ここまで来た! 農業×IT(前編)農作業の効率化だけでは語れない――
ドローンが農業にもたらす本当の価値とは?

  • Writer : MOTOKI HONMA
  • Data : 2018/1/29
  • Category : 業務改革

労働の効率化だけでなく
おいしさもアップ

さて、3年に渡る実証実験を経て、いよいよ今年6月から試験販売される予定だというこのサービス導入の具体的なメリットを柳下氏に尋ねると、以下のような答えが返ってきた。

「まず挙げられるのは、農薬や肥料のコストが下げられる点です。センシングとの組み合わせにより適期に適量の散布や追肥が行うことができるため、農薬や肥料の使用量や散布回数を従来の3分の1以下に減らすことができます。米の生産原価に占める農薬肥料のコストは2割以上と言われますので、そのインパクトは大きいのです。さらにドローンを使って農薬を至近距離から高い位置精度で散布できるため、周囲への飛散を減らし、周辺の農作物や環境への影響を最小限に抑えることができます」。

そして、コストや作業効率の面だけでなく、米の味が良くなったり、収量がアップするというメリットも――。

「収量を上げるには肥料を増やせばよいのですが、収量と食味はトレードオフの関係。肥料をたくさんあげて収量が増え過ぎると食味は落ちてしまいます。その点、光合成速度と消費速度を正確に把握するこのシステムを使えば、収量と食味のベストなバランスをデータから導き出し、最適な肥料の量とタイミングと水管理方法を提示してくれるのです」(柳下氏)

つまり、これまで勘や経験に頼らざるを得なかった農業だが、このシステムを使えば、たとえ経験がゼロでも味の良い米を安定的に収穫できるのだ。

「私たちが目指しているのは、このソリューションによって、日本の稲作を世界の最先端産業にすること。そのためにも、気象条件などの要因に振り回されず、安定的な生産が行える――精密な品質管理ができる産業にしていきたい。大学生の人気就職先ランキングの上位に農業法人が並ぶ未来を思い描きながら事業に取り組んでいます。さらに、水や肥料を最小化する農業技術を確立することで、地球規模で増加する人口を支える食糧の確保に寄与するところまでやり遂げるのが我々の使命だと考えています」と柳下氏。

今後は海外展開を見据えた稲作以外の農業への対応や、自動運転技術の開発が進むトラクタや田植え機などの農機とのシステム連携なども視野に入れた事業展開を進めていくとのことである。

農業従事者の高齢化による大量離農や減反政策廃止による補助金打ち切りの問題など、我が国の農業は、現在、様々な課題に直面している。元々、IT業界でAIの開発などに携わっていた柳下氏が、独立し、農業用ドローンの開発を行う企業を立ち上げた理由の1つには、このような状況を改善したいという思いがあったという。

実証実験に参加する農家からの評価も上々で、いよいよ実用化一歩手前のところまできたナイルワークスの農業用ドローンと育成診断クラウドサービス。まずは日本の農業をどのように変えていくのか?その動向を注視していきたい。

農業×ITで日本の未来はどのように変わるのか――。
後編では、実証実験に参加した農家に話を聞く。