「山手線チェックイン」と次世代アイデアのマッシュアップアプリコンテストから見えたビーコン活用の可能性とは?

個性が際立つやり取りしないメッセージアプリ

審査員の面々。手前から池澤さん、野口氏、村上氏、橘氏

審査員の面々。手前から池澤さん、野口氏、村上氏、橘氏

 発表は、前半がプレゼンテーションとアプリのデモ、後半が審査員との質疑応答の2段階で行われた。審査は東日本旅客鉄道(JR東日本)常務執行役員 IT・Suica事業本部長の野口忍氏、NTTドコモ取締役常務執行役員 スマートライフビジネス本部長の村上享司氏、ジェイアール東日本企画常務取締役 交通媒体本部長の橘修氏に加え、ITに明るいタレントの池澤あやかさんが参加して華を添えた。

 トップバッターのインテリジェンス ビジネスソリューションズが発表したのは「とれぽん」。山手線に乗車した際、周辺の店舗情報を自動取得することで検索だけでは出会えない店舗の発見につなげる。

 店舗は飲食店だけではなく、理美容店、小売店などを幅広く網羅する。さらに、とれぽん限定のクーポンが発行されたり、ポイントと連携できたりとお得感を演出。これにより、「ユーザー満足度の向上とともに、山手線に乗るのが楽しくなる」(インテリジェンス ビジネスソリューションズ)とアピールした。

 「ビーコンを使えば車両位置情報、何号車に乗っているかの情報を取得できる。その情報を活用しないのか?」といった村上氏の質問に対しては、「各車両によって取得できるクーポンが異なることを想定している」と述べ、改めて乗車しているからこそ味わえる体験を楽しんでほしいことを強調した。

インテリジェンスビジネスソリューションズ

インテリジェンスビジネスソリューションズ

スピリテック

スピリテック

ORBITALLINK

ORBITALLINK

 2番目のスピリテックは「山手線デパート」を発表。「駅や電車の広告がエンターテインメントに生まれ変わる」(スピリテック)をテーマに、車両位置情報を取得することで、駅ごとに広告情報が変わるようにした。

 実際のデモでは、アプリ上で画面が切り替わる様子を表示。窓から見える看板広告をそのまま見られる工夫を施し、「看板をタップすると商品が購入できる」(スピリテック)ギミックもある。そしてユーザー側のメリットとしては、広告からすぐに商品が探せてタップするだけで購入できる点、広告主のメリットとしては、ユーザーの広告に対するアクションをトラッキングできる点を挙げた。

 池澤さんは、「電車の中でのライバルはTwitterやニュースアプリなどになるが、この点についてはどう考えるのか」と質問。これに対しスピリテックは「山手線の乗車時間は短いので、良質なコンテンツをきれいに提示できればユーザーを誘導できるのではないか。広告を見て続きが気になる人を上手く捕まえていき、クーポンなどを使ってさらに惹きつけていきたい」と展望を語った。

 3番目のORBITALLINKは、「コミュニケーションを取らないメッセージアプリ」をコンセプトとした「KINOWA」を発表した。アプリ画面には1本の木があり、そこにはいくつかの実が生っている。その実をタップするとたった1度だけメッセージ内容を閲覧できるというものだ。

 特徴は、このメッセージが「ネット越しのどこかにいる人ではなく、同じ山手線車両の時間、空間を共有している誰か」(ORBITALLINK)から送られたものだという点にある。投稿者は誰に読まれるかわからない内容を送信し、閲覧者は同じ車両の誰が送ったのかを推測しながらメッセージの内容を確認する。

 「あまりにも同車両の人数が少ないと、誰が送ったか特定されてしまうのでは?」といった野口氏の質問に対しては、「情報の権利に関しては今後検討していかなくてはいけない部分。何でも投稿していいというものではなく、ある程度の規制は必要になる」と回答。その上で「メッセージの内容そのものを楽しむのではなく、誰に伝わるのか、どんな人から来たのかをユーザーが楽しむスタイル。想像力が非常に大切になってくる」と、KINOWAの流儀を語った。

社会課題への貢献、そして完成度の高いゲーム

ORBITALLINK

ミツエーリンクス

 「ママの手」と題したアプリを発表した4番目のミツエーリンクス。電車に乗るベビーカー世代のママをサポートするアプリで、今回の発表の中で唯一、社会課題解決に焦点を絞った作品となる。

 「山手線の乗降でどんな人たちが困っているかを考えたとき、ベビーカー問題で揺れている赤ちゃんを抱えたママたちを思い浮かべた。ママの手は、彼女たちの電車利用をサポートしたいとの思いから着手した」(ミツエーリンクス)。アプリでは、乗車前、乗車中、乗車後の3つのステージを用意。乗車前は乗車駅〜目的の駅までのルートを選択すると、エレベーターに近い車両、階段に近い場所など、既存のサービスにはないルートを表示してくれる。

 乗車中のイメージは、実際にデモを行いながら説明した。位置情報を取得して、どこを走っているかを把握。「赤ちゃんの世話をしていると、どちらのドアが開くのか、エレベーターはどこにあるのかといったアナウンスを聞き流してしまうこともあるため、それらがひと目でわかる構成とした」(ミツエーリンクス)。また、チェックインクーポンや育児の豆知識を提供するなど、実用的な面ばかりに偏らないように配慮している。

 乗車後は、目的の出口までを自分の車両を中心に案内してくれる。ベビーカーを抱えたり、赤ちゃんを抱っこしたりと両手がふさがることも多いため、音声案内を使って、よりわかりやすく伝える工夫を施した。

 村上氏は「移動弱者の困りごとを解決する、非常に社会的な価値が高く素晴らしいサービスだと思う」と称賛。その上で「駅構内の最短経路、トイレがどこにあるかなど基本となるデータベースをどのようにして入手するのか?」と問いかけると、ミツエーリンクスは「以前、JR東日本が新宿駅と東京駅にビーコンを設置して試験運用した事例があった。駅構内のビーコン設置が可能になれば、より良い支援ができるようになると考える」とした。

 最後に登壇したQOLPは「黒猫誘拐事件」を発表した。誘拐された黒猫のキャラクター、「ミー」を救出するゲームで、謎解きをしながら進んでいくものだ。発表では会場に音波ビーコンを飛ばし、実際に都内を走っている山手線の位置情報を使ってデモを行った。

ORBITALLINK

QOLP

 このゲームは、山手線に乗車していることが絶対条件だ。対象者が乗車しているかどうかは位置情報によって判断し、降車すると一旦中断。再び乗車すると再開できる。

 乗車してアプリを起動すると、謎の犯人から「ミーに会いたければ山手線に乗って連絡を待て」とのメッセージが入る。犯人からのコンタクトはランダムで、いつ接触してくるか不明だ。連絡を待つと選択式のクイズが出され、答えを選ぶ。「回答内容によってゲーム進行が変化するのが特徴」(QOLP)で、間違った答えと選ぶと、一方的に連絡が断たれてしまう。

 クイズの内容には、山手線各駅や山手線にちなんだトリビアが反映されている。犯人からのコンタクトは気まぐれなため、進行を待つ間はマッシュアップメニューで周辺地図を見たり、タイアップ広告を楽しむこともできる。「交通広告と連携できれば、実際の車内広告をヒントにすることもできるだろう」(QOLP)とのことで、リアル空間との融合も視野に入れる。

 池澤さんは「回答によって進行が変わるということは、分岐が非常に多いが対応できるのか?」と疑問を投げかけたが、QOLPは「実際にこれまでも膨大な数のストーリーを入れたコンテンツを制作してきた。数を作ることには抵抗がない。ストーリーは必ずしも駅に紐づくものではなく、駅が2つ進んだら周辺情報とミックスしたりして問題も変化していく」と自信をのぞかせた。

どの作品も力作ぞろい、ネットワーキングも活発に

全員による記念写真

全員による記念写真

積極的に質問し、コンテストを盛り上げた池澤さん

積極的に質問し、コンテストを盛り上げた池澤さん

 審査の結果、「黒猫誘拐事件」が最優秀賞に、「ママの手」と「KINOWA」が優秀賞に選ばれた。野口氏は「黒猫誘拐事件」を「山手線ビーコンの車両情報、位置情報などを駆使し、これから発展が見込める期待が非常に大きい。そこから次のサービスに広がっていく」と高く評価。これに対し、QOLP代表の草水美子氏はこのように感想を述べた。

 「弊社は目白駅が最寄り駅で、山手線しか走っていない駅のため、毎日乗車している。それもあり、今回のコンテストにはぜひ参加してみたいと思った。受賞を糧に、皆さんの期待に応えていきたい」(草水氏)

 「どのプレゼンも面白く聞かせてもらった。多種多様なアイデアだったので、本当に評価が難しかった」とは池澤さんの言葉だ。今回のアプリがサービスインした暁には、「ぜひ私も使ってみたい」(池澤さん)と話し、審査員にもインパクトを与えたようだ。

交流会の様子。コメントする草水氏

交流会の様子。コメントする草水氏

鉄道博物館の展示車内を山手線に見立て、実際にアプリのデモを行った

鉄道博物館の展示車内を山手線に見立て、実際にアプリのデモを行った

アプリを触りながら盛り上がる参加者たち

アプリを触りながら盛り上がる参加者たち

 終演後は鉄道博物館内にある展示列車を臨むスペースにて交流会を実施。また、展示列車を山手線に見立ててビーコンから音波を飛ばし、実際にスマホ片手にデモや説明を行うなど、より踏み込んだネットワーキングがあちこちで見られた。今回のコンテストを機に、一段上のビーコン活用法が生まれてくることを期待したい。

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ドコモ・イノベーションビレッジ事務局
E-mail:village-application@nttdocomo-v.com

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