創刊40周年 記念シンポジウム 〜建築のさらなるイノベーションへ〜  エービーシー商会 耐震性能の一般評定を取得した質量2kg/㎡以下の天井システム(リノベ・改修トラック 技術講演)

エービーシー商会 天井材事業部 販売推進部 部長 高橋 一弘 氏

東日本大震災で社会問題化した天井崩落事故を受け、国は天井の脱落防止に対する技術基準への対応を義務付けた。これを受けて開発されたのが軽量天井システム「かるてん®abcグリッド」だ。下地材を併せて2kg/㎡以下の重量しかない。耐震性能の一般評定を取得しており、美術館・空港・講堂・商業施設・病院のロビーなどでの活用が期待される。

 2011年の東日本大震災では、東京や神奈川県川崎市で大勢の人が集うショップやホールなどの集合施設で天井崩落事故があり、大きな社会問題となった。残念ながら4月に発生した熊本地震においても、体育館の天井落下などの事故が報告されている。

 東日本大震災の被害を受け、国は2014年4月に「天井脱落対策に係る一連の技術基準告示」(国土交通省平成25年告示第771号他)を施行。天井に対する規制が厳しくなった。

システム全体の重さ2kg/㎡以下 軽量さと吸音性、断熱性を両立

 こうした動きに追随し、当社がこの3月に発売したのが「かるてん®abcグリッド」。アルミTバーを用いたシステム天井タイプの商品で、フレームなど下地材を含めたシステム全体の重さは2kg/㎡以下。

 天井材は、ポリエステル製タテ型不織布「V-Lap®」を基材にガラスクロスで包んだ、帝人の「かるてん®」を採用した。繊維がタテ型に並んでいるため反発性が強く、ガラスクロスと組み合わせているので強度もある。かるてん®本体の厚さは4.5mm、重さは0.7kg/㎡で、一般的な石膏ボードと比べると約10分の1の重さだ。

 軽くて破損しにくいので、落下による危険性を抑制し、人的被害を最小限に抑える。天井材に不可欠な不燃認定も取得している。

 東日本大震災以降、天井改修方法については多くの関係者が頭を悩ませてきた。学校関係の建物では天井材を撤去して直天井化するケースも多く、音環境や空調効率の問題が課題として残った。かるてん®は、もともと東日本大震災の仮設住宅の壁用断熱材として提案された製品で、軽量でありながら「吸音性」や「断熱性」を併せ持っており、天井材としての活用も期待されている。

富士スピードウェイ「レストランオリヅル」。天井に「かるてん®abcグリッド」が採用された。照明や空調設備は天井パネル部とは別に設備パネルを設けて納めた
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耐震性能の一般評定を取得 柔軟な設計や審査時間短縮の一助

 国は前述した告示で、脱落すると人に重大な危害を与える恐れのある天井として、5つの条件(1「吊り天井」、2「天井高が6m超」、3「水平投影面積が200㎡超」、4「天井面構成部材の重さが2kg/㎡超」、5「人が日常立ち入る場所にある」)を定め、これに当てはまるものを「特定天井」と定義付けている。さらに「仕様ルート」、「計算ルート」、「大臣認定ルート」の3つのルートを挙げて、構造の安全性を検証することを義務付けている。ただし、特定天井に該当しない場合でも、設計者の判断により安全性の確認を義務付けている。

 かるてん®abcグリッドの大きな特徴は、震度6相当の揺れに対する耐震性能の一般評定を取得している点にある。天井面構成部材の重さが2kg/㎡以下なので特定天井の対象にはならないが、設計者による安全性の確保は必要だ。耐震性能の一般評定を受けた商品を採用することで、告示の仕様や計算方法に従うことなく柔軟な設計が可能になり、また審査時間を短縮することができると考えた。

しなやかで強靭な新素材で安全性と施工性を両立

 一般評定を取得した具体的な耐震工法システムは、次の通り。まず水平面の面内剛性・耐力は、かるてん®を固定することで確保し、鉛直面の面内剛性・耐力は、斜め部材を設置して確保する。固定パネルは市松模様状にバランスよく配置し、斜め部材は下地部材と吊りボルトを直接固定する。設置の際の壁とのクリアランスは20mm以上。60mm以上のクリアランスが必要な仕様ルートよりも狭くて済む。照明や消防設備などは、これらを納める設備パネルを別途、配置し、天井パネルとの間にクリアランスを設ける。

 かるてん®abcグリッドは、静岡県の富士スピードウェイのレストランORIZURUに採用されており、白と黒の標準色を組み合わせることでチェッカーフラッグをイメージした天井デザインになっている。天井高が6mを超えないため特定天井には該当しないが、それと同等の耐震仕様である。照明や空調設備については、天井パネルとは別に設備パネルを設けて納めている。

 このほか帝人の研修センターの改修でも採用された。こちらも天井高が6m以下で特定天井に該当しない。かるてん®の規格サイズは925mm角で、ほぼ同じサイズの天井カセット型空調機は、かるてん®を1枚抜いて設置した。天井カセットよりも小さな450mm角の空調吹き出し口は、現場でカッターを使い、かるてん®に四角い穴を開けて設置した。開口補強などはしていない。

 このように、ロックウールや石膏ボードの加工時に発生する粉塵飛散や騒音もなく、容易に加工できることも特徴の一つだ。天井が高く、不特定多数の人が集まる美術館や空港、講堂、商業施設、病院のロビーの天井などに、ぜひ活用してほしいと考えている。

 ほかにも、当社は「柔らかい天井材システム」のシリーズとして、「軽量膜天井システム『マクモ』」を商品展開している。「マクモ」の膜材はガラスクロスを基本とした柔らかく丈夫な素材で、強度試験により1mの高さから重さ10kgの物を落としても、マクモが落下したり、膜材が破れたりすることはない。高さ7200mmの吹き抜け空間の天井に採用された実績があり、下から見上げると膜天井というよりも切り板パネルのようなすっきりしたデザインとなっている。

 今後も設計者のみなさんが使いたくなるような天井材の開発を強力に進めていくつもりだ。

●かるてん®の素材 ●かるてん®の製品仕様 ●かるてん®の断面図
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