最新オフィスに学ぶ

「24時間、力いっぱい働ける」
中小ビルが渋谷に登場

新築ビルに見た働きやすい工夫とは?(前編)

2017/12/13
最新オフィスに学ぶ

ベンチャー企業の働きやすさを追求

成長志向のスタートアップ間もない企業は勤務時間もバラバラになり、社員の働き方も多様化しているため、このビルはさまざまな工夫を凝らしている。AD-O渋谷道玄坂はオフィスビルのため基本的に宿泊はNGだが、テナントが24時間、オフィスを利用することを想定しながら、快適な環境づくりが徹底されているのだ。主なポイントを挙げると、以下のようになる。

・セキュリティー上の工夫
・キッチンを設置
・共有の会議室を設置
・イントラネットを活用した連絡網

セキュリティー上の工夫=ベンチャーならではの働き方にフィットした設備

ビルのエントランスの扉は二重になっている。手前の扉は20時から翌朝の8時まで、奥は24時間、施錠されている。専用のカードキーがないと中に入れない。来客はインターホンで呼び出しする必要がある。

エントランスホールは、最長4.5mの天然木の杉板を壁面に乱尺貼りしている

エントランスホールは、最長4.5mの天然木の杉板を壁面に乱尺貼りしている

インターホン

インターホン

メールボックスもオートロックになっており、エントランスと同じカードキーで解錠される。さらに、各フロアには警備をかければエレベーターが不着床になるなど、万全のセキュリティー体制を整えている。

エントランスと同じカードキーで解錠

エントランスと同じカードキーで解錠

キッチンを設置=コミュニケーションが高まる効果も

専有スペースには、快適さをより実感できる工夫がある。オフィスとしてはゆったりとしたキッチンを設置したのだ。冷蔵庫や電熱器を置けばちょっとした軽食を作るには十分な環境だ。広さは約6m²を確保。誰かが作業をしていても十分に人が通れる広さだ。料理をすることで、社内でのコミュニケーションが高まる効果も期待できる。

キッチン

キッチン

トイレはもちろん男女別。女子トイレは2ブースを備え、洗面台の隣にはパウダースペースと棚が用意されている。洗面台に設置された蛇口はハンドドライヤー一体型で、手を洗った後は、その場で乾かすことができるので効率的だ。飛沫はすべてシンクに落ちるため、一般的なハンドドライヤーに比べ、衛生的であり、掃除やメンテナンスの負担も減らせる。

共有会議室を設置=フレキシブルで使い勝手よく運用

1Fには共有の会議室を設けた。AD-O渋谷道玄坂に入居する(入居を予定している)企業の規模は、社員2~3人から約20人と幅広い。会議室は、どの規模のテナントでもフレキシブルに対応できるように工夫している。

共有会議室

共有会議室

共有の会議室が2つ設置されている。10人程度は入れるこの会議室は一部屋でも十分な広さだが、二部屋をつなげて、一つの大きなスペースとして利用することも可能だ。また、机や椅子は収納しやすいタイプが選ばれているので、スペースのレイアウトの自由度は高く、セミナーやショールームなどにも使える。

テナントであれば、会議室を1日2時間まで無料で利用できる。「このスペースの面白い使い方があれば、ぜひ提案してほしい」と語る腰高氏。ガラス張りのため、通行人からの注目度も高く、企業アピールにはもってこいだ。

通路側から見た会議室

通路側から見た会議室

快適な環境づくりへのこだわりは、自動販売機にまで及ぶ。1Fの共有スペースに設置されている紙コップ式の自動販売機には、飲料だけでなくスープやみそ汁などがラインアップされている。「夜遅くまで働く入居者の方に、『わざわざ外に出なくても、手軽に軽食を取ることができる』と、好評です」(腰高氏)

自動販売機にはスープやみそ汁もラインアップに入れた

自動販売機にはスープやみそ汁もラインアップに入れた

イントラネットを活用した連絡網=紙の掲示をなくす

ビルの管理側と入居者との連絡は、すべてデジタルで行われる。たとえばエレベーター点検やビルのメンテナンスなどのお知らせは、イントラネットとデジタルサイネージで掲示する。紙による掲示をなくすことで、ロビーのデザインを損なうことなく、エントランスは常にすっきりとした印象が保たれる。ADWの狙い通り、入居者はITベンチャーが中心であるため、デジタルでのやり取りに抵抗感はなく、現在までにトラブルは起こっていない。

オフィステナントは業種や規模によって、求められる設備や環境が当然違ってくる。AD-O渋谷道玄坂の取り組みを見ると、ここに紹介したような様々な工夫のほか、オフィスとしてコンセプトを明確にしていることも、これからのビル経営のヒントになる。

オフィスビルの新築や建て替え、リノベーションを検討するにあたり、地域性や時代の流れを念頭に置き、明確なコンセプトを立てることも効果的だ。AD-O渋谷道玄坂の場合、渋谷というITベンチャーの街の特性を生かして、「成長支援」をコンセプトに掲げている。これからのオフィスビルは入居者を待つだけの単なる箱ではなく、必要としている企業のニーズを見極め、テナントに寄り添う存在であることが求められている。

(写真:エー・ディー・ワークス)

(写真:エー・ディー・ワークス)

概要
名称:AD-O渋谷道玄坂
所在地:東京都渋谷区道玄坂1-22-9
敷地面積:235.76m²
延べ床面積:1931.98m²
構造:S造一部SRC造
規模:地上11階地下1階建て
事業主:エー・ディー・ワークス
プロジェクトマネジャー:シービーアールイー
設計・監理:松田平田設計
デザインアーキテクト:隈研吾建築都市設計事務所
施工:坪井工業
竣工:2017年9月


木内 渉太郎=ライター、小宮山 桂=カメラマン(特記なき写真)

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