博士課程教育リーディングプログラム

リーダーシップを発揮し、グローバルな社会を牽引する「博士人材」を育成し、企業の最前線での活躍を期待

多彩な能力で産官学を牽引する

 博士課程修了者というと、これまでは特定の専門分野の研究を極めた人材というイメージが強かったが、現代の学問分野は、複数の領域・国にまたがる専門家が協力し合って研究に当たる例が多く、博士人材の在り方は、次第に変わりつつある。このような現状から、特定の専門分野に閉じない幅広い知識や国際性、さらに、リーダーシップと高度なコミュニケーション力を身に付けさせ、産官学を牽引する人材として活躍することができるようにと、文部科学省は、2011年に「博士課程教育リーディングプログラム」を始めた。

 別表からも分かるように、欧米社会では企業の主要ポストは大学院修了者によって占められ、博士課程修了者も多い。そこで、日本でも優秀な博士課程修了者を、大学だけでなく、企業や行政・国際機関・NPOなど広く産官学を牽引するリーダーとして送り出そうというのが、主な狙いである。
 全国の大学から採択されたプログラムでは、文系と理系を統合したプログラム、複数の専門分野を横断的に学修するプログラムなど、俯瞰的な視点を持つ人材を育成できるようなものとなっている。また、研究室の中だけにとどまらず、産業界からの講師を招いての、ビジネスの実際を考慮した指導や企業への長期インターンシップなどが行われており、企業現場での考え方や実践力を身に付ける。さらに、フィールドワーク、ディスカッション、プレゼンテーションなどを盛り込み、チームで課題を解決する力やコミュニケーション能力を養う。留学や海外インターンシップの経験も経て、学生たちは広くグローバルなネットワークを築くすべを学ぶのである。

表:米国の上場企業の管理職等の最終学歴

「学生会議」で異分野のネットワークを結ぶ

 現在プログラムに採択されているのは、33大学62件。理系・文系を問わず多彩な分野の下でプログラムが進められている。特定の専門領域に捉われず、複数の分野にわたって調査・研究が行われるプログラムも多い。
 年に1回、学生の自主的な運営のもと、全国からプログラム所属学生が集まる「学生会議」を実施。異なる専門を持つ学生から刺激を受けつつ、将来につながる人的ネットワークを構築する。これまで兵庫、熊本、北海道で開催。今年は千葉で開かれ、年々活気を増している。学生会議では、講演者・メンターとして企業関係者から協力を得ており、今後のプログラム学生の活躍への期待の声が多く寄せられた。博士人材に変化が起こりつつあることが、次第に企業の間でも浸透してきたようだ。
 2017年3月、多くのプログラム修了生が社会に出ることになる。新しい博士人材の活躍に期待しよう。

企業の眼「博士課程教育リーディングプログラム」に携わっている企業の担当者や人材採用担当者に、博士課程人材に寄せる期待を語っていただいた。

グローバルに戦うことができるタフで柔軟、多様性を備えた人材に人事採用担当者

株式会社日立製作所 人財統括本部 人事勤労本部長 兼 ダイバーシティ推進センタ長 迫田 雷蔵さん

 日立グループの海外売上比率は、2015年度には48%でした。2018年度までにこれを55%以上にするために、私たちは現在、グローバルに戦うことのできる人材を求めています。「博士課程教育リーディングプログラム」では、比較的早期から英語での研究発表が行われているのを見て、強く印象に残りました。
 新規採用のうち博士課程修了者の占める割合は約1割となっており、専門の分野に強いだけでなく、多様性を持ち、柔軟な考え方を受け入れ、タフなリーダーとして活躍してほしいと考えています。人を引きつける、夢やビジョンを語る力も重要です。研究のうえで想定した課題と、実際にビジネスの現場で直面する問題とは異なることが多々あります。プログラムの中にはインターンシップもあることから、就職前にできるだけ、ビジネスのリアルな現場を体験しておくとよいですね。

厳しい競争の中で未踏の領域を切り開く力が鍛えられる研究部門担当者

パナソニック株式会社 先端研究本部 水素・エネルギープロジェクト室 水素燃料電池研究課課長 菅原 靖さん

 「博士課程教育リーディングプログラム」は、企業の人材育成に活用できる制度であり、私どもの部署から、山梨大学の「グリーンエネルギー変換工学」プログラムに社員を継続的に2人派遣しており、1人は博士号を取得しました。世界でもトップクラスの施設を有する山梨大学では、最先端の技術を学ぶことが可能となっています。本プログラムでは非常に高い競争力が求められ、自分の専門分野を極めるだけでなく、これまでチャレンジしたことのない、未踏の領域を切り開く力が養われると期待しています。また、ここでは多くの外国人留学生との交流に加え、約半年間海外に留学する機会もあります。通常の博士課程のプログラムに所属するとき以上に、グローバルなコミュニケーション能力が鍛えられ、まさに世界で戦うことのできる人材が育つものと考えています。

リーダーとして、結果を出すことの重要性が理解できる人材となってほしいメンター

株式会社日本医療機器開発機構 取締役CBO 石倉 大樹さん

 私自身、学生時代に起業した経験を生かし、今年の学生会議にはメンターとして参加しました。現代のビジネスでは、一つの深い専門性を持っているだけでは通用せず、多様なネットワークを持っていることが必須となります。例えば私の扱う医療機器の分野では、他分野の方へのヒアリング能力が重要です。学生会議でバックグラウンドの異なる学生たちが出会うことは、今後、多様性のある社会で活躍するにあたり大いに役立つものと感じました。
 また、大学で研究を続けてきた博士課程の人材は、若いうちから一定のテーマに継続的に取り組むことができるという資質を持っています。チームの意見を辛抱強くまとめるコミュニケーション力とリーダーシップが備わることで、ビジネスとして有意義な結果を出すことの重要性が理解できる人材が育つのではないかと期待しています。