IoTやAIの技術が切り開くまちの省エネ、快適、安心・安全 スマートな都市開発・街づくりセミナー レビュー

主催:三菱電機株式会社 共催:日経アーキテクチュア

IoTの技術を活用することでエネルギーの需給を制御し、暮らしの快適性や平時・災害時の安心・安全も確保しようとするスマートな都市開発・街づくり。現在開発中の具体事例と、そこで活用されている技術・ソリューションを紹介するとともに、それら技術・ソリューションの将来展開の方向性を提示する。

基調講演 国土強靭化政策の現状とスマートでレジリエントな「まちづくり」とは東京工業大学 科学技術創成研究院 特任教授 一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会 事務局長 金谷 年展 氏

 安倍政権誕生と同時に公約に基づき国土強靭化がスタートした。強靭化とはレジリエンス。これは、災害に強い国づくりへ向けて、平時には免疫力を持ち、災害時には回復力を持つという言葉として使う。

 2013年12月、国土強靭化基本法が成立した。これは2つの点で画期的といえる。1つは、国土強靭化推進本部にすべての閣僚が入った点。もう1つは、国土強靭化基本計画が国のほかの基本計画の最上位に位置付けられた点だ。

 防災と何が違うか。防災は災害に備えて事前に準備するものであるのに対し、国土強靭化は平時に強靭な体質をつくっておくことだ。それによって災害時に被害を最小にする。平時に役に立つものを有事にも役立たせる。

 本日のテーマであるスマートなまちづくりも、国土強靭化基本計画の中で「スマートコミュニティ形成を目指す」と位置付けられている。国土強靭化アクションプラン2016でも、例えば「再生可能エネルギー等の自立・分散型エネルギーの導入や電気自動車・燃料電池自動車等によるV2X(自動車から各家庭やビルに電力を供給するシステム)の普及を促進するとともに、スマートコミュニティの形成を推進する」と記されている。2017年度に予算化されるスマートコミュニティの方向性が、国土強靭化の視点からみえてくる。

 2016年はレジリエンスの評価という大きなムーブメントも起きた。1つは、民間の企業・団体を評価するレジリエンス認証だ。内閣官房が定めたガイドラインに基づき、レジリエンスジャパン推進協議会が2016年4月、認証機関として業務をスタートさせた。住宅のレジリエンス評価もCASBEEレジリエンス住宅として始まった。平常時、災害発生時、災害後のレジリエンス度を、ハードだけでなく、居住者の防災意識まで含めて評価する。

 企業・団体や住宅の評価に続いて新しく登場しそうなのは、エリアのレジリエンス評価だ。建物が倒壊せずに人命を守れる、災害時も災害後もエネルギーを確保できる、そういう災害に強いまちを開発するにはコストが掛かるだけに、補助金などメリットを受けられるようにすることでそれを後押しする必要がある。

 あらゆるものがインターネットでつながるIoT技術の活用もホットなテーマだ。建築物にセンサーを付けて、平時は建物の健全性などを、災害時には被災状況などをモニタリングする。中古住宅の資産価値を評価する手法としても活用が期待される。経済産業省では、住宅のIoTとレジリエンスというテーマで来年度に向けて動き始めている。

 私自身はスマートなまちづくりをレジリエンスの視点から推進していく立場に立つ。私が媒介役になって民間の皆様の思いを国や自治体に伝え、うまくマッチングできれば、と心掛けている。

レジリエンスジャパン推進協議会のワーキンググループで検討されている「構造物センシングによる科学的インスペクション」の考え方
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事例紹介 これからの街づくりに必要なこと〜関西最大級の再開発プロジェクト「ZUTTOCITY」の事例を中心に〜野村不動産 関西支社 住宅事業開発部推進 課長 平生 雅也 氏

 「人に、街に、誇りをもたらす暮らしを創造する」という意味を込め、「プラウド」というブランド名でマンション事業を展開している。そこでは、「スマート&グローイング」を規範に据え、①アクティブデザイン ②パッシブデザイン ③コミュニティデザイン ④セーフティーデザイン――の4つのデザイン方針を定めることで、時を重ねてなお暮らしの豊かさが深まっていく住まいづくりを目指している。

 このような基本概念・方針の下、ZUTTOCITY(ズットシティ)のまちづくりに具体的にどのように取り組んできたか。

 ZUTTOCITYは、JR大阪駅まで10分圏内に位置するJR塚口駅に直結する森永製菓の工場跡地8万4610㎡に計1271戸のマンションと戸建て住宅を供給する複合再開発事業である。ここに住んでいたら笑顔で過ごせ、例えば安心や安全を意識することなく、ずっと住み続けたいと感じられるようにすることを目指した。

 開発コンセプトには、①便利を ②愛着を ③共創を ④安心を ⑤エコを、ずっと――という5つのキーワードを据えた。この5つをハード面やソフト面で具体化するにあたって、それぞれが円を描くようにつながることを心掛けた。そこに、三菱電機のIoT技術を活用している。

 ずっと住み続けたくなるまちを実現するために各種の設備を導入した。マンション共用部では、太陽光発電と蓄電池、ガスコージェネレーションシステムを活用し、高圧一括受電の電気料金の削減を図る。まち全体で月当たり約50〜60万円程度の削減効果を想定。削減分は、コミュニティ活動資金に充てる。住戸内では、高圧一括受電、光ボックスやHEMSによる電力使用量の見える化、家電制御、デマンドレスポンス(DR)によって、戸当たり5〜15%程度の電気料金削減が期待される。

 さらに、駅ビルやマンション共用部にはデジタルサイネージを設置し、街区全体の電力使用量を表示し、居住者や地域住民の省エネ意識向上を図っている。ここには常時、市域の情報や防災情報・交通情報を表示し、非常時には緊急時の情報取得に役立つ設備としても活用できる。

 デマンドレスポンスは地域通貨と連動している。①関西電力からの要請を受け、MEMSアグリゲーターが各戸のHEMSを利用し、電力逼迫時にDR要請アラームを発動 ②要請に応じてリビングのエアコンを制御した居住者を各戸のHEMS機器が検知し、居住者に地域通貨のポイントを付与 ③地域通貨は地域の加盟店での買い物に利用できる――という日本初の仕組みだ。電力削減効果は夏季で約7%減、冬季で約5%減、年間で約2万4000kWhと見込まれる。

 私たちがZUTTOCITYで目指すのは、ストレスなく、エネルギーを賢く利用できるまちづくり、そしてそこから生まれるメリットをコミュニティ活動に振り向け、居住者の笑顔と住みやすさが永続的にずっと続く、そんなまちづくりだ。

ZUTTOCITYでのエネルギーマネジメントシステム。AからCまでの3つの街区のうちA街区はすでに完成・入居済み
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主催社講演IoT技術とクラウド基盤を活用したスマートタウン向けEMSの紹介〜DIAPLANET TOWNEMSのご紹介〜 三菱電機 インフォメーションシステム事業推進本部 インフォメーションシステム統括事業部 トータルソリューション事業化推進センター 副センター長 藤原 聡子 氏

 低炭素化への大きな期待の中で、再生可能エネルギーの導入拡大、エネルギーの利用効率の向上、エネルギーのセキュリティが求められている。私たちはこれらの実現に向けて、供給側ではスマートグリッド事業、需要家側ではスマートコミュニティ事業の強化を図り、低炭素社会と安全で豊かな社会に貢献する取り組みを続けている。

 「DIAPLANET TOWNEMS(ダイヤプラネット・タウンイーエムエス)」はそのスマートコミュニティ事業の一環としてスマートタウン向けに開発したもの。IoTの基本的な仕組みに沿ったクラウドサービスとして提供している。基本的な仕組みとは、①リアル空間のセンサー、機器、ロボットでデータを取得 ②それらをデジタル空間に蓄積し、ビッグデータ化 ③それを人工知能(AI)で分析し、結果をリアルな空間に――というものだ。

 主な機能は3つ。1つはエネルギーマネジメントだ。太陽光発電量、蓄電量、電力使用量をクラウド上に収集・蓄積し、住戸ごとやまち全体のエネルギー情報の「見える化」を実現する。デマンドレスポンスへの対応やマンション共用部の電力使用量の遠隔制御も可能だ。2つ目は便利な暮らしのサポートだ。電子掲示板・電子回覧板の閲覧や共用施設の予約などマンションポータル機能のほか、スマートフォンを用いた家電の運転状態の表示・制御機能や地域のお得情報の表示機能、スマートフォンと自宅のテレビを用いた家族間の電子伝言板機能も持つ。3つ目は防犯・防災支援だ。マンションの共用部に設置されたデジタルサイネージを通じて、地域の気象情報や近隣鉄道の交通情報などを提供する。重要な防犯・防災情報は、それを表示するように画面が自動で切り替わる。

 特徴も3つある。まず、家庭のテレビでサービスを利用できる。パソコンを立ち上げて、そのアプリケーションを用いて、という使い方は煩わしい。そのほか、スマートフォンやデジタルサイネージでも利用可能で、画面デザインに統一感を持たせた。誰もが容易に利用できるインターフェースを目指している。次に、外部サービスを自由に組み合わせられる。エネルギーマネジメントだけでなく、防災・交通・地域情報、共用施設予約、電子回覧板などをマンションポータルサービスとして提供する。最後に、街区・地域の活性化だ。まちのニーズに合わせてサービスを随時更新・追加することによって、最適なサービス提供を実現する。節電要請の機能と地域通貨などのポイントサービスの連携は、ポイント利用の消費を促し、地域経済の活性化に貢献できる。

 今後は追加サービスとして、ガスや水道を含めたトータルな「見える化」や災害時も安心して生活を継続できるような電力需給コントロール機能、セキュリティやヘルスケアに関連するサービスの提供も検討していく。低炭素境社会や安全で豊かな社会に貢献するとともに、皆様の課題解決にも対応していきたい。

「DIAPLANET TOWNEMS」のシステム構成例 「DIAPLANET」と呼ぶクラウドサービスの1つとして提供する
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主催社講演 スマートでエコな街づくりに、安全・安心の空間を〜セキュリティの考え方と導入事例〜三菱電機 トータルセキュリティー事業推進部 部長 伊藤 英明 氏

 当社の「DIGUARD(ディガード)」では、機器・システムの構築、保守、サービス提供を、お客様のニーズに合わせて提案する。監視カメラシステムや入退室管理システムなどを、照明・空調やエレベーターなどビルの設備と連携させることによって、お客様の資産を守りながら、業務効率化、省エネ、利便性向上も図る。

 ビルのセキュリティでは、建物の重要度と通行対象者を定義し、重要度に応じたセキュリティレベルをまたぐ箇所にセキュリティ機器を設置するのが基本だ。三菱統合ビルセキュリティーシステム「MELSAFETY(メルセーフティー)」では、通常のカードリーダーからカメラインターホン付きカードリーダー、ハンズフリー認証装置、指透過認証装置などを取りそろえる。

 ビルの設備と連携させる事例としては、省エネを狙ったものがある。ハンズフリーの入退室管理システムでは、タグを身に付けていれば扉に近づくだけで認証される。その認証情報を、照明設備の点灯・消灯にも用いる。最終退出の場合には、それに連動して消灯されるので、消し忘れ防止につながる。

 利便性向上につながるのは、セキュリティ連動・エレベーター行き先予報システムだ。これは、セキュリティゲート通過時にカードを読み取り装置にかざすと、利用すべきエレベーターがゲート上に表示され、行き先階も自動登録される。行き先階ごとに利用者をまとめ、目的階までスムーズに運ぶ。セキュリティ性の向上と、混雑の緩和や待ち時間の短縮が可能になる。

 マンションのセキュリティでは最近、エントランスに顔認証装置を設置する例が出はじめている。カギなどを差す必要がないので、荷物を持っていてもラクに扉を開けられる。認証装置をデジタルサイネージに組み込む例もみられる。

 まちのセキュリティでは、一番の対策はコミュニティーでの見回りやあいさつ・声掛けと言われるが、それをサポートする監視カメラも犯罪の抑止や安心の確保に役立っている。これからはさらに、犯罪の未然防止に役立てることもできる。

 未然防止を可能にするのは、監視カメラと映像解析技術だ。同社では、サーバー上でやっていた学習・推論処理を、監視カメラなどそれを組み込んだ機器側でできるコンパクトな人工知能を開発し、映像解析への応用を検討している。それによって、車いすやベビーカーなど見た目に関する属性、「ふらつく」「うずくまる」といった動きに関する属性、放置物や危険物などシーンに関する属性を、画像データを基に学習させ、検出する事を考えている。セキュリティシステムが人の目や頭の代わりになって、トラブルの予兆や見守りを要する事象を事前にキャッチできるようになる。システムが見守りの中で異常行動や危険物を検知した場合は、監視カメラが自動追尾するシステムも開発されていくのではないか。

 これからはこうしたプラスアルファの技術力によって見守り対象をさらに広げ、まち中に潜むリスクや課題に事前に対応し、人に優しく、賢いまちづくりに貢献していく。

これからのセキュリティシステムのまちへの適用イメージ コンパクトな人工知能を組み込んだ監視カメラが、犯罪の未然防止に役立つようになる
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展示コーナー スマートな都市開発・まちづくりを支える技術・ソリューション

 セミナー会場には、スマートな都市開発・まちづくりを支える三菱電機の技術・ソリューションがデモンストレーションを交えながら展示された。

 1つは、野村不動産、ジェイアール西日本不動産開発と長谷工コーポレーションの3社が共同で開発する「ZUTTOCITY(ズットシティ)」でも導入された「DIAPLANET TOWNEMS(ダイヤプラネット・タウンイーエムエス)」である。分譲マンションで構成する3つの街区のうち2016年3月に完成した一街区247戸ですでに稼働中だ。

 セミナーで紹介されたように、このシステムはマンションの共用部と各住戸の電力使用量を「見える化」制御するエネルギーマネジメントシステムとして利用されている。さらにマンションポータルとしての顔も持ち、電子回覧板の閲覧や共用施設の予約といった機能も提供する。これらの機能は、家庭のテレビはもちろん、居住者個人のスマートフォンやマンション共用部に置かれるデジタルサイネージからも使うことができる。システムの機能がエネルギーマネジメントに留まらないうえに、スマホからデジタルサイネージまで共通の、誰もが使い易いインターフェースを持つ点が、大きな特徴だ。

 このほか、統合ビルセキュリティーシステム「MELSAFETY(メルセーフティー)」と、ネットワークカメラシステム「MELOOK(メルック)3」にも、それぞれ展示コーナーが設けられた。「MELSAFETY」に関しては入退室管理システムとして非接触カードリーダーやハンズフリー認証装置などの端末を展示する一方で、ビル設備との連携例としてセミナーで紹介した照明やエレベーターとの連携のほか、映像監視システムや防災設備との連携も例示した。「MELOOK3」はタイプの異なるカメラやレコーダーなどを展示するとともに、暗所や逆光などの条件下でも高精度の映像をとらえられる点を確認できるように、通常のカメラ映像との差をデモンストレーション用の映像として示した。これらの技術・ソリューションは、安全・安心を確保するものとしてまちへの展開も考えられている。

 省エネ、快適、安全・安心――これらの確保は、エネルギーマネジメントを無理なく実現し、誰もがいつまでも住み続けたいと思うスマートな都市開発・まちづくりには欠かせないものだ。三菱電機の技術・ソリューションを主軸に据え、さまざまな設備・機器やサービスとも連携を図ることで、そうした都市開発・まちづくりを実現したい。

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