連載Review Ruby biz Grand prix 2017 vol.3 松江市で活躍する3社に聞く島根県で花開いたRubyを核とするOSSコミュニティ

地方ならではのワークライフバランスの充実
技術者不足のなか、人材採用も容易

──なぜ松江市だったのでしょう。

井上:私はもともと東京でIT関係の仕事をしていましたが、オフもスキーやテニス、ドライブなどをして楽しみたいと思っていました。それが東京では難しい面もあり、故郷の松江に戻りました。松江なら道もテニスコートも空いているし、車で1時間も走ればスキー場に行けます。当時はライフワークバランスなどという言葉はありませんでしたが、それを求めたのです。

松江にはOSSのコミュニティもありました。Linuxがまだそれほど活用されていなかった1996年、インターネット上で初めて日本語でLinuxの情報提供を行った「www.linux.or.jp」のサーバーが立ち上がったのは松江でした。

Rubyに関しては、当初はまつもとも私も、ここまで普及するとは思っておらず、言語を担いでいる会社というだけで看板になるんじゃないかくらいに考えていました。ところが、2005年頃から世界中で爆発的に利用されるようになり、驚きました。

田窪:私自身は大阪出身で、パソナの東京本社で8年間勤めていました。仕事に大きな不満はなかったのですが、子どもができてから、地方の豊かな生活環境の中で子どもを育てたいと思い始めました。妻も鳥取県の出身なので、仕事があれば西の方に行きたいと考え始めていました。そんな時、島根Labの社内公募が出て、これだと思い手を挙げました。仕事も新拠点の一からの立ち上げなので、自分自身の視野やスキルを広げられるとも思いました。

9月からなのでまだ数カ月しかたっていませんが、生活環境も仕事も充実していて、移住はとてもうまくいっています。

福光:当社はもともと松江市にありました。なぜRuby関連のビジネスを始めたかということで話をすると、OSSの魅力に気付いたからです。当社も以前は有償の言語を使って開発をしていました。しかし、同じ仕事をしても有償の言語の場合かなりの費用をそこに取られてしまいます。OSSならそこに費用がかからないので、お客様によりよいサービスをより安く提供できます。

そこで、RubyをはじめとするOSSに会社の方向をシフトし、前社長が2006年7月に発足した「島根OSS協議会」の設立発起人にもなりました。

松江でよかった面としては、採用です。当社は毎年2、3人を採用するのですが、いつも早い段階で内定を出すことができています。その後も応募される方がいるのですが、断らざるを得ない状況です。今、技術者が不足していると言われている中で、これはありがたいですね。東京にも社員が14人いますが、東京で採用したのは4人だけで、他は全員地元採用です。

田窪:私も2人でスタートしたので、そこは同感です。今、採用活動をしていますが、順調に人が集まっていて、4月には5人体制になる予定です。

──ここ、松江オープンソースラボについて教えてください。

井上:2005年松江市の産業経済部から私とまつもとのところに、Rubyで産業振興をしたいと相談に来られ、2006年には松江市が「Ruby City MATSUE プロジェクト」を立ち上げました。その一環として2006年7月に、先ほど福光さんがおっしゃった「しまねOSS協議会」を設立し、その協議会の拠点として松江市が用意してくれたのが、この松江オープンソースラボです。

OSSはユーザーも同じ情報を得られるため利益にならないと思われがちですが、OSSのビジネスモデルは、ITリテラシーの差が利益につながるわけです。ユーザーが知識を持てば、我々はもっと知識を高めればいい。全体のレベルが上がれば、ユーザーはよりよいシステムを安価に手に入れることができます。その結果、IT産業のみならず、地域全体の活性化につなげたいと考えました。

そこで、島根県におけるOSSのリテラシーを高めるため、たとえば既に116回(2017年12月現在)を数える月1回の「オープンソースサロン」は、全国からOSSの著名人に来てもらって勉強会を開催しています。他に、「オープンソースカンファレンス」や「RubyWorld Conference」などOSS関連のイベントに向けた会議などにも使っています。また、空いていれば会員が自由に使える場所なので、個別の勉強会なども随時開催されています。

松江オープンソースラボ内のパーティションには、「オープンソースサロン」の講師として来訪したOSSの著名人たちのサインが数多く残されている。

Ruby City MATSUE プロジェクト

2006年松江市が始めた、Rubyをテーマに地域ブランドの創生を目指す地域産業振興施策。2007年には「日経地域情報化大賞2007」の大賞とインターネット協会賞をダブル受賞、2013年には「地域づくり総務大臣表彰」を受賞するなど、地方創生の成功事例として高く評価されている。

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  • 資本力ではなく技術力で勝負できるそれがOSSやRubyの魅力
  • 地方ならではのワークライフバランスの充実技術者不足のなか、人材採用も容易
  • アクセスが抜群の会議室を無料で利用可能進出企業エンジニアの交流の場としても活用
  • Ruby Biz Grand prix 2017