事例研究・バリューアップ術

築50年の旧本社ビルを売却せず再生

創業者の思いを受け継ぎ、街に刺激を与える場をつくる

2018/02/07
事例研究・バリューアップ術

テナントはクチコミで誘致

建物の用途や誘致するテナントについては、武井氏とNENGOに加え、リノベーション設計を担当したオンデザインパートナーズ(横浜市)の西田司代表、川崎市など、様々な関係者が連携した。

unicourtは、武井氏の子どものPTAのつながりで、地域にミニバスケットコートのニーズがあることを知ったことがきっかけだった。そしてこれを利用するバスケットのコーチが知人の整骨院を紹介し、入居することになった。

さらに、川崎市の関係者がFablabのVUILD工房を、NENGOの関係者がTKBrewingをそれぞれテナントとして誘致した。

NENGOの中村氏は、「西田さんは横浜市でリノベーション複合施設の泰生ポーチを手がけています。武井さんがその建物を見学に行き、西田さんの設計や運営の経験を買って仲間に引き入れました。unicoの関係者はみな、いいものをつくりたい一心で協力してプロジェクトを進めました」と説明する。

武井氏は、会社設立70周年の節目に、旧社屋の利活用を目指してunico事業部を立ち上げ、オープン後も運営に携わっている。

「私は長らく主婦業に専念していたのですが、2人の子どもも成長して手がかからなくなり、unicoの運営に力を注ぐことにしました。毎朝8時からの掃除に始まり、テナントへの家賃の請求など出納業務、バスケットコートの予約管理や貸し出し業務など、文字通り手探りで運営管理に当たっています。本社からの応援スタッフに加え、新たに募集したスタッフを含めて3人で回しています」(武井氏)。

オープンしてまだ日は浅いが、運営面はどうか。武井氏は「テナントのリーシングは順調」と話す。「バスケットコートは特に好評です。近隣の学校や公立の体育館などでは営利的な教室の開催が制限されます。そのため、バスケットにとどまらず、ダンスやドローンの練習、社員レクリエーションなど様々に利用されており、想定以上の高い稼働率となっています」と笑顔を見せる。

長期的な展望についても聞いた。「当面10~15年、適切に運営できればよいと考えています。長期的にはシェアオフィスの需要動向や、日進町の未来については不確定なので、10~15年先にあらためてこの建物や土地をどう活用するかを考えればよいことでしょう」と武井氏は言う。

unicoが掲げるスローガンは「発酵してる?」というものだ。長い間、街とともに成長してきた旧本社の建物を壊さず、活用して「発酵の場」とする。そして、地域に根ざしたビルオーナーならではのクチコミで、多様な人々や企業がつどう交流の場をつくり出す。ネガティブにも捉えられかねないドヤ街で、街に新しい刺激を与える取り組みがゆるやかに発酵し始めている。

鉄骨造の倉庫は、屋内ミニバスケットコートとして活用した「unicourt」に。バスケット以外にもダンスやドローンの練習場などとして予想を上回る好評を得て、稼働率も高いという(写真:NENGO)

鉄骨造の倉庫は、屋内ミニバスケットコートとして活用した「unicourt」に。バスケット以外にもダンスやドローンの練習場などとして予想を上回る好評を得て、稼働率も高いという(写真:NENGO)


文:村島 正彦

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