Zinossoft代表取締役の佐藤嘉武氏
HTC Viveと自転車を連動させたVRのデモ
各企業のピッチはベンチャーと大手企業に分かれ、白熱した自己アピールを展開した。ピッチを行ったのは発表順にZinossoft、htc、ネストビジュアル、バンダイナムコスタジオ、リ・インベンション、朝日新聞、ワンダーリーグ、フジテレビ、ASA、VRize(ブイアライズ)、NTTドコモの11企業。以下、特徴的な企業をピックアップしていこう。
Zinossoftは「新しいVRのプラットフォームが出てきたら何でも対応する」(代表取締役の佐藤嘉武氏)というフットワークの軽さが売り。その言葉通り、ハコスコ、Gear VR、Oculus Rift、HTC Viveなど軽重問わず各デバイス向けのコンテンツを提供できるとし、「医療や不動産といった社会貢献度の高い分野でも役に立ちたい」と話した。また同社はHTC Viveと自転車を連動させたデモを展示し、大きな反響を集めた。
テレビCMをはじめとする映像コンテンツを手がけてきたネストビジュアルは、実写撮影、CG制作、プログラミング、企画/演出の専門家を揃え、「あらゆるデジタルコンテンツの制作が可能」(代表取締役の植山耕成氏)といったマルチな制作体制がポイントだ。2014年からVR向けの360度動画制作を開始し、ノウハウを蓄積。これまでに富士急ハイランドのVRアトラクション「ほぼドドンパ」を担当したり、インバウンド向けに日本各地の観光名所における360度動画を制作したりと、高品質な作品で差別化を図る。
一風変わったアプローチなのがVRize。同社は「VRコンテンツのマネタイズ支援」を目標とし、VR映像に最適化された広告表示プラットフォーム「VRize Ad」を提供しようとしている(現在はクローズドβ版を提供)。「VRアプリ内に広告を出すことで収益化を実現するアドネットワークのサービスになる。VR空間に馴染ませるネイティブ広告も開発中だ」(代表の正田英之氏)。もう1つの柱がVRコンテンツ開発を簡略化するCMSサービス「VRize Video」で、「わずか3日間でVR動画アプリを制作でき、時間とコストを圧倒的に削減できる」(正田氏)としている。
ネストビジュアル代表取締役の植山耕成氏
VRize代表の正田英之氏
フジテレビの種田氏
NTTドコモの望月氏
大企業サイドで印象深かったのがフジテレビだ。同社の種田氏は「2016年7月にVR事業部が立ち上がり、エンターテインメントのみならず、格闘技イベントや大相撲などのスポーツ、さらにはニュースサイトなどでもVR配信を行った」とこれまでの取り組みを紹介。今後はドラマ、バラエティ、さらにはCMにまでVRを展開していきたいと語った。
しかし、フジテレビの狙いは“総合デジタルプロデュース”にある。VRやARなどの新技術もデジタルコンテンツの1つとして捉え、「我々ならではのコンテンツ力と企画力を交えながらトータルでプロデュースしていく。皆さんとの協業がVRビジネスの未来につながる」(種田氏)と、力強い言葉でパートナー予備軍に呼びかけた。
NTTドコモからは法人ビジネス本部 法人ビジネス戦略部 2020・地方創生営業推進担当課長の望月謙氏が登壇。先に紹介したクロスデバイスとの浜松市におけるコラボレーションをはじめ、リオ五輪や冬季アジア大会でのVRビューアーシステムの提供など、活発化する同社のVR事業について触れた。
交流会の様子
望月氏は、「タブレットでコンテンツを再生したり、目線の動きでコンテンツを再生できたりなど、より簡単にVRを活用できる仕組みをパッケージして自治体に売り込んでいく。全国の法人営業の強みを生かしたい」とNTTドコモのネットワーク力を訴求。続けて将来的なアイデアとして「祭り×VRで面白い仕掛けがあれば、地方の活性化につながるのでは」(望月氏)と述べ、VRによる地方創生に期待を込めた。
その後の交流会では、会場のあちらこちらで挨拶を交わす姿が見られ、積極的なネットワーキングが展開された。世界を見渡してもVRサービスの分野は黎明期、いわゆる“ブルーオーシャン”のため、日本の企業が覇権を握る機会は十分にある。このイベントを機に新しい輪が生まれ、画期的なアイデア創出につながることを願う。
ドコモ・イノベーションビレッジ事務局
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