事例研究・バリューアップ術

大手不動産会社の
「老朽ビル・バリューアップ」に学ぶ

空室をリノベーションで解消する三菱地所レジデンスの「Reビル」事業

2018/01/17
事例研究・バリューアップ術

オフィスにキッチンを併設

Reビル事業は、中小オフィスビルのオーナーにとって、大手不動産会社の建物再生ノウハウを利用しながら、所有ビルの価値向上、安定したビル経営につなげることが期待できる。さらに、事業の取り組みを通じて、中小ビルオーナーが採り入れたいビル経営のヒントも見えてくるのではないか。そんな思いで、編集部員でReビルの現場に足を運んだのだ。

「ザ・パークレックス日本橋馬喰町」を訪れたとき、まず目に入ったのが、工事現場のような荒々しいエントランス周りの外壁とサインだった。改修のコンセプトは「UNDER CONTRUCTION(工事中)」。人も建物も、常に進化の途上にあることを表している。

1986年の新築当初はウェディング関連のショールーム、倉庫として利用されていたが、近年はほぼ全フロア空室の状態が続いていた。窓が少ないなどのマイナス要因もあって借り手は見つからなかった。維持管理費だけが発生する状態だったという。

改修では1,2階部分の外壁タイルを取り除き、上部の色も塗り変えた。余計なものを取り除いたシンプルな外観によって、ビルの存在感が高まっている。オフィス内はテナントが自由にカスタマイズできるように、内装を取り除いたスケルトン仕上げにしているという。

エントランス周りのサインが、タイルをはつった荒々しいコンクリート面に取り付けられている(写真:村島正彦)

エントランス周りのサインが、タイルをはつった荒々しいコンクリート面に取り付けられている(写真:村島正彦)

ビルの中に入り、エレベーターを降りて、三菱地所レジデンスのオフィスに案内してもらった。スケルトン仕上げにしたことで、天井高が低いという印象は受けない。人工芝を敷き、そこにカラフルなテーブルと椅子が並び、開放的な空間が広がっている。打ち合わせブースや靴を脱いで打ち合せられる畳スペースのほか、コーヒーカウンターが設置され、卓球台も置いてある。こうした空間づくりには、社員やクライアントとのコミュニケーション活性化をはじめ、アイデアの創出や、仕事のメリハリを強化する目的があるという。

6階に入居する三菱地所レジデンスのオフィス。人工芝を敷き、スリガラスの造作家具で執務空間を区切り、開放的なオフィス空間とした(写真:編集部)
6階に入居する三菱地所レジデンスのオフィス。人工芝を敷き、スリガラスの造作家具で執務空間を区切り、開放的なオフィス空間とした(写真:編集部)

6階に入居する三菱地所レジデンスのオフィス。人工芝を敷き、スリガラスの造作家具で執務空間を区切り、開放的なオフィス空間とした(写真:編集部)

三菱地所レジデンスのオフィスの一角にはコーヒーカウンターが設置され、卓球台もある(写真:編集部)

三菱地所レジデンスのオフィスの一角にはコーヒーカウンターが設置され、卓球台もある(写真:編集部)

7階のフロアには、このビルのリノベーション設計を手掛けた設計事務所・オープン・エーが入居している。そのオフィスにもお邪魔した。

ガラス建具で間仕切られたエントランスを通ると、目を引くのはキッチンだ。大きなステンレス天板にシンクを設定し、レンジの上にはシャープなレンジフード、コンクリートの荒々しい壁面にはネオンサインが輝く。ステンレス板はテーブルを兼ねていて4脚のスツールがある。その横には居心地の良さそうなソファー、観葉植物が配され、まるで洒落たカフェに来たかのようだ。

広いフロアに目を移すと、2m程の高さの黒いスチールのフレームで仕事用のデスクや書棚などが組まれ、アンティークの大小の打ち合わせ用のテーブル・椅子がそこここに置かれている。高い天井で、断熱材の銀色のフィルムや設備配管があらわしにされ、内装を作りあげ過ぎない近年のリノベーション提案の見本と言える。

また、このフロアは、オープン・エーの本社機能だけではなく、一部は、社外のワーカーも利用できるシェアオフィスとなっている。オフィス空間にカフェ空間を備える演出とともに、新しい働き方の提案がなされている。

オープン・エーがテナントとして入居する。オフィスの中に大きなキッチンが一際目を引く(写真:村島正彦)

オープン・エーがテナントとして入居する。オフィスの中に大きなキッチンが一際目を引く(写真:村島正彦)

天井の銀色の断熱材や設備配管はあらわしとした(写真:村島正彦)

天井の銀色の断熱材や設備配管はあらわしとした(写真:村島正彦)

黒いスチールフレームでデスク・書棚・物置などの什器を構成している(写真:村島正彦)

黒いスチールフレームでデスク・書棚・物置などの什器を構成している(写真:村島正彦)

設計事務所ならではの蔵書もカフェの書棚のような設えが施されている(写真:村島正彦)

設計事務所ならではの蔵書もカフェの書棚のような設えが施されている(写真:村島正彦)

打合せにも使えるスチールフレームで仕切られた4人掛けの空間では、スタッフが仕事をしていた(写真:編集部)

打合せにも使えるスチールフレームで仕切られた4人掛けの空間では、スタッフが仕事をしていた(写真:編集部)


文・写真:村島正彦

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