業が取り組んでいますが、業務プロセスを見直す上で重要なことは何でしょうか、
中山 これまで「業務プロセス改革」というと、ERPを適用して、会計や人事など、間接部門の業務をスタンダードに合わせることを指すのが一般的でした。確かに間接部門の改革も必要ですが、収益を上げているのは現業の直接部門です。改革を収益に結び付けるには、直接部門のプロセスに目を向けることが必須。私は、それを本質的な業務プロセス改革と呼んでいます。
桔梗原 直接部門の業務は、業種や業態によって千差万別です。標準化が可能なものなのでしょうか。
中山 確かに間接部門のように、パッケージに自分たちの業務をそのまま合わせるということは難しいでしょう。しかし、直接部門が提供しているサービスプロセスもまた、オペレーションが属人的であったり、担当者によってサービスレベルが異なったりといった課題を抱えています。そうした課題を解消することは可能です。
桔梗原 具体的には、どのような取り組みですか
中山 当社のお客様の例をご紹介します。例えば、トッパンフォームズ様は、受託した帳票類の制作プロセスを改革しました。かつては、お客様の要望を聞き、帳票を制作。紙に印刷して確認してもらい、何度か修正を繰り返して、印刷、納品するというプロセスでしたが、現在は、Web上で帳票のサンプルを確認できるようにした上、顧客自身が必要に応じてレイアウト変更などを行えるようにセルフサービス化しました。制作作業の一部を顧客に委ねたことで、同社自身は省力化したにも関わらず、顧客はイメージ通りの帳票が仕上がると満足度が高まっています。制作期間も大幅に短縮することができました。
重電機器を取り扱う明電舎様は、千数百社に及ぶサプライヤーから部品を調達していますが、購買業務をシステム化するサプライヤーポータルを構築し、外部とのやり取りを集約しました。その上で、蓄積した購買情報を分析し、戦略的なサプライヤーマネジメントに活用していく構想を持っています。
ほかにも、都内のトヨタ販売店の5社および、物流、流通システムを担う9社が結集したトヨタ東京販売ホールディングスグループ様では、販売店での接客業務を改革しました。来店した顧客の車のナンバーをカメラで読み込み、それを顧客管理とひもづけて、ショールームの入口に名前付きで「ご来店ありがとうございます」と表示したり、店舗スタッフが接客業務をスムーズに行えるようにしています。この取り組みでサービスレベルを均質化でき、お客様の満足度向上につながっています。
日経BP総研
イノベーションICT研究所
所長桔梗原 富夫
桔梗原 直接部門は、パッケージに自分たちの業務をそのまま合わせるのは難しいということですが、業務プロセス改革をどのように進めるのでしょうか。
中山 改革の基盤となる当社の「intra-mart」は、パッケージではありませんが、スクラッチ開発するシステムでもない、ちょうど中間のプレハブ工法的な手法を採用しています。予め用意されているモジュールの中から適切なものを組み合わせることで業務プロセスを素早く構築可能。これにより「100社100様」の業務に対応できます。
また、単にシステムを提供するだけでなく、当社のコンサルタントやシステム開発チームがお客様の現場と一体となり、改革の対象となる業務の特徴などをヒアリングしながら、最適な業務プロセスを構築していきます。
桔梗原 その方法なら直接部門の強みを消すことなく、業務プロセスを改革できますね。
桔梗原 人工知能(AI)やRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)など新たなデジタル技術が実際に利用できるようになってきました。
中山 サービスの中には、人手に頼らなくてもすむ業務もあります。そうした業務はAIやRPAを活用して積極的に自動化することでムダをなくすことができます。先日、当社が発表した「IM-RPA」は、個人のルーティン業務を自動化するRPAと、複雑な業務プロセスを可視化・効率化するBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)/ワークフローを組み合わせたもの。業務全般の自動化と生産性向上を支援できます。
あるお客様は、毎月大量の書類を手作業でコンピュータに入力していました。OCRで処理しようとも考えたのですが、書類のフォーマットがバラバラなため対応できませんでした。そこでAIの機械学習を活用し、非定型のフォーマットもOCRで認識できるようにしています。さらに、承認プロセスにRPAも活用して、業務プロセス全体の自動化を進めています。
また、IoTデータとBPMをシームレスにつなぐ「intra-mart IoT Platform」によって、IoTを活用した業務プロセスをスムーズに構築することもできます。エレベーターの保守点検業務にIoTを活用され、故障などを予測した上で行うプロアクティブな保守の実現に貢献しています。こうした取り組みは、近年、多くの企業が取り組んでいる働き方の改革にもつながります。
桔梗原 これまで業務プロセス改革というと、効果が見えにくい部分もありましたが、これらの事例は競争力に直結しています。単に効率化や標準化を進めるだけでなく、最新の技術によって業務プロセスに付加価値をもたらしているのですね。
中山 intra-martで構築したサービスをクラウド上に展開し、同じ課題を抱える企業にサービスとして提供するなど、新しい収益モデルへのチャレンジを開始したお客様もいます。
桔梗原 最後に今後の展望をお聞かせください。
中山 先日、社員が主導となって2025年に向けた新たなビジョンを作り上げました。ミッションには「オープンな発想と積極的なチャレンジを通じて、人・企業・社会・そして未来をつなぎ、お客様のイノベーションと成長に貢献します」と掲げています。その上で、私たちが目指すのは、ワクワクを創り出すこと。もっと良くなるという思いをお客様と共有して、今後も本質的な業務プロセスの改革に取り組んでいきます。
イントラマート
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