女将になるなんて夢にも思ってなかったんです(笑)借金10億の旅館がIT活用で再建?~後編~

  • Writer : 麻宮 しま
  • Data : 2017/10/19
  • Category : 業務改革

「陣屋コネクト」に見るIT活用成功のためのポイント

中小企業が新しいIT技術を導入するにあたり、「元湯陣屋」のように成功させるためのポイントはどこにあるのだろうか。その答えのいくつかは、「陣屋コネクト」の多数の導入事例を目の当たりにしてきた宮﨑氏の言葉に見ることができる。

「『陣屋コネクト』を導入して成功する企業はいずれも、経営陣が自ら旗振り役となり、システムを理解して活用していこうとする姿勢を持っています。早ければ数ヶ月で従業員ひとりひとりにしっかり浸透し、目覚ましい効果を感じて頂けています。逆に、経営者が現場に丸投げして他人事のようなスタンスだと、残念ながらいくら経っても理解も活用も進まない傾向が強いです」

宮﨑氏によれば、IT導入時には必ず負荷のかかるポジションが発生する。その担当者と一緒に調整や判断を行う立場の人が重要だという。

元湯陣屋自体、「陣屋コネクト」が浸透するまでには数々の苦労があった。旅館業の特色上、従業員にはインターネットに不慣れな女性が多く、初めのうちはパソコンに触ることを怖がる人さえいたという。宮﨑氏は自ら根気よく操作を教える一方で、「ログインしないと勤怠管理ができない仕組み」にし、従業員の習熟意識を促した。「中には『パソコンが使えないなら辞めろということですか』と泣く従業員もいましたが、ITなくしてこれからの経営は成り立たないことをはっきり宣言しました」と語るように、経営者のぶれない姿勢も強く求められる点だろう。

宮﨑氏夫妻は、率先して「陣屋コネクト」を活用する姿勢を示すため、システム内SNSへ従業員が投稿した内容を閲覧することに加え、必要に応じてコメントをする件数は1日当たり50件以上にもなるという。

このように情報共有は基本的にSNS上で行い、形骸化していた会議やミーティングは撤廃した。従業員間のコミュニケーションが減るのではとの懸念も沸くが、実際は「個々で中途半端に情報を共有するよりも、SNSで一括して共有した方が誤解や不行き届きを防げる」というのが宮﨑氏の実感だ。代わりに週1回、社員を対象としたサービス研修会・PDCA確認会を行い、技術向上や意識改革を促進している。

これは従業員に当事者意識を持たせることに大いに役立っているという。従来の旅館業では女将(経営者)に絶対的な権限があるため、従業員は考えることを放棄して「指示待ち人間」になりがちだった。宮﨑氏はこれも問題視し、「従業員が自ら考え、良いと思うことは恐れず経営者に積極的に提案するべき」と考え、ヒアリングに力を入れているという。経営者が柔軟な姿勢で従業員の意見をすくい上げる土壌作りも、新技術の導入に当たっては重要なポイントと言えるだろう。