中小ビルTOPICS

電力をビルのコスト削減ツールに
「でんきの窓口」オーベラス・ジャパンに聞く

大庭勇太・代表取締役社長、池田良太・代表取締役副社長へのインタビュー

2018/07/18
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1500棟の実績が培った交渉力

──自社で電力小売り事業者を探して交渉する場合と、オーベラス・ジャパンを通じて切り替える場合とではどう違うのでしょうか。

大庭・池田 中小ビルのオーナーが初めて電力小売り事業者を切り替えようとすると、大抵はインターネットで業界のトップ10から2〜3社をピックアップして連絡し、見積もりを取ると思います。でも小売り事業者にとっては、中小のビルは面倒くさいというイメージを持ちがちで、なかなか相手にしてもらえないケースもあるようです。小売り事業者からすれば、大規模な契約も小規模な契約も手間は一緒なので、あまり乗り気がしないのかもしれません。

私たちの取引先はプロの不動産投資家で、建物はほとんどが大規模です。当社と提携している小売り事業者からすると、のどから手が出るほど欲しい存在と言えます。その強みを生かして、当社からは「中小ビルのオーナーの依頼についてもきちんと対応してほしい」と要請しています。

電力小売り事業者とは、こうしたポリシーを伝えてから提携しているので、一生懸命やってくれます。これが、まったく初めてのビルオーナーが直接、小売り事業者に連絡してもうまくいかないと思います。私たちの最大の武器は、各小売り事業者との交渉力です。

──オーベラス・ジャパンのクライアントはどこになるのでしょうか。

大庭・池田 当社の収入は全て提携している電力小売り事業者から入ります。ビルオーナーからは1円もいただきません。「でんきの窓口」と例えたのはまさにそこがポイントです。ビルオーナーに最適な小売り事業者を紹介すると、小売り事業者から一定の活動に対して報酬を得たり、契約が成立したらインセンティブを得たりしています。小売り事業者によってさまざまなケースがあります。

──ビルオーナーは持ち出しがなく、電力コストを安くすることができるのですね。

大庭・池田 その通りです。私たちは紹介だけでなく、その後の小売り事業者とのやり取りも責任をもってやっていくので、契約後もトラブルになりにくいといった特徴があります。これによってビルオーナーにとっても、電力小売り事業者にとってもウィンウィンの関係をつくることができます。

──コスト削減の実例を教えてください。

大庭・池田 関西エリアで手がけた不動産ファンドが保有する複合施設で、小売り事業者を切り替えたケースです。契約電力が3000kWで、切り替えによって年間で電気代の20%にあたる約4000万円を削減できました。その結果、建物の価値も大きく向上しました。

──今後の事業展開についてお話しください。

大庭・池田 中小ビルのオーナーに、電力自由化についての情報が充分に届いていないと感じています。当社のクライアントであるプロの不動産投資家たちはネットワークが構築できているのですが、中小ビルのオーナーは横のつながりがあまりないようで、一度に多くの人に知ってもらう機会がなかなかつくれません。そのあたりが、私たちにとっても新しいチャレンジになります。

──電力小売り事業者の切り替えについて「一括で見積もります」というウェブサイトもあります。これとはどう違うのでしょうか。

大庭・池田 一見すると似たようなことをやっているように見えますが、私たちは同業者とは考えていません。いわゆる一括見積もりサイトは、電力使用状況を入力すると、あとはそれを見て、どこと契約するかを自分で判断する仕組みです。

私たちは、あくまで不動産業界のために、「建物という金融商品の価値をどれだけ高めるか」をミッションにしています。そのために、リスクがない電力自由化をツールとして使っています。

電力小売り事業者の選び方ももちろん違います。小売り事業者を選ぶ前に、まずは「そのビルをどう運営していくのか」をヒアリングしたうえで、どの小売り事業者を勧めるかを考えます。内容によっては、「金額的にはX社の方が安くなるけど、契約条件なども合わせて考えるとY社の方がいいですね」というようなコンサルティングもします。

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ビルオーナーに複数の電力小売り事業者を提示するリストの例。こうした見積もりを基に、ビルの運営に合わせて最適な小売り事業者を提案する(資料:オーベラス・ジャパン)

私たちは不動産業界OBなので、ビル経営で悩みがあれば、情報をつないだり知識を分け合ったりするといったサポートをすることもできます。不動産業界の人と人をつなぐプラットフォームのような役割も担っていきたいと考えています。

私たちのビジョンは、不動産業界をもっと良くしていくことです。電力小売り事業者の切り替えは、あくまでサービスの一つです。

──どのようにすれば不動産業界は良くなりますか。

実際に業界で働いた感覚として、無駄が多く、旧態依然としているように思います。不動産を金融商品と考えると、いまよりもっと価値を高められるポテンシャルがあるはずなのに、古い慣習のためにチャレンジしにくくなっています。

不動産業界は、景気の波に大きく左右されます。現在はたまたま好調ですが、景気で変動する価値というのは、実は本当の価値とは言えないのではないでしょうか。

持続的に日本の不動産の価値が高いと言われるようになるためには、不動産そのものの価値を高める必要があるし、その価値を生み出す力が求められると思います。電力のコスト削減をはじめ、いろいろな方法で業界のお手伝いをすることが、私たちの使命だと考えています。

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左が大庭勇太・代表取締役社長、右が池田良太・代表取締役副社長(写真:清水盟貴)

オーベラス・ジャパン

2015年5月設立。電力自由化を活用した不動産の収益を向上させるサポートを実施。不動産に応じて最適な電力小売り事業者を紹介する「でんきの窓口」として、初期投資をかけずに電力コストを削減する提案を行う。サービスの提供実績は1500棟を超える。

http://oberlous.jp/


聞き手:編集部、文:高橋真樹

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