経営イノベーションフォーラム RPA時代の幕開け〜AI・ロボティクスにより異次元の生産性革命が始まる〜

「働き方改革」による生産性向上が大きな経営課題になる中、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI(人工知能)に対する期待が高まっている。RPAとは、人事や経理などのホワイトカラーの業務領域で、人の動きを真似て各種アプリケーションを操作するソフト/サービスを指す。これに、AIを組み合わせれば、高度な知的作業も代行することが可能だ。RPAとAIによって働き方改革はどう革新するのか。その答えを探るべく開催されたのが「経営イノベーションフォーラム RPA時代の幕開け」(主催:日経BP総研 イノベーションICT研究所、共催:KPMGコンサルティング)だ。同フォーラムには、有力なRPA・AIベンダー各社(日本IBM、Blue Prism、ナイスジャパン、RPAテクノロジーズ、UiPath、ペガジャパン)が協賛社として名を連ね、企業で導入する上での注意点や先進事例を紹介した。ここではその内容を概括したい。

基調講演2

もはや待ったなしの働き方改革

RPAによる自動化が成長のカギ

デジタルレイバーの活用が急務に

 働き方改革の重要性が、これまでに増して高まりつつある日本社会。特に大きな課題となっているのが労働人口の減少だが、その他にももう1つ着目すべきポイントがある。それは雇用のあり方自体も大きく変容している点だ。

KPMGコンサルティング 代表取締役 副社長 秋元 比斗志氏

 「終身雇用・男性・正社員中心といった従来の雇用形態は既に過去のものとなり、スタッフ層の減少に伴って役職構造も変化することが予想されます。さらにビジネスのデジタル化によって、業務も今までとは大きく変わっていくでしょう」とKPMGコンサルティングの秋元 比斗志氏は指摘する。

 こうした状況に対応していく上では、収益を労働力に依存する体制から脱却し、より効率的に利益を生み出せる体質へと企業構造を変革していく必要がある。その切り札が、RPAやAIなどの先端テクノロジーである。

 RPAは他の分野のソリューションと異なり、これまで人が行っていた作業をそのまま代替する機能を有する。いわばデジタルレイバー(仮想知的労働者)として、人の働きを補完してくれる。しかも24時間・365日休むことなく稼動させられる上に、大量の仕事をミスなくこなせるという特長も備わっている。また、人とデジタルレイバーとの分業をうまく進められれば、自社のデジタルトランスフォーメーションを加速させる上でも大きな効果が期待できる。

 「企業は、働き方改革と真正面から向き合うことが避けられない時代になっています。女性や高齢者の活用ももちろん大事ですが、労働力を増やすアプローチだけではバランスを欠く。テクノロジーの活用によって、利益を生み出す構造も同時につくり上げていかなければなりません。特に人員を絞り込んでリーンな体質を築いた企業ほど、この問題が直撃することになるはずです」と秋元氏は警鐘を鳴らす。

従来の常識を超える自動化を実現

図1 RPA・デジタルレイバーとは? 図1 RPA・デジタルレイバーとは? RPAとは、定型事務作業を自動化するものと、AIなどのテクノロジーを用いて高度な知的処理を自動化するものがあり、前者は既にビジネスにおいて効果が実証されている  KPMGコンサルティングでも、RPAを活用して働き方改革に取り組む企業を支援している。「請求業務や経費精算、在庫管理といった定型的な事務処理を自動化するのがRPAの役割。業務の効率化・省力化によって、スピードは150 〜200倍向上、コストは40 〜75%削減が可能といわれています」と同社の田中 淳一氏は話す(図1)。

 とはいえ、業務を自動化する試みは、これまでも様々な形で行われてきた。そうしたものとRPAによる自動化は、どこがどのように異なるのだろうか。田中氏はこの点について「従来の自動処理は、ERPなどの業務システム内で対応できる部分のみが対象でした。システム化/自動化といっても、その範囲は限定された特定の領域に留まっていたわけです。例えば、帳票や他のシステムからデータを転記する、出力された結果をまた加工・編集するといった作業は、どうしても人手に頼らざるを得なかった。これに対しRPAでは、こうした前後のプロセスも含めた業務全体を自動化することができます」と説明する。

KPMGコンサルティング SSOA統括パートナー 田中 淳一氏

 RPAを利用すれば、ERPや業務システムによる処理はもちろん、メール送信やExcelを使った作業なども実行可能だ。OCRを利用することで、紙の帳票やFAXの情報を取り込むこともできる。こうした特長を活かすことで、従来考えられていたよりも、自動化の範囲を大幅に拡げられるわけだ。

 また、RPAは人と同じようにシステムを「操作」できるため、わざわざ専用のプログラムを新規に開発したり、連携用のインタフェースを作りこんだりする必要もない。このためスピーディに、かつ低コストに既存業務の自動化を図ることができる。

 「RPAには、定型作業を自動化する『クラス1』、例外対応や非定型業務も含めて自動化する『クラス2』、さらに高度な意思決定まで行う『クラス3』の3段階があり、現在実用化が進んでいるのはクラス1です。ベンダー各社からも様々な製品が提供されていますが、当社はどの製品においても導入・サポートが可能です」(田中氏)

業務変革こそが最大のメリット

 定型作業の自動化というと、とかくルーチン業務の効率化をイメージしてしまいがちだ。もちろん、それはそれで大きなメリットなのだが、RPAの能力が生きる分野は他にもある。「管理職や営業職、企画職などの高度な業務においても、単純作業が含まれていないわけではありません。こうしたものを自動化すれば、今まで手がつけられなかった仕事にも時間を割り振れるようになります」と田中氏は話す。

 RPAはあくまでも人を助けてくれる便利な道具であり、それによって仕事が無くなってしまう心配はない。年々減っていく就労者をより付加価値の高い業務に振り分け、生産性向上や新たな製品・サービスの創出につなげていくことがその本質なのだ。

 国内の先進企業の中には、既にこうした取り組みを実践しているところも現れている。田中氏は「例えばある金融機関では、住宅ローンの融資業務にRPAを活用。契約書記入作業の約77%を自動化することで、約1時間掛かっていた処理を約10分にまで短縮しました。この結果、顧客満足度が大きく向上しただけでなく、新規顧客の獲得や売り上げ向上といった成果にもつながっています」と説明する。

図2 デジタルレイバーによる変革推進 図2 デジタルレイバーによる変革推進 デジタルレイバーは単なる自動化・コスト削減ではない。企業や部門のあるべき姿、存在意義や業務オペレーション自体を再検討し、高度化につなげることが肝要だ  自社でも同様の成功を収めていくためには、デジタルレイバーをどう活用するかをきちんと考えることが必要だ。「単なる自動化で終わったのでは、コスト削減にしかなりません。そうではなく、削減したリソースをいかに自社の強みにつなげていくかが重要です。将来的なビジョンを描いた上で、新しい業務プロセスを創り上げていく。これこそが、RPA導入の勘所といえます」と田中氏は強調する。具体的には①何をデジタルレイバー化し、効率化するか②オペレーションをどう変え、強みを実現するか③会社・部門として新たに何を強みとし、 どのような付加価値を提供するかまで考え、新たな業務モデルを構築していくことこそが肝要だ」と田中氏は強調する(図2)。またさらに、実際の導入にあたっては、小規模導入から徐々に規模を広げること、見える化の仕組み作りや推進を担う専門組織の設立なども重要なポイントになるという。
お問い合わせ