藤田晋

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インターネットに新しい
「マスメディア」をつくります。

サイバーエージェント社長、AbemaTV社長

藤田晋

FUJITA Susumu

2016. 11 .15 公開

interview : SAKIYA Miho 
photo : KIM Yongduck

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———なぜ、このタイミングでのスタートだったのでしょうか?

2000年を過ぎた頃から、私自身が地上波テレビ番組をほとんど見なくなっていたんですね。

福井県に生まれ育った子供時代の1970年代から80年代にかけて、民放は2つのチャンネルしかない環境で、それは一生懸命にテレビ番組を見ていました。
その後上京して90年代後半にインターネットビジネスを自ら立ち上げた頃から、テレビ番組からだんだん離れていきました。さらにインターネットがどんどん普及していくと、自分の時間の中でテレビの存在感は薄れる一方だったのです。

一方、2000年以降、地上波テレビに代わるべく、インターネットでの動画配信に取り組んだ会社はいくつもありました。
サイバーエージェントも冒頭に述べたようにかつて2度動画事業にチャレンジしました。でも、私たちもふくめインターネット企業や通信会社が展開した動画サービスの多くは、当時、軌道に乗りませんでした。
インターネットは、リッチな動画を大量に流通させるキャパシティをまだ持っていませんでしたし、スマートフォンが普及する前でしたから、人々がインターネットを見るのはもっぱらデスクトップのパソコンからでした。つまり据え置きのテレビと大して変わらない視聴状況でした。しかも、プアなコンテンツしか揃えられなかったことで、テレビを代替するまでには至らなかったのです。

スマートフォンの普及で環境が大きく変化します。iPhoneが2007年にアメリカで、2008年に日本で発売され、タブレット端末も登場しました。そして、さまざまな動画サービスが登場しました。SNS上のフィードで動画も見られるようになり、インターネットにおける動画視聴環境は大きく進化しました。

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———動画配信サービスそのものは、すでにYouTubeやニコニコ動画がありますし、オンデマンド型の有料サービスでは、「Netflix」や「Hulu」があります。一見、やや後発にも見えたのですが。

サービスの形態としては、『AbemaTV』とはいずれも違う業態です。これらは自分からコンテンツを探しに行くサービスですが、『AbemaTV』は、受け身型の視聴体験を提供するもの。
企業が手がける新事業の中には、「技術が整ったから」「メディアで盛り上がっているから」「株式市場が求めているから」といった理由でスタートするものが少なくありません。が、たいがいの場合うまくいかない。消費者の視点、市場の観点が抜けているからです。
今回のようなサービスの場合、一番大切なのは「ユーザーがいるかどうか」です。そして『AbemaTV』のビジネスモデルを考えると、視聴者となるユーザー側の機が熟したタイミングがまさにこの2016年と判断したのです。

最近、アマゾンがインターネット上の動画コンテンツをテレビで簡単に視聴できる『Fire TV Stick』という機器を発売しました。これを使うと、自宅の大型テレビでも『AbemaTV』を見ることができます。スマートフォンすら必要ありません。私自身使ってみてびっくりしたのが、大画面でも『AbemaTV』のコンテンツは、地上波テレビに遜色ない画質で見ることができる。
つまり、インターネット系の動画はスマホやタブレットやパソコンで、地上波は大型テレビで、というハードによる視聴の区分けはもはやなくなりつつあるんですね。戸外や外出先ではスマホで、ゆっくりリビングで見たいときにはテレビで『AbemaTV』を視聴することが可能になるわけです。

現在、アプリのダウンロード数は1000万を超え、アクティブな週間視聴者は300万人ほどですが、『Fire TV Stick』などが普及すれば、10代から20代にかけての若年層以外のマーケットも開拓が容易になります。まずは週間アクティブ視聴者数1000万人を目指したいと思っています。

2016年秋現在、『AbemaTV』は8割がスマホで見られています。残り2割はタブレットやパソコンです。イメージとしては、暇なときにスマホを手にして、最初にアクセスするのは『Twitter』や『Facebook』、『LINE』、そして『AbemaTV』となればと考えています。手持ちぶさたなときに、ついアプリを開いてしまう。『AbemaTV』を見るという視聴習慣をユーザーに根付かせることを今は重視しています。

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改めてテレビ局の制作能力に敬意を

———『AbemaTV』の事業がこれまでのインターネット発の動画サービスと大きく一線を画するのは、地上波テレビのテレビ朝日とがっちりタッグを組んだことにあります。

『AbemaTV』の運営会社には、サイバーエージェントが60%、テレビ朝日が40%出資しています。番組制作に関しては、テレビ朝日の力を最大限生かしていただいています。
一緒に事業を立ち上げてわかったのは、テレビ局の持つ番組企画・制作能力や、報道力は、一朝一夕で真似ることなどとてもできない、とてつもないレベルである、ということ。ニュースも、バラエティも、ドキュメンタリーも、ドラマも、アニメーションも。サイバーエージェントだけで制作したり、外注だけでこれだけのクオリティのものを生み出すことはとてもできない。

『AbemaTV』では、主にニュースとバラエティでオリジナル番組を制作していますが、テレビ朝日の番組制作力がなければ、このビジネスをいまのレベルでローンチすることは不可能でした。

サービスをスタートしてから、インターネットの動画サービスと地上波テレビの「いいとこどり」が可能であることが、わかってきました。

たとえば、『AbemaTV』の本放送が始まったばかりの2016年4月14日21時、熊本地震が発生しました。このとき、『AbemaTV』では予定していた生放送の内容をすぐに切り替え、地上波と連携を取りながらテレビ朝日の報道チームによる地震報道を行いました。インターネットの速報性と、テレビ局の報道力がマッチすることで、迅速な報道を果たすことができました。テレビとインターネットは敵対するどころか、共存共栄できるひとつの事例だったと思います。
とりわけニュースの場合、地上波テレビの力を借りなければ信頼性あるクオリティの高い番組をつくることは難しい。私も『AbemaTV』では、ニュースチャンネルをつけっぱなしにしていることが多い。とてもニーズのあるジャンルです。

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『AbemaTV』の成否を握るのはコンテンツの質です。
麻雀の実況番組ひとつをとっても、地上波テレビのクオリティで制作しています。インターネットだからといって質の低い番組をつくれば『AbemaTV』の格を落とすことになります。インターネットの動画サービスだからこそ、質には徹底的にこだわり、視聴者からの信頼を獲得し、ファンを増やしていく必要があるのです。将来的には『AbemaTV』から新たなスターを生み出せるようなマスメディアにならねば、成功とはいえません。そのためにもしっかりしたコンテンツをつくり、多くの人に見てもらって収益を上げてそこから制作にお金を回せるようにと考えています。

現在、ネットユーザーの中には、それほど品質の高い動画を求めていない人たちも多くいます。しかし、その目線に甘えてはいけません。それから、コンテンツの独立性と、インターネットサービスならではのユーザーとのインタラクティブ性、この両立についても工夫をしています。各番組にコメント欄は設けましたが、放送画面と分離させているのもそのためです。

一方、インターネットならではのコメント欄は、インターネットの動画サービスとして重要です。あるコンテンツに対して、視聴している “みんな”が何を思っているのか、どんな場面に突っ込んでいるか、番組と並行して見られるというのは、とても重要です。たとえば、選挙報道番組を見るときなどは、こうしたコメント欄は番組のコンテンツの一部といっても過言ではありません。

ただし、こうした視聴者の声を、番組コンテンツそのものに直接反映する必要は、『AbemaTV』に関しては必ずしもありません。スポーツの試合を例にとれば、試合中継を見ている人たちはリアルタイムでプレイに対していろいろなことを言うでしょうが、実際に試合に出ている選手たちがそんな視聴者の声にいちいち応えてプレイすることはないですよね。
視聴者の声はあくまで、番組コンテンツとは別の画面で見られるだけで十分です。

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Column DRIVE de Cartier

What drives You?

変革へのパッションこそ、すべての源だ

DRIVE DE CARTIER

ドライブ ドゥ カルティエ ウォッチ SS 41mm ¥640,000(税抜)

What drives You?

変革へのパッションこそ、すべての源だ

挑戦なくして、成功はない。カルティエの3代目ルイ・カルティエは、良き挑戦者であり、常に業界をリードするパイオニアであった。その最大の功績の一つが、紳士用腕時計を世界で初めて製作したことだろう。1904年、彼はブラジルの飛行家にして、ベルエポック期のパリで注目を一身に集めただて男、アルベルト・サントス=デュモンのためにエレガントな腕時計を製作。これこそが紳士用腕時計の始まりであり、その後のメンズウォッチの方向を決定づけた。名作「サントス」の誕生である。

カルティエは、その後も「タンク」「バロン ブルー」「カリブル ドゥ カルティエ」など、数々のメンズウォッチを生み出し、いまも時計業界のパイオニアであり続けている。そして、それらの傑作時計すべてに当てはまるのが、官能的なデザインと機械的精緻さの両立である。美しいフォルムを持つカルティエの時計は、ひと目見ただけでそれとすぐに分かる。これは、ウォッチメーカーとしての高い技術力なしには成し得ないものだ。

今年、メンズコレクションに新たに加わった「ドライブ ドゥ カルティエ」にも、その伝統は受け継がれている。ローマン数字のインデックスやフランケ模様のギヨシェダイヤル、ソード型の針など、随所に際立つ“カルティエらしさ”。優雅なクッションケースのボリューム感が目を引くが、実際は薄く作られており、腕にすると驚くほどよくなじむ。スケルトンバックからは、自社製ムーブメントCal.1904の美しい仕上げを堪能できる。

腕時計としては揺るぎない正統派。それでいて、7のインデックスに小さくCartierの隠し文字を入れるカルティエの伝統的な遊び心も、現代の粋人を引きつけている。

Text by SHINODA Tetsuo

主催:日経ビジネスオンライン
 特別協賛:リシュモン ジャパン カルティエ