知っておくべき制度・補助金

「LED、空調の改修費の半額が還付された」

東京都の「中小企業者向け省エネ促進税制」、大東京不動産に聞く

2018/08/29
知っておくべき制度・補助金

照明のLED化や空調の交換といった省エネ改修を実施しようにも、それなりにコストがかかる。省エネ促進に対する助成金や減税制度などを上手に活用して、コスト削減を進めたいところだ。都内に12棟のオフィスビル等を所有する大東京不動産株式会社(代表取締役 森下正道、港区東新橋)では、中小企業向けの税制優遇措置を活用して省エネ改修を進めている。同社の常務取締役・新澤祥惠(しんざわよしやす)氏に制度活用のポイントを聞いた。(聞き手:編集部)

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常務取締役・新澤祥惠(しんざわよしやす)氏

──御社が所有する銀座木挽町ビルでLED照明と空調の設備改修を行った際に、税の減免措置を活用されたと聞いています。

新澤 銀座木挽町ビルは築24年のビルで、10年前に購入しました。設備が古くなっていたこともあり、2012年に約1000万円をかけて空調設備を交換しました。LED照明に関しては、テナントが退去したタイミングで実施することにしており、まずは2014年にビルの10階のワンフロア、約37坪をLED化しました。全部で26台を取り換えて、47万円ほどかかりました。

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銀座木挽町ビル(写真提供:大東京不動産)
住所:東京都中央区銀座8-18-1
階数:地上10階建て
フロア規模:1階駐車場、2階〜9階136.92㎡(41.41坪)、10階122.64㎡(37.09坪)

──この省エネ改修に対して、どのような減免措置を活用したのでしょうか。

新澤 東京都が行っている「中小企業者向け省エネ促進税制」です。省エネルギー設備などを取得した場合に、法人事業税を減免するというものです。具体的には、納めた法人事業税額の2分の1を限度に、その年度内に購入したエアコンやLED器具などの取得価格の半額が戻ってきます。銀座木挽町ビルに関しては、省エネ効果が高い空調を取り替えた翌年の2013年に約500万円、LEDの時にも同じように2015年に23万円が還付されました。

銀座木挽町ビルだけでなく、ほかの所有ビルでも同じ制度を利用して空調の交換を行っています。銀座木挽町ビルのほかに、これまでに5回活用して、約1000万円が還付されました。かかった費用の半額がきっちり戻ってきています。例えば、その年に納めた事業税額が少なくて、還付金額が改修費用の半額に達しなかった場合には、翌年に繰り越されて戻ってきます。上限もありますし、繰り越しは1年だけなので、計画的に実施した方がうまく費用の改修ができると思います。

──中小企業者向け省エネ促進税制の使い勝手や留意点などはいかがですか?

新澤 ほかの補助金や助成金制度の中には、改修費が高額でないと審査に通らなかったり、専門のコンサルタント会社に依頼する必要があるほど申請手続きが煩雑だったりするものがあります。助成金には予算も審査もあり、必ず利用できるかどうかわかりません。私たちが活用している省エネ促進税制は、手続きはそれほど大変ではなく、自分たちだけで申請できます。設備投資にかかった金額が後から戻ってくる、という仕組みもよかったです。LEDなど少額なものでも減免されます。

ただし、この制度を利用するには、「地球温暖化対策報告書」というものを提出しておく必要があります。

──「地球温暖化対策報告書」とはどのようなものでしょうか。

新澤 中小規模のオフィスや店舗、工場などの事業所を対象に、CO2排出量の報告と、地球温暖化対策の実施状況を東京都に報告するものです。エネルギー使用量によって、提出が義務になるところもあります。ホームページ内にある作成ツールを使用するとCO2排出量が自動換算され、対策努力の報告もメニューから該当するものを選択する方式になっていて、意外と簡単に作成できます。提出もデータをCD-Rなどに入れて提出すればいいのです。

私たちは毎年任意で地球温暖化対策報告書を提出していましたので、省エネ促進税制を申請してみたら、スムーズに利用できたのです。促進税制の申請には、この地球温暖化対策報告書と減免額の計算書や対象設備の明細書など、数点の必要書類を添付するだけでした。

地球温暖化対策報告書も一回パターンを作ってしまえば、次の年からは数字を入れ替えるだけで済む箇所もありますし、申請は楽になりますね。やり方が分からない時や、改善点があった時などは、都の担当者から丁寧な指導もいただけます。制度を利用する時だけ報告書を提出するのではなく、毎年きちんと提出していれば、省エネ化に対応しているビルオーナーとしての認知も高まりますし、テナントからの評価にもつながっていくと思います。

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減免制度なら、かかった費用に応じて還付

──個人のビルオーナーもさほど苦労せずに申請できそうですね。

新澤 そう思います。留意点としては、対象となる機器に条件があることです。推奨している機器がありますので、制度のホームページで対象となる機器のリストを調べておく必要があります。特に、最新の機器はリストに載っていないこともありますので、制度が使えなくなる可能性があります。実は、以前別のビルで太陽光発電を設置したものの、型式が最新でリストに載っていなかったので、制度が使えなかったのです。また、機種が対象のものであるかどうか、設置箇所が正しいかどうかを、都の担当者が確認に来ることもあります。

──今後もこの制度を活用していくお考えですか。

新澤 そうですね。LED化に関しては、現状、所有しているオフィスの面積のうち、まだ2割しか進んでいません。銀座木挽町ビルの設置工事では、約37坪のワンフロアが1日で完成しました。これまではテナントが転出したタイミングで工事を行ってきましたが、オフィスが稼働していない週末を利用すれば、テナントが入居しているままでも可能だということがわかりましたので、これからも積極的にLED化を進めていこうと思っています。LED化することで電気代が安くなったことに加えて毎年ランプを交換する必要もなくなり、テナントにも喜ばれています。

省エネに関しても、空調を省エネ機器に交換することは積極的にやっていきたいですね。テナントへのアピールにもつながると思います。そうそう、銀座木挽町ビルの10階フロアも短期間で新しいテナントが決まりました。

木挽町のビルは、私たちが保有する前は投資用ビルとして、オーナーがよく変わるビルだったのです。時には一年に1、2回変わったこともありました。ですから、私たちがオーナーになった時も、テナントから「どうせまた変わってしまうだろう」というような不安があったようです。長く所有してビルを運営していく旨をお伝えしても、なかなか信じてもらえないテナントもありました。

ただ、省エネ改修に取り組むことで、テナントの快適性が向上するだけでなく、コストも抑えられます。テナントとオーナーとがお互いに利益を享受できて、テナントとの信頼関係を構築していくことにつながります。そして、節約できた分で、オーナーとして少しでもテナントに役に立つ投資ができないか、ということを考えています。弊社の理念は「貸してやっている」「借りてやっている」ではなく「借りてもらっている」「貸してもらっている」という関係になって、テナントとの相互発展を考えていくことです。それがビル運営にとって重要だと思います。省エネ改修はそのための良い機会になりました。

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文・写真:鈴木素子

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