Special Report

2020年・Windows 7 延長サポート終了 - その時企業は、自治体は?

全庁で920台の Surface Pro 4 を導入、働き方改革を推進する彦根市の取り組み

滋賀県彦根市では2017年8月より、本庁舎および市内の出先機関で使う業務用端末について、Windows 10 Pro を搭載した Surface Pro 4へと切り替えを開始した。なぜタブレット型を選んだのか、そして OS に Windows 10 を選択した背景、スムーズな導入成功のポイントについて、企画振興部情報政策課の担当者に話を聞いた。

インフラの刷新は2014年から全体構想が始まる

日本最大の面積を誇る滋賀県の琵琶湖。その東北部に位置するのが彦根市だ。関ヶ原の戦いの戦功により、彦根の地に封ぜられた徳川家康の家臣、井伊直政が着工した彦根城は天守および2つの櫓(附櫓と多門櫓)が国宝に、その他の櫓や門も重要文化財に指定されているなど、観光スポットとして人気の高い街だ。 また彦根市の魅力は、歴史的建物だけではない。ゆるキャラブームの火付け役として知られている「ひこにゃん」は同市のキャラクターとして、観光誘致に一役かっている。ICTを積極的に活用したシティプロモーションにも注力しており、観光客向けにAR(拡張現実)やGPSを利用し、遊びながら彦根城が学べるスマートフォンアプリ「彦根ほんもの歴史なぞとき」を提供。さらに10月以降には、市民向けの総合情報提供アプリの提供も予定されている。

国の名勝に指定された玄宮園(げんきゅうえん)から彦根城を望む。玄宮園は延宝5年(1677年)、4代藩主井伊直興により造営が始まり、同7年に完成したと伝えられる。

全国的にも知名度の高い彦根市のゆるキャラ「ひこにゃん」。同市のPRに活躍している。

同市のICT 施策を担当しているのが、企画振興部情報政策課である。「彦根市では3年前の2014年9月からIT課題検討会を立ち上げ、基幹システムやLG-WAN(総合行政ネットワーク)の刷新、庁内の無線化、セキュリティの強化、さらには業務端末の刷新など、彦根市のICTに関する全体構想について話し合いを行ってきました」と、企画振興部情報政策課 課長の杉本昭氏は振り返る。
2016年に基幹システムとLG-WANの刷新が完了、本庁舎の耐震化工事のため仮庁舎移転が決定したことを機に、LG-WAN専用の一般事務用端末を刷新することになった。
どのような端末を導入するか。「当初から頭にあったのはタブレット端末でした」と導入作業を行った企画振興部情報政策課 主任の山本恭裕氏は語る。まずはモバイル性の向上である。「仮庁舎への移転のしやすさ、さらには点在する複数事務所への持ち運びのしやすさを考えました」と山本氏。次にペーパーレス化の推進だ。「タブレットであれば会議資料を用意することなく、画面で見ることができます。紙の削減および資料を用意するという準備作業の効率化を目指しました」(山本氏)

彦根市 企画振興部情報政策課 課長

杉本 昭氏

彦根市 企画振興部情報政策課 主任

山本 恭裕氏

また、デスクの作業スペースの確保もポイントとなった。デスクにノートPCを置くと、キーボードが手前に来る分、作業スペースが狭くなってしまう。そこで「スペースを確保するために、タブレット端末に23インチの外付けディスプレイをつなぐという構成を採用することにしました」と山本氏は言う。 同市では端末を選定するにあたり、画面サイズが10インチ以上、通常のノートPCと同様のCPUを搭載していること、外付けディスプレイに接続するためのドッキングステーションが用意されていること、壊れにくいことなどを条件に挙げ、プロポーザルを実施した。最終的に残ったのは Surface Pro 4 と他社製タブレット端末の2機種。その中で最終的に Surface Pro 4 を選んだ理由として、山本氏は次のように話す。 「脱着を繰り返すドックの耐久性が優れていたことと、静音性が高かったことがポイントになりました。静穏性にこだわったのは、テレビ会議の利用を想定したから。端末を使ったテレビ会議の際、ファンの音を内蔵マイクが拾ってしまい、聞き取りにくいことがあります。その点 Surface Pro 4 は高性能なCPUとファンを内蔵しているにも関わらず非常に静かで、全く問題がありませんでした」。

半年間をかけてユーザービリティを徹底検証

端末の選定と同時並行し、OS の選定も行った。「当初は Windows 7 からいきなり Windows 10 に移行するのはリスクがあるのでは、と懸念もありました」と山本氏。しかし Windows 7 を搭載したタブレット端末の選択肢がそもそも少ないこと、2020年には Windows 7 の延長サポート終了が決定していたこと、という2つの理由から、「 Windows 10 を実際に評価してみようという話になりました」と山本氏は続ける。そこで同課では数台の Windows 10 を搭載した評価機を用意し、2016年6月から約半年間をかけ、アプリケーションの動作検証をすると共に、複数の実務担当者に実際に貸し出し、使い勝手について意見を聞くなど評価を行った。
評価開始当初は、現場担当者からは「操作に戸惑う」という意見が寄せられたという。そこでよく使うアプリケーションのショートカットをデスクトップやスタート画面のタイルに置いたり、不要なアプリケーションのショートカットを削除したりするなどの工夫を重ね、ユーザーが迷わず操作できるようにカスタマイズしていった。
こうして2017年6月に正式に Windows 10 Pro を搭載した Surface Pro 4 の導入が決まり、8月13日の仮庁舎への移転に向け、端末の設定作業が始まった。当初は苦労したが、「最終的にクローニングとADを組み合わせてほとんど設定を自動化することができた」と山本氏は満足そうに語る。導入に際してはマイクロソフトのサポートも積極的に利用したという。「 Windows 10でできること、できないことなど、細かな機能に関する相談をメールや直接電話で問い合わせできたので、移行計画をスムーズに進められました」(山本氏)

彦根市が920台導入した Surface Pro 4。ディスプレイ右側の突起はUSBタイプの指紋センサーだ。

自席では、Surface Pro 4 のドックを用いて23インチのモニターと外付けキーボード、マウスを利用。デスクトップPCと変わらない環境を実現している。

ペーパーレス化に貢献、
むしろ使いやすいという声も

Surface Pro 4 の導入は920台。本庁および市内54の出先機関で使う端末として、2017年8月から順次展開が進められている。導入開始から2週間程度は操作に関する問い合わせがあったが、今はほとんどなくなったという。すでに会議では徐々にペーパーレス化が進められており、効果も見えてきた。「人数分、資料を用意したり束ねたりという作業がなくなるほか、会議直前まで資料の修正ができ、最新の情報で検討ができるようになるなど、日々の業務に役立っています」と杉本氏は語る。当初は「本当に Windows 10 を導入して職員が使えるのだろうか」と、多少不安があったというが、今では逆に職員から「使いやすい」という声が多く寄せられているなど、拍子抜けとも思える状況だという。
「やはり評価の際に、どこまでユーザーが使えるかについて徹底的に検証したことがよかったのだと思います。評価というとアプリケーションの動作検証を重視する傾向がありますが、現在は情報系のアプリケーションで動作しないものはほとんどありません。むしろユーザーが業務に利用するアプリケーションを迷わず立ち上げられるかが重要。Windows 10 を、私たちは半年かけて検証を行いましたが、触ってみて初めて実感できる良さや、使いやすさもありました。Windows 7 からアップデートを考えているのであれば、なるべく早い内から使い勝手について検証していくことが得策だと思います」と山本氏はアドバイスする。
またタブレット端末を選んだことについては、「一般家庭へのスマートフォンやタブレットが普及していることで、逆にタブレットの方が年配者にとっても操作しやすいのかも知れません。Windows 10 はタッチ操作やペンの活用に優れているので、会議中にペンでメモを取ったりする使い方も職員の間で自然と広がりつつあります」と杉本氏はその良さを評価する。

Surface Pro 4 に付属しているペンを用いて、会議中や打ち合わせ中に素早くメモを取ることなどができる。ペンの活用も Windows 10 ならではのメリットだ。

外出先での利用など働き方改革につなげたい

「今では外出先でも使えるようにして欲しいという意見も出てきています。端末はLG-WAN専用なので簡単には行きませんが、そうした意見が出ること自体は、新しいワークスタイル実現のヒントになると考えています」と杉本氏は語る。彦根市ではICT課題とともに、働き方改革についても検討を行ってきた。ネットワークの冗長化や庁内無線化などインフラ整備が進んだこと、インターネット端末の仮想化、振る舞い検知システムの導入などセキュリティ強化を実現したことに伴い、今年から働き方改革の委員会を設置し本格的に取り組んでいる。Windows 10 および Surface Pro 4 の導入は、その推進への貢献も期待されている。
「自治体では、政府主導のネットワーク強靭化への対応に留まり、その先の働き方改革に駒を進められていないところもあると思います。彦根市の場合、2014年という早い段階からICTの全体構想をはじめ、1年くらいかけてあるべき姿を検討できたことが、現在の成果につながっていると思います」と杉本氏は話す。
山本氏は「現在、グループウェアは庁舎内でしか使えませんが、モバイル性に優れた Surface Pro 4 の導入により、今後は外出先でも文書やスケジュール、メールの確認、決裁などができるようにてほしいという意見が出ています」と話す。同市では現在テレビ会議システムの導入も進めており、Surface Pro 4を携帯することができれば外出先から内線が欠けられるようになるなど、その活用度も高まる。そのほかにも、窓口対応にも使いたいという声も出ている。「実際にお客さまに画面を見せて説明することで、市民サービスの向上が期待できるからです」と杉本氏。このように彦根市では新しい市民サービスの実現とより効率的に仕事が出来る環境の実現へと今後も注力していくという。
「先進的な民間企業が実現しているように、セキュリティなどのICT課題をクリアしたうえで、職員がいつでもどこでも働けるようにすること。それを含めて検討していきます。そして彦根市としての働き方改革へとつなげていきたいですね」と杉本氏は意気込みを語った。

プロファイル

彦根市 様

http://www.city.hikone.shiga.jp/

滋賀県東北部の中核都市。江戸時代に彦根藩35万石の城下町として発展。明治4年(1871年)の廃藩置県により彦根県に。その後、長浜県に統合され、翌5年2月27日に長浜県から犬上県と改称、同年9月に滋賀県となった。ちなみに彦根の地名は天照大神の御子の活津彦根命(いきつひこねのみこと)が彦根山にまつられたことに由来しているとされる。大規模な都市空襲をうけなかったため、中世から近世にかけての貴重な歴史遺産が数多く点在している一方、工業都市でもあり、滋賀県の中で上位の生産額を誇る。

●日本マイクロソフト Windows 7 延長サポート終了関連リンク

2020年1月14日に Windows 7 の延長サポートが終了

https://www.microsoft.com/ja-jp/atlife/article/windows10-portal/eos.aspx

Windows 7 / 8.1 ユーザー向け Windows 10 操作ガイド

https://www.microsoft.com/ja-jp/atlife/article/windows10-portal/upgrade.aspx

INDEX
インフラの刷新は2014年から全体構想が始まる
半年間をかけてユーザービリティを徹底検証
ペーパーレス化に貢献、むしろ使いやすいという声も
外出先での利用など働き方改革につなげたい