オフィス経営の分岐点

「ビル経営はブルーオーシャン」
髙木ビルの髙木秀邦氏に聞く

若きリーダーが語るビル経営の未来

2018/03/20
オフィス経営の分岐点

ビル事業を「継ぐか、継がないか」ではなく、何をやりたいか

ベンチャー企業の経営者さんたちと最近会う機会が多いので本当に感じますけれども、もし土地、建物を彼らが持っていたら、もっといろいろ面白い活用をしますよ。みんなストックがあればいかようにも使って、やりたいことやるでしょうね。土地、建物が最初にあるなんて、彼らにしたら天国ですから。そのような状況があるのに、ビル事業を継ぐかどうかなどと、お荷物をどう処理するかみたいな話をしている。

単純にビル事業を「継ぐか、継がないか」とか、「ビルを売るか、相続するか」とか、そんな選択じゃないと思うんですよね。まずは「何をやりたいか」ということだと思うんですよ。

――といっても、髙木さんはビルを10棟も持ってらっしゃるわけですよね。それだけ持っているから、やりたいことが実現できるんじゃないですか。1棟しかもっていなくても、いろいろできることがありますか。

髙木あります。実は1棟を持っていらっしゃって、これからに備えて出世ビルに参画している方もいらっしゃいます。いろいろやりたいことがある方たちです。先日は、1棟しか持っていない方だけど、数年後に建て替えを考えており、自分ならではのバリューをどうやって作るかを本気で考えている若いオーナーの方とこれからのビル経営について3時間ぐらい熱い話をしました。

そういう方々って、やる気があっていろいろな方向を見ていて積極的なんですよね。どんどんいろいろな人に会って、自分の得意なところは何なんだろう、自分の色って何なんだろうということを探し出そうとしているんですよ。

1棟だからどうとかじゃなくて、自分はビジネスとして何をしたいのかということを、真剣に考えているんですよ。いろいろやりようがあるんです。1棟しかないといったって、例えば5フロアあったら5フロア分の何かができます。例えば、エントランスだけを使っても、なにかそのビルだけの独自のカラー・バリューを出すこともできるはずです。1テナント空いたときにそこを何かもっとシェアリングのものにするとか、街とつながる事業を誘致するとか、いろいろあると思うんですよね。

いまやSNSなどで情報はいくらでも発信することもできます。中小ビル経営者はチャンスだと思うんです。今までどこにどんな広告を出しても、ほとんど誰にも気付かれなかったり、広告が仲介会社にしか回らなかったのが、多くの一般の人の目に触れる可能性があるじゃないですか。すごいことだと思いますね。

――首都圏の郊外や地方都市のビルでも、なにか戦略がありますか。

髙木我々が目指す形としては、都心のビルにいるベンチャー企業が郊外や地方に進出したいときに、そこの出世ビル群で選んでもらえるとか、そういう横展開を想定しています。

BIRTHみたいなサテライトを郊外に造ることによって、連携することも考えられる。エリアによって、置かれた環境がだいぶ違うと思いますので、やはりそのエリアの核となるようなビルオーナーさんがどんどん立ち上がってくれたら面白いなと思いますね。地域の活性化を進める動きとも連携する志のあるオーナーがいらっしゃると、どんどんアメーバ状につながっていくかもしれません。

BIRTH KANDAのラウンジ(写真提供:髙木ビル)

BIRTH KANDAのラウンジ(写真提供:髙木ビル)

中小ビル100棟ぐらいでアライアンスを組んで、うまくビル経営ができれば、もしかすると大手不動産よりも競争力を持つことができるかもしれない。本気でそう考えてます。

大手不動産会社の参入で恩恵を受けるのは中小ビル

――最近では、大手不動産会社が中小ビルを造ったり、大規模ビルのフロアを小割りにしたりしてますね。これは脅威ですか。

髙木いや、うれしいですね。恩恵を受けるのは中小ビルです。大手よりも安く、もっと大手にはできないようなものを取りそろえた中小ビルの存在感が増すと思います。オーナーからも「中小ビル経営って面白いんだ」「こういうふうにできるんだ」といろいろなアイデアを出していくでしょう。私なんかには思い付かないことだって出てくると思いますし、もっと異業種からビル経営に飛び込んでくる人も増えてくるんじゃないかなと思いますね。

中小ビルは求められています。世の中から小さな屋台や立ち飲み屋がなくならないのと同じように、人の心地よさっていろいろあります。大は小を兼ねるんだけど、決して小にはなれないんですよね。小だからこそ成し遂げられるものもあると思うんです。その価値観が持てれば、中小ビルの市場は永遠になくならないんだろうなと思っています。

ただ、もっと考えていかないと、中小ビルが厳しい時代に突入するのは間違いないと思います。私は大規模ビルにない「近さ」が武器だと思いますね。

――テナントとの距離感ですか。

髙木はい。いくら大規模なビルが小割りにしたからといって、中小ビルの持つダイレクトな接点は、出せるものではないと思っています。それは人的なものだったりとかしますから。

ホテルなんかもそうだと思いますけどね。じゃあ、大きいホテルだけになっちゃうのかというと決してそうではないし、このおかみさんが素晴らしいんだよと言って泊まりたくなる宿もたくさんありますよね。

――そういう付加価値を持っておかないといけないいうことですね。

髙木付加価値のヒントというのがどんどん出てくるような世の中になってきているので、そういうところにアンテナを張っていきたいと思いますね。

実は神田のBIRTHから5分ぐらいのところで、まだ30歳ぐらいの若い方が古いビルを買って面白い事業を展開しています。古いビルですが、DIYでインキュベーションのオフィスを創ったり、イベント貸しをしていたりして。いろんな人が自由に出入りしていてすごく活気があります。若い人たちもみんな集まってきて、みんなで何かわいわいやって、そこでみんなで何かいろいろプレゼン大会をしているんです。

――なんだか楽しそうですね。

髙木面白いですよね。だからビル事業を承継する人も、何かお荷物を押し付けられるという意識じゃなくて、普段働いている自分の仕事があるなら、それに連携することをやっちゃえばいいんだし、これからどんどん副業が許されていく世の中になりますから、いろいろできるんじゃないでしょうか。

――中小ビル経営とはこういうものだという常識から離れないとだめですね。

髙木そうだと思います。中小ビルを、オフィスとしては弱い、競争力のないオフィスだといった負の捉え方じゃなくて、「箱なんだからどう色付けしようと、何をしようといいんだ」と考えた方ができるイメージも違ってきますよね。「小さいからできること」「古いから出せる味」というように、ネガティブポイントをポジティブポイントに変換してあげることで、オンリーワンの価値が出せると思います。

いま不動産テックとか不動産ベンチャーとか、新しい動きが出てきています。実は中小ビル市場はブルーオーシャンで、星の数ほどあるといわれている中小ビルにヒットするものが出てくれば、すごく新しくて爆発的な動きが出てくるんじゃないかと、おぼろげながらも思っています。

それがなにかはまだはっきりとはわかりません。アプリ開発なのか、まったく異業種からの参入によって何かサイコロの目がガラリと変わる局面が来るのか。ただ、なにか面白いことがいろいろ起きてくるはずだという気持ちが、ふつふつとわいてくるんですよ。だからいま、すごくわくわくしています(笑)。

BIRTH KANDAのラウンジ(写真提供:髙木ビル)

文:編集部、写真:菊池くらげ(特記なき写真)

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