藤田晋

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インターネットに新しい
「マスメディア」をつくります。

サイバーエージェント社長、AbemaTV社長

藤田晋

FUJITA Susumu

2016. 11 .15 公開

interview : KATASE Kyoko 
photo : KIM Yongduck

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AbemaTV(アベマティービー)は、2016年4月に本開局した、スマートフォンやパソコンを介して視聴できるインターネット動画サービスだ。24時間約30チャンネル、すべてのコンテンツを無料で視聴できる。面倒な会員登録は必要なし。アプリをダウンロードすれば、誰もがどこででも見ることが可能だ。主なビジネスモデルは「広告」。このAbemaTVを率いるのが、サイバーエージェントの創業社長でもある藤田晋氏だ。テレビ朝日とタッグを組み、テレビ局の番組企画・制作能力や報道力と、インターネットビジネスとの融合を図る。開局半年でスマホ用アプリがダウンロード数1000万を超えたAbemaTV。これまで地上波テレビが中心となり担っていた「真のマスメディア」をウェブ上で新たに実現できるかどうか。藤田社長に訊く。

結局、ひとは受け身のサービスを好むのです

———2016年春にスタートした無料の動画視聴サービス『AbemaTV』は、半年間でスマホ用のアプリが1000万ダウンロードを超えたと伺いました。

ありがとうございます。想定以上のスピードでユーザーが増えているのは素直にうれしいですね。とはいっても、ビジネスとしてはスタートラインに立ったばかりです。日本の大半の人は、地上波テレビをかつて視聴していたようには、まだ『AbemaTV』を使っていません。ここからが本番ですね。

そもそもサイバーエージェントでは、過去にも何度か動画サービスに挑戦してきました。今回が初めてではないんです。それだけにこのビジネスの難しさは痛感しています。高いコンテンツ力が求められますし、視聴習慣を根付かせるのは容易ではない。

『AbemaTV』を始める直接のきっかけは、テレビ朝日の早河洋会長とのご縁です。
2013年からテレビ朝日の番組審議委員を務めていて、早河会長とは親しくお話しする間柄だったのですが、2014年秋、私のほうから、「一緒にやりましょう」とお声がけしました。私にとっても幸運だったのは、テレビ朝日と早河会長が「ぜひ」と即決くださったことです。2015年4月には、テレビ朝日とサイバーエージェントで合弁会社をつくることを発表しました。

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当初は、いま展開している地上波テレビのような無料でたくさんのコンテンツを配信するサービスではなく、オンデマンドの動画サービスに取り組もうと思っていたんです。
が、その後、考えを改めました。
というのも、動画をネット上で探し出して鑑賞するというプル型の視聴は、自分の思い通りのようでいてけっこう面倒なんですね。人間はそんなにいつも前のめりでコンテンツにアクセスしているわけじゃないんです。

スイッチを入れてチャンネルをザッピングすると番組をだらだら見ることができる従来の地上波テレビは、受け身のマスメディアとして優れていました。 ならばインターネット上で、地上波テレビ並みに受け身で簡単に動画コンテンツを視聴できるサービスを展開しよう。そう考えてスタートしたのが、無料で視聴可能な『AbemaTV』です。

インターネットで世界を席巻したサービスは誰もがまずは「無料」で使えるものばかり。だから数千万人、数億人のユーザーを獲得できた。メディアも同様です。日本において数千万人にアクセスできたメディアは地上波テレビだけです。無料で見られるからです。

———ビジネスモデルとしては課金ではなく広告モデルを中心に据えました。

地上波テレビのような無料でアクセスできるメディアを目指すとなると、ビジネスモデルは当然「広告」になります。それもテレビ同様の「マス広告」を獲得する必要がある。

インターネットの世界では、しばしば特定の顧客を囲い込んでビジネスを展開するケースがありますが、そのやりかたでは本当に大きな市場を創ることはできません。とりわけ広く伝える「広告ビジネス」のモデルとは相性が悪い。

「広告」は、積極的に見るものではなく、視聴者にとってみれば、番組コンテンツ以上に「たまたま」受け身で出合うものだからです。その「たまたま」目にする人の数を増やさなければ広告効果は得られません。多くの視聴者が受け身で見てくれる場が用意できなければ、ウェブ上に真のマス広告、しかも動画の広告でのビジネスは成立しないでしょう。この点に関しては、サイバーエージェントは広告会社ですので、深く理解していることでもあります。

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———インターネットの世界では、ユーザーが自ら検索して情報やコンテンツにアクセスする「プル型消費」がメインで、従来の地上波テレビのような受け身の「プッシュ型消費」は時代遅れ、といわれた時代がありました。

インターネットがまだマスになり得ていなかったときは、そういう議論も成り立ったかもしれませんが、スマートフォンが完全に普及して誰もが瞬時にアクセスできるプラットフォームがインターネットになったいま、状況は変わってきています。

オンデマンド視聴のようなプル型のコンテンツ消費は、ユーザーにとってかなり面倒ではないか? それを実感したのは、『AbemaTV』を始める1年前、2015年5月からエイベックス・デジタルと共同出資で『AWA』という音楽の聴き放題サービスを展開した経験からです。

それまでインターネット経由の音楽配信サービスといえば、代表的なものとしてiTunes Storeがありました。好きなときに好きな音楽を自分で選んで購入し、聴くことができる。まさにプル型のコンテンツ消費ですね。

その一方で『AWA』は定額制で約3000万曲の音楽を自由に聴くことができるだけでなく、ユーザーの聴取傾向を分析し、好みのプレイリストをリコメンドするサービスです。自身も使ってみて、受け身の状態でさまざまな音楽を楽に聴くことができるのは、とても心地よく感じました。さらに、それまで自分で選んでいるときは聴く音楽が偏っていたけれど、受け身で聴くことで新たな音楽との出会いがたくさん生まれました。

受け身のほうが楽だし、それに慣れてしまうと決してプル型には戻らない。ならば、音楽以上に映像はもっと受け身が好まれるのではないか。そこで、『AbemaTV』をオンデマンド型ではなく、ニュース、スポーツ、アニメなど約30のチャンネルを24時間配信する、無料の受け身型サービスとしてスタートすることにしました。

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Column DRIVE de Cartier

What drives You?

変革へのパッションこそ、すべての源だ

DRIVE DE CARTIER

ドライブ ドゥ カルティエ ウォッチ SS 41mm ¥640,000(税抜)

What drives You?

変革へのパッションこそ、すべての源だ

挑戦なくして、成功はない。カルティエの3代目ルイ・カルティエは、良き挑戦者であり、常に業界をリードするパイオニアであった。その最大の功績の一つが、紳士用腕時計を世界で初めて製作したことだろう。1904年、彼はブラジルの飛行家にして、ベルエポック期のパリで注目を一身に集めただて男、アルベルト・サントス=デュモンのためにエレガントな腕時計を製作。これこそが紳士用腕時計の始まりであり、その後のメンズウォッチの方向を決定づけた。名作「サントス」の誕生である。

カルティエは、その後も「タンク」「バロン ブルー」「カリブル ドゥ カルティエ」など、数々のメンズウォッチを生み出し、いまも時計業界のパイオニアであり続けている。そして、それらの傑作時計すべてに当てはまるのが、官能的なデザインと機械的精緻さの両立である。美しいフォルムを持つカルティエの時計は、ひと目見ただけでそれとすぐに分かる。これは、ウォッチメーカーとしての高い技術力なしには成し得ないものだ。

今年、メンズコレクションに新たに加わった「ドライブ ドゥ カルティエ」にも、その伝統は受け継がれている。ローマン数字のインデックスやフランケ模様のギヨシェダイヤル、ソード型の針など、随所に際立つ“カルティエらしさ”。優雅なクッションケースのボリューム感が目を引くが、実際は薄く作られており、腕にすると驚くほどよくなじむ。スケルトンバックからは、自社製ムーブメントCal.1904の美しい仕上げを堪能できる。

腕時計としては揺るぎない正統派。それでいて、7のインデックスに小さくCartierの隠し文字を入れるカルティエの伝統的な遊び心も、現代の粋人を引きつけている。

Text by SHINODA Tetsuo

主催:日経ビジネスオンライン
 特別協賛:リシュモン ジャパン カルティエ