第一級のエンターテインメントはいかにして生み出されるのか?ベストセラー作家が語る創作の舞台裏~作家 池井戸潤氏

  • Writer : ASAMI NAKAMA
  • Data : 2017/11/27
  • Category : デジタル活用、働き方改革

デビューしてからの悩みは
登場人物に魅力がないことだった

不屈の精神でランニングシューズの開発に奔走する『陸王』の宮沢社長、自分の正義を貫く姿が痛快な『不祥事』の花咲舞など、読者の心をぐっと掴む登場人物が多く出てくることも池井戸作品の特徴だ。読者は「こんな人が本当にいてくれたら」という願望からだろうか、つい「モデルとなった実在の人物がいるのではないか?」と勘ぐってしまう。

「よく聞かれますが、特定のモデルは存在しません。登場人物は、これまでの読書経験がデータベースとなって生み出されます」

少年期から膨大な量の本を読み込んできた池井戸さん。小説家になるために特別な訓練は積んでいない。ただ、ひたすら読書を続けてきただけ、と語る。長い年月をかけた蓄積から、あの魅力的な登場人物たちは池井戸さんの元へやってくるのだ。

池井戸さんが小説家としてデビューしたのは1998年。『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞した。実は、そこから何年もの間悩み続けたという。

「書いても作品は売れないし、それ以前に自分でも何かおもしろくない。なぜだろう、と考えると、人物の動きが予定調和で人に深みが出ていないことに気づきました。それは、『BT’63』を書いているときくらいでしたね」

登場人物がどうしたら魅力的になるのか、池井戸さんは考え抜いた末にそれまでの小説観をすべて捨て去り、作り方を根底から変えた。

次回は、池井戸作品に出てくる魅力的な登場人物誕生の裏側に迫る。

profile

作家 池井戸 潤 氏

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒業。
1998年、『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を、2011年には『下町ロケット』で直木賞を受賞。これまでの主な作品として、半沢直樹シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』)、『花咲舞が黙ってない』、『ルーズヴェルト・ゲーム』、『民王』、『七つの会議』、『アキラとあきら』などがある。2018年6月15日には映画『空飛ぶタイヤ』が全国公開される。2017年10月期よりTBS系にてテレビドラマ『陸王』が毎週日曜夜9時から放映中。