中小ビルTOPICS

ビルからの転出も歓迎
敷金を半額にした「出世ビル」

老舗の髙木ビルが始めたテナント支援サービス

2018/03/14
中小ビルTOPICS

中小ビルのオーナー同士で連携した方がいい

――実際にそうした横のつながりも生まれつつあるんですか?

髙木まずは出世ビルのスキームを採りいれて、参加するビルオーナーが20人程度いらっしゃいまして、その方々とはイベントを通じてお話しする機会を持っています。イベントに必ず参加しなきゃいけないというハードルをつくりたくないので、いまはBIRTHで、実は月に1回、「IDOBATA BIRTH」というトークセッションをやっています。新しい取り組みや、ビル経営につながるような新しい事業の話とか、ゲストを招いていろいろお話しするイベントです。

これまでは、何か「隣のビルはライバルでしかない」という意識が残っていたんじゃないでしょうか。隣のビルはライバルなので情報交換したくないと。でも、中小ビルは本当は連携した方がいいと思います。連携して、そのエリアや駅のブランドをどうやって高めていくかということを考えていけば、それだけで皆さんのビルのバリューが何パーセントかアップすると思うんですよね。

――出世ビル、BIRTHをつくって、何か仕事上の変化はありましたか?

髙木出世ビルを始めたときもそうですが、ベンチャー企業さんとの接点が増えました。ベンチャー企業さんの経営者とお話ししたりとかする機会が増えると、とにかく「オフィスビルに入居する」ことが、企業の成長の過程で実は大きな出来事だということがすごく分かったんですね。

オフィスビルに入居することは、本当にジャンプアップなんですね。それまではマンションやアパートにいて、小さなステップを踏んでいる。そこから成長して、ビルに入居する時には、新たな資金も使うし、労力も使う大きなジャンプをするんですよ。それなのに、そのジャンプは、わからないことだらけなんです。契約のこともわからないし、それこそ原状回復ってなんなんだろう、入居工事って必要なのかとか、本当にそのレベルから知らないことばかりなんですよね。このタイミングでのコンサルティングの領域が日本にはほとんどないということに気付いたんです。

BIRTH KANDAのフリーワーキングスペース(写真提供:髙木ビル)

BIRTH KANDAのフリーワーキングスペース(写真提供:髙木ビル)

(写真提供:髙木ビル)

(写真提供:髙木ビル)

――オフィスビルにステップする際の戦略がないんですね。

髙木昨今、事業に関する税務的な問題とか、資金調達の方法、IPOまでのファイナンス計画、法務やコンプライアンスはどうしたらいいのか。このあたりのコンサルティングはいろいろ充実していると思います。しかし、どうやって効率よく、企業成長に合わせてオフィス展開をしていくかという不動産戦略は、ほとんど日本に存在していないということに気付いたんです。

本来は、企業の成長に寄り添った形で移転戦略を実現できたら、かなりコストカットも可能になると思います。いま、ビルに移転する際に、様々なコストを高いままに決めていたりとか、不要なものまで支払ったりとかいうこともあるはずです。ある程度は仕方ありません。実業のことに頭がいっぱいになっているときに、企業の経営者に「オフィス移転はどうしましょうか」と言ったところで、創業まもないスタートアップ企業が移転戦略に時間を割いて実業の手を止めるということはあり得ないですよね。

ビル経営の常識に根拠はあるか

ですから、移転戦略を誰か信頼できる人に任せられたら、ものすごく心理的にも経済的にも不安が取り除けるんじゃないかと思いまして。それで、創業してビルに入るまでの過程をつくったのがBIRTHなんです。1人から起業できるように、個室はないですけれども、ポストやロッカーも備え付けて、会社登記もできる形にしました。そして、10名、5名、3名と企業の規模に合わせた人員数の個室もそろえて、ここから企業をスタートする場を設けたんです。

(写真提供:髙木ビル)

(写真提供:髙木ビル)

(写真提供:髙木ビル)

(写真提供:髙木ビル)

ここからスタートして、いよいよビルに移転しようというときには、我々がサポートできます。オフィスビルはこうやって選ぶんですよとか、いまならこのぐらいのサイズのビルに移転するのがいいんじゃないんですかとか。髙木ビルにはいま空きがないですけれども、同じ出世ビルのスキームがある他のビルがあります、と他のビルともスムーズに連携が取れると、経営者も不安がないですよね。

――そういうニーズは高いでしょうね。

髙木出世ビルの参画企業のなかには、中古の家具販売会社や保証会社がいるので、いろいろコストも圧縮できます。

ビルの賃貸借の現場では、「これがスタンダードだ」という常識がたくさんあって、でもそれにとらわれる必要など全然ないことって、実はいろいろあると思うんですよ。例えば、内装もそうです。オフィスだからといって、オフィス専用の家具や部材を使う必要ってまったくないんですけれども、何かオフィス用のものをそろえなきゃいけないと思っている。オフィス用と付いているだけで高くなることもありますからね。

出世ビルもそうです。「敷金はこれだけもらうものだ」という常識が根強くありますね。いわば根拠のない「こんなものだ」という常識がたくさんあるので、そこにメスを入れていくだけで、もっとテナントとオーナーがお互いに「ウィン―ウィン」になれる可能性がたくさん隠れているはずです。


文:編集部、写真:菊池くらげ(特記なき写真)

併せて読みたい
併せて読みたい