:D3 WEEK 2016 REPORT

デジタル・ロイヤリティ・マーケティングの効果は定性的な指標ではなく“売上拡大”で測れ!

マーケティング施策の効果を測定する際、多くの企業が顧客満足度などの定性的な指標を利用している。しかし本来、企業が達成したいのは売上や利益の拡大だ。そこを目指すものがデジタル・ロイヤリティ・マーケティング(DLM)である。

ブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパン株式会社 取締役 川津のり氏

ブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパン株式会社
取締役
川津のり氏

ロイヤルカスタマーを増やし、特典を提供して離反を防ぐ

 米国のある調査によれば、顧客維持率が5%向上すれば利益は2倍になり、また既存顧客は新規顧客よりも購入額が平均67%も高いという。企業の売上に大きく貢献しているのは、ロイヤリティの高い顧客だということだ。

 ロイヤリティプログラムやCRMに関するコンサルティングから企画/設計/開発、さらには運用までを提供するブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパンの川津のり氏は、7月29日に行われたキーノート3に登壇。セッションの冒頭で、「我々はロイヤリティ・マーケティングをお客様の売上拡大につなげることを最優先に考えています」と強調した。

 1985年に米国で設立された同社は、ロイヤリティプログラムのパイオニア企業で、テクノロジーベースのマーケティング・ソリューションも提供している。2015年4月に野村総合研究所のグループ企業となり、2016年4月に川津氏が取締役を務める日本法人が設立された。

 ロイヤリティ・マーケティングでは、業績貢献度の高いロイヤルカスタマーを増やすことから始める。そのためにはまず“どんな顧客がロイヤルカスタマーなのか”を定義する必要がある。

 「売上という一番明快な数字を指標に、どれだけ自社に貢献してくれるお客様をロイヤルカスタマーとするのかを決めることが、ロイヤリティ・マーケティングの起点となります」と川津氏。

 しかしロイヤルカスタマーの数をいくら増やしても、いずれ離反されてしまっては意味がない。そこで次のステップとして、ステータスに応じた特典を提供することで離反を防ぐことを考える。

 「ここでは、単に離反を防ぐというだけでなく、“この会社から離れたらむしろ損をする”と思ってもらえる状況を作り出すことが重要」と川津氏は強調する。

 業績貢献度の高いロイヤルカスタマーを増やし、ステータスに応じた特典を提供することで離反を防ぐ。ロイヤリティ・マーケティングは、この2つの姿勢を貫くことが何よりも重要となるのだ。

ポイント付与より評価される“待ち時間なし”の会員サービス

ロイヤリティ・マーケティングの考え方

 ロイヤリティ・マーケティングの具体的な施策となるロイヤリティプログラムでは、始めに購買ポテンシャルの高い顧客群を見つけ、次に収益拡大に貢献してくれる可能性が最も高い顧客セグメントを特定し、そのステータスに応じた魅力的な特典を付与する、という取り組みを実施する。

 「これにより、今まで“常連”だった既存のお客様を“支持者”、すなわちロイヤルカスタマーへと育成します。支持者になったお客様は商品やサービスを購入するだけでなく、他の人にも勧めてくれるようになります。これも売上拡大に大きく寄与するのです」と川津氏。

 ロイヤリティプログラムによって収集した自社独自のデータを蓄積し、アナリティクスの力を使って新たな商品やサービスの開発、さらには事業創出につなげていく。川津氏は、「お客さまのニーズが多様化し、複雑化している現在では、勘だけで商品やサービスを開発することはできません。ITの進歩によって、さまざまなデータを取得できる環境が整ってきており、それを活用する仕組みを構築すべきです。これがまさに私たちの提唱するデジタル・ロイヤリティ・マーケティング(DLM)です」と語る。

 DLMで先行する米国では、すでにさまざまな活用事例が出てきている。たとえばブライアリー・アンド・パートナーズの古くからの顧客企業で、米レンタカー業界でシェアトップを誇るHertzでは、入会費/年会費無料の「ハーツGoldプラス・リワーズ」という会員制度を設けてさまざまな会員サービスを提供している。実は、このロイヤリティプログラムの中で顧客から一番評価されているのが、空港で待ち時間なしに車を借りることができるサービスなのだという。

 通常、レンタカー会社の空港カウンターでは、手続きのために列に並ぶ必要がある。しかしHertzのカウンターには“ゴールド会員の方はそのまま地下駐車場へお進みください”というメッセージボードが置かれており、ゴールド会員が専用の駐車場に着くと、天井上部のパネルには“○○様は125番にお進みください”と表示されている。指定された場所には手配済みの車がすでに停めてあり、キーも社内に置かれている。ゴールド会員はそのまま車に乗り、出口で免許証を提示するだけですべての手続きが完了するのだ。

 同社では、サービス利用に応じたポイント付与も行っているが、ロイヤルカスタマーにとって一番うれしいのは、旅行先や出張先での貴重な時間を使わせないでほしい、他の人と一緒に並ばせないでほしい、ということなのだ。「この体験をした利用者は、もうHertzから離れられなくなります」と川津氏。

 もちろん価格重視のユーザーもいる。毎回、比較サイトなどで数社を比較し、利用するサービスをその都度変えていく人たちだ。しかしHertzにとって、そうしたユーザーはロイヤルカスタマーには相当しない。Hertzの会員制度は、売上貢献度が高いロイヤルカスタマーを最優先に考えて、離反させないことに集中したロイヤリティプログラムだといえる。

初めに投資対効果を推計することがロイヤリティプログラムでは重要

 多くの日本企業が会員特典として行っているポイントの付与は、顧客にとってもメリットが分かりやすく、ロイヤリティの通貨としても重要なものだ。しかし川津氏は「それは他社にもできること」と指摘する。

 「顧客が欲しているのは、ポイントそのものではなく、ポイントに応じて何をしてくれるのかということです。価格からポイント分の金額を値引くだけではロイヤリティはどんどん低下していきますし、上がることはまずありません。自分たちのお客さまは一体何をうれしいと感じるのか、何をしてもらうと離れないのかをきちんと考えることが非常に重要です」と川津氏。

 それでは、どうやってロイヤリティプログラムを作っていけばいいのか?

 ロイヤリティプログラムを継続的に実施するためには、仕組み化することが必要なのだという。そのプロセスについて川津氏は「まず初めにロイヤリティ戦略を作り、次にどんなプログラムを実施するのかを決めます。ここで大事なことは、投資対効果をきちんと推計することです。このプロセスを無視して進めてしまうと、大体途中で破綻します。どれだけ投資をして、それによりどれだけのリターンがありそうかを見積もっておく。そのうえで、必要となるシステムを構築し、プログラムを運用し、投資がきちんと回収できているかを検証する。その結果を踏まえて、戦略や施策を練り直していくのです。ロイヤリティプログラムでは、このサイクルを回していくことが重要です」と解説した。

 DLMの目的は、あくまで売上の拡大だ。考えるべきなのは、いかに投下コストを抑えて、売上を増やすか。セッションの最後には、「顧客満足度やブランド価値など、定性的な指標だけでごまかしてはいけません。売上拡大を念頭に置いて、絶えずシビアに、DLMへの投資効果の検証と改善を繰り返していただきたいと思います」と話を結んだ。

 DLMでは、顧客をよく理解したうえで、自社だからこそできるオリジナルプログラムと、適切なKPIを設定し継続的に効果を検証し、質を高め続けていくことが、今求められている。

このページのトップに戻る