ここまで来た! 農業×IT(前編)農作業の効率化だけでは語れない――
ドローンが農業にもたらす本当の価値とは?

  • Writer : MOTOKI HONMA
  • Data : 2018/1/29
  • Category : 業務改革

ICT技術を駆使して、生産性や作物の品質を向上しようとするスマート農業が、各種メディアなどで注目されるようになって久しい。しかし、それを行う農家はまだ限定的である。特に日本の農業を象徴する稲作ではほとんど実施されていないようだ。それは施設栽培と異なり、露地栽培では活用できる技術がほとんどないからなのだが、ここにきて稲作でもスマート農業が実現できるサービスが開始目前だという情報をキャッチした。農業用ドローンを活用したこのソリューションは、一体どのようなものなのだろうか?

露地栽培のスマート農業を阻む壁を
ドローンが飛び越える?

株式会社ナイルワークス
代表取締役社長
柳下 洋氏

「農業のIT活用ということが盛んに言われていますが、実用に堪える技術はまだほとんどないのが現状です」

近年注目を集める農業へのIT活用。その現状についてこう話すのは、株式会社ナイルワークス 代表取締役社長 柳下 洋氏だ。

そんな現状の中で、同社が開発し、発売間近だというソリューションは、ドローンを活用しながら、稲作のスマート農業を実現するもの。

ドローンというと、農薬や肥料の散布などの作業の効率化という点ばかりがもてはやされたが、このサービスでは「ドローンそのものよりも、そこから集めたデータをどう使うかというところに大きな価値がある」(柳下氏)という。

現在、ビニールハウスなどを利用する施設園芸の分野ではスマート農業は一部実現しているものの、露地栽培については実用化されている事例はほとんどないのだという。そもそも、スマート農業を実現するためには、環境や作物の状態などセンサーを活用して把握することが必要不可欠だ。しかし、広大な土地を利用して実施される露地栽培の場合、それを実現するのは容易ではない。

では、同社ではどのように農作物のデータを取っているのかというと――そう、ドローンを使って実現しているのである。

「複数のカメラやセンサーを搭載したドローンを飛ばせば、何百枚の田んぼであってもドローン1台ですべての作物の生育状態を記録することができます。衛星や飛行機やヘリコプターと異なり、作物に近い位置からセンシングができるので、病害虫や雑草の検出や育成状態の把握などを行うのにピッタリなのです」と柳下氏。

田んぼの上を飛行するドローン

同社のドローンは、稲の上空約30㎝を時速約20kmで飛行可能だが、農薬や肥料の散布、播種などと同時に、田んぼに植えられている稲をセンサーが捉え、1株ごとの生育状態を判別できるのだ。育成診断は、見た目だけでなく、光合成の速度から判断するという。

「1枚30aの田んぼで5万株の稲が植えられていますが、そのすべてにIDをふってデータを管理します。すべての植物は光合成を行って生育していきますが、その際に変化する太陽光の分光特性をセンサーで捉えるのです。それを解析することで、病害虫や雑草の有無や育成状態はもちろん、植物体の栄養の配分やストレスの状態まで明らかにします。ちなみに5万株を記録するのにかかる時間は約10分です」(柳下氏)

さらにドローンが収集したデータを、コンピュータ内の植物の生育モデルを使って分析し、最適な農薬や肥料の散布時期などが一目で確認できるクラウドサービスも提供される予定。栽培計画が田んぼごとに表示されるこのサービスを使えば、誰でも的確なタイミングで農作業を行うことができるだろう。

生育監視のイメージ画像

なお、ドローンは完全自動的飛行を実現しており、操作はユーザーが現場にドローンを持って行き、電源を入れて、タブレットのスタートボタンを押すだけでOK。あとは離陸から着陸までドローンが自動で作業してくれるのである。それ故、講習などを受ける必要もない。