女将になるなんて夢にも思ってなかったんです(笑) 借金10億の旅館がIT活用で再建?~前編~

  • Writer : 麻宮 しま
  • Data : 2017/10/17
  • Category : 業務改革

陣屋の経営再建を支えた基幹システム「陣屋コネクト」

予約や顧客情報、調理場での仕入れ・原価、清掃・設備、勤怠、会計処理まで、旅館運営に特化した機能を持つ「陣屋コネクト」は、多岐にわたる業務の一元管理を可能にした。現場の従業員はタブレット端末やモニターを通し、顧客や設備の状況を瞬時に知ることができ、インカムを通じて連携しながら最適な対応をとることができる。膨大な台帳をひっくり返さずとも、過去の宿泊履歴を参照して顧客の好みやアレルギーなどに配慮した手厚いもてなしが可能だ。

2010年1月に導入した「陣屋コネクト」は業務の効率化において、前述の通り、絶大な効果を発揮した。これまで個々の経験や能力に頼るところが大きく質にバラつきが出がちだった業務を、正確緻密なITに代行させることでミスが減り、その分の労力や時間を人の判断が必要な分野に振り分けることができるようになったのだ。

管理面では、従来、経理担当者が数日かけて行っていた会計処理も、入力したデータをそのまま外部の会計事務所へ渡すだけで済み、合理化を進めることができた。

旅館・ホテル向けクラウドシステム「陣屋コネクト」

資料提供:株式会社陣屋コネクト

数々の効果を実感した宮﨑氏は、「陣屋コネクト」と並行して、さまざまなIoT技術を導入した。イメージしたのは、かつて一流ホテルで重用された「伝説のドアマン」だという。数万に上る顧客の顔や名前をすべて暗記し、ホテルの車寄せに到着した瞬間、「お待ちしておりました、●●様」と出迎える。ホテルを訪れた客は最初の瞬間から、憶えていてもらえた喜びで気持ちよく過ごすことができ、後々のリピートにつながる。

熟練した専属ドアマンならではと言えるこのサービスも、ITを活用することにより、従業員の誰もが実践できるようになった。車が駐車場に入るとカメラがナンバープレートを読みとり、宿帳のデータと連動して顧客情報を画面に表示する。それを確認したドアマンは、即座に「●●様、いらっしゃいませ」と出迎え、担当の仲居は玄関でスタンバイできる。伝説の名サービスをITソリューションで再現し、CS向上に大きく寄与している一例である。

もちろんITの活用に加え、料理や施設・設備などの改善や従業員の働き方改革など、多方面からのアプローチを行った結果が、現在の元湯陣屋の成功につながっている。が、中でもITの導入により目覚ましい業務効率化を遂げたことは、多くの企業にとって参考になるに違いない。

profile

株式会社陣屋コネクト 宮﨑 知子 氏

神奈川県秦野市にある日本旅館「元湯陣屋」を、2009年に夫の富夫氏とともに継承。4代目女将として経営・運営に参画する。IT導入を始めとする数々の施策により、元湯陣屋の黒字化に成功。2010年にクラウドアプリケーション「陣屋コネクト」を開発し、2012年の「株式会社陣屋コネクト」設立を経て外販を開始。現在は元湯陣屋の経営のかたわら、旅館やホテルなど宿泊業向けに「陣屋コネクト」の導入支援事業も行う。