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[コージェネ財団 特別講演会2018 レビュー5]パネルディスカッション プロシューマーシステムの事業モデル(後編)

[コージェネ財団 特別講演会2018 レビュー5]パネルディスカッション プロシューマーシステムの事業モデル(後編)
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2018年9月19日(水)公開
取材・構成・文/小林佳代 写真/加藤康
 

特別講演会で開催された「プロシューマーシステムの事業モデル」と題したパネルディスカッションの後編。コメンテーター役の日建設計総合研究所の野原文男代表取締役所長とプレゼンテーター役の日立製作所の蜂谷浩二産業ユーティリティソリューション本部長、静岡ガスの中井俊裕執行役員エネルギー戦略部長、竹中工務店の下正純環境エンジニアリング本部長が、プロシューマーシステムを一層社会に浸透させるために必要なものについて意見を交わした。

エネルギーマネジメントシステムで脱炭素に挑戦

下正純(しも・まさずみ)竹中工務店 環境エンジニアリング本部長
下正純(しも・まさずみ)
竹中工務店 環境エンジニアリング本部長

山﨑隆史氏(以下敬称略):引き続き、需要サイド主導の分散型エネルギーシステムを「プロシューマー」ととらえ、事例を紹介していただきます。

下正純氏(以下敬称略):「『脱炭素モデルタウン』への取り組み」と題してお話しします。竹中工務店はサスティナブル社会に向けたまちづくりの一環として、脱炭素モデルタウンに取り組んでいます。多様なインフラを活用し、水素など新しいエネルギーを適切に取り込み、電気や熱を融通し、街区全体を最適化して脱炭素を目指します。東京都江東区新砂エリアにモデル街区を構築。東京本店と自社関連建物2棟を中心に脱炭素タウンの実証を行っています。

 天候などによって発電量にブレのある再生可能エネルギーをまちに適切に取り込むには、電力の供給状況に応じて需要を変化させ、需給を安定化させる「デマンドレスポンス(DR)」や、小規模な発電設備やシステムを1つの発電所のようにまとめて機能させる「バーチャルパワープラント」などの技術が必要です。リアルタイムで迅速な対応をするために、竹中工務店は独自開発したエネルギーマネジメントシステム「I.SEM(アイセム)」を活用しています。太陽光発電、電気自動車(EV)、蓄電池、空調設備などさまざまなエネルギーデバイスを相互につなげ、単独の建物だけでなく街区内の複数建物の統合制御を行っています。

 実証では電力会社からの節電要請をクラウド上のI・SEMが受信。各建物に設置した蓄電池や発電機などを自動で制御し、要求された合計節電量を過不足なく達成しました。この結果を受け、昨年4月に東京電力とDRプログラム複数棟一括制御契約を締結しました。今年の冬に大寒波で電力が逼迫した際には、朝と夕方にDR要請がありましたが、BCP(事業継続計画)用に設置したガスエンジン発電機が稼働して需給調整できました。

 I.SEMを「V2B(Vehicle to Building)」システムに適用することにも挑戦しています。プラグインハイブリッド車2台と蓄電池、太陽光発電と連携させ、系統電源から切り離した実証実験により、1日に1回クルマに給油することで72時間連続自律運転できました。EVに分散電源としてのインフラ機能があることを実証した形となります。

 水素については、再エネの余剰電力からつくり、水素貯蔵設備に貯め、燃料電池に送って発電し事務所で使うという流れの実証を進め、信頼性・安全性・付加価値の高いシステムの構築を目指しています。このシステムをまちのエネルギーセンターに拡大し、都心部の狭小な敷地に建つコンパクト水素ステーションとつながり、まちのエネルギーステーションへと発展させることも考えています。

野原文男氏(以下敬称略):大手ゼネコンが「脱炭素モデルタウン」を実証するのは大変に意義ある取り組みです。竹中工務店は「あべのハルカス」ではバイオガス発電システムを導入しています。脱炭素に向けた会社の方向性や方針があれば教えてください。

下:再エネは川上で大規模につくるものと、川下に小さくつくるものと2種類あります。太陽光ならば川上にはメガソーラー、川下には屋根の上に設置する太陽光パネルなどがあります。水素も川上には水素発電所、川下には燃料電池があります。当社はまちづくりを考えた時に、川下、つまりまちの末端でどう使いこなすかが重要だと考えています。不確定要素が多い再エネですが、新砂での実証などで「末端でこうやれば使い切れる」という事実を積み重ねることができれば、普及拡大につなげられ、脱炭素に近づけると考えています。

竹中工務店:水素とつながる まちのエネルギーステーション
竹中工務店:水素とつながる まちのエネルギーステーション
 

 
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