女将になるなんて夢にも思ってなかったんです(笑)借金10億の旅館がIT活用で再建?~後編~

  • Writer : 麻宮 しま
  • Data : 2017/10/19
  • Category : 業務改革

陣屋が取り組んだIT改革は特別な一手ではない!

予約や顧客情報、調理場での仕入れ・原価、清掃・設備、勤怠、会計処理まで、旅館運営に特化した機能を持つクラウドサービス「陣屋コネクト」。神奈川県秦野市の老舗旅館「元湯陣屋」が開発したこのシステムは、2012年から外販され、現在では全国の220を超える旅館やホテル、医療施設などで採用されている。導入効果として聞かれるのは、

「予約業務がペーパーレス化・省力化され、サービス向上案を考案する余裕が生まれた」

「過去の利用履歴を瞬時に全員が把握し、リピーターに最上のサービスを提供できる」

「インバウンドに多く見られる当日の予約変更やリクエストなどにスムーズに対応できる」

「オンタイムで情報に素早くアクセスでき、スムーズに共有できて業務効率が上がった」

といった声だ。いずれも根底には、慣例重視で続いてきた業務の問題や解決のためのニーズを「陣屋コネクト」で「見える化」したことにより、改善につながった点がある。現場から高評価を受けるのも、元湯陣屋が自らトライ&エラーを繰り返し、頻繁にバージョンアップし続けるクラウド型のサービスならではだろう。

全国で導入されている「陣屋コネクト」

資料提供:株式会社陣屋コネクト

そもそも「コンサルティングがしたいわけではない」という宮﨑氏がアプリケーション販売に乗り出したのは、ひとえに「陣屋コネクト」を通して旅館業全体を盛り上げたいという思いにある。

その背景にあるのは、過去10年で外資系など大資本をバックにしたホテルは増えているのに対し、独立資本の旅館は25%も減少している厳しい時代への危機感だ。鶴巻温泉郷も、かつて17軒あった旅館で現在も残るのは、元湯陣屋を含めてわずか3軒である。

「私たちが旅館業についたころ、色々なコンサルタントの方からプレゼンテーションを頂いたのですが自分たちにあった再建計画がなかったんです。同じように苦労されていらっしゃる旅館さんも多いと思います。私たちもIT化を行なって、魔法のように業績が回復したわけではないんです。ITが見える化した改善点にトライ&エラーを繰り返した結果が今だと思っています。陣屋コネクトを一つのツールとして同じような思いをしているみなさまに使っていただき旅館といった日本文化を残していきたい。大資本により日本の旅館業が外資系ホテルチェーンにとって代わられるようなことがあれば、グローバル基準のサービスで統一され、地方の独特の特色を生かしたおもてなしや、文化の担い手としての旅館が失われていってしまい、日本の環境産業にとっても大きな損失になります。旅館業界全体が次の50年、100年を生き抜くために、地方の独立資本の旅館も含めて共存し、地域の活性化につなげていければと思うのです」

と宮﨑氏は語る。そのためには、各旅館が自立し、健全に経営していくことが必須となる。宮﨑氏はそのための支援サービスとして、「陣屋コネクト」を位置付けている。