:【Report】Digital Marketing Conference BigData Conference 2016 Spring

Global Tech Trends2016に見るこれからのAnalyticsの形

押し寄せるデジタル化の波のなか、グローバルで勝ち残るために日本企業は何をすればよいのか?<br>ビッグデータ・アナリティクス、IoT(Internet of Things)の活用にそのヒントがあるようだ。

デロイト トーマツ コンサルティング Japan Technology Leader パートナー 安井 望氏

デロイト トーマツ コンサルティング
Japan Technology Leader
パートナー
安井 望氏

Think big, start small, scale fast

 セッションの冒頭、スピーカーを務めたデロイト トーマツ コンサルティングの安井望氏は「グローバル経済におけるデジタル化は、今後、特にアジアを中心に進んでいくといわれています」と述べた。そしてそんな状況下で、日本企業は、

1.「ビッグデータ量の増大」
2.「すべてのチャネルのデジタル化」
3.「顧客中心の時代」

というポイントを押さえて、デジタル化やデータ活用を実現し、イノベーションを創出していく必要があると説く。

 3つのポイントのうち「ビッグデータ量の増大」について安井氏はこう説明する。

 「その数は調査機関によってバラバラで、500億だったり、700億だったりしますが、ともかく2020年には数100億というデバイスと(インターネットが)つながっていくだろうといわれています。こういったなかで、データの量も飛躍的に伸びていきます。かつてビッグデータという言葉がバズワード化しましたが、そのとき語られていた数字と比べて比較にならないような量になるのです」

 また、2030年までに人口の60%が都市に居住するということが予想されている。都市型のライフスタイルを重視した消費動向にシフトしていくことも、データ量の拡大を後押ししていくと考えられているという。つまりIoTの進展によりビッグデータはより大きくなっていくわけだが、データのなかには役に立つものとそうでないものが混在する。そこで「(企業は)溢れ返っているデータをいかに処理すればいいのかを考えなければいけない」(安井氏)のである。

 2つ目のポイントの「すべてのチャネルのデジタル化」については、自動車の購入プロセスを例に説明。

 2000年の調査では、消費者がクルマを買うときにディーラーに行く回数は、平均で7回であったが、最新の調査では1.5回。現在、多くの消費者は情報収集はWeb上で行い、ディーラーには最後の交渉や契約のためにしか訪れなくなった結果だ。

 それ故「メーカー側からすると、いかに商品の魅力をWebで伝えるかということが重要になっている」と安井氏は強調した。

 そして、3つ目のポイントである「顧客中心の時代」。これは「消費者はいろいろな情報が入ってくるようになってわがままになっている」ことが前提となっている。特にデジタルに慣れた「Generation Y」と呼ばれる現在25〜40歳の世代は「期待に応えなければあっさり切り捨てる」「便利でないことは許容できない」傾向が強いのだが、そのためにサービスやコミュニケーションを顧客視点で展開し、エンゲージメントを向上していくことが現在の企業には重要な経営課題になっているのだ。

 さらに「顧客視点の変革」を実現するためには「Think big, start small, scale fast(大きく考え、小さく始め、成長は速く)」の発想でデジタル化に取り組んでいくことが必要不可欠だと安井氏。そうしなければ、グローバルでは勝てないと断言する。日本企業はどうしても「Think small, start small, scale slow」になりがちだというが、まずは発想の転換が求められているようだ。

アナリティクスを経営に役立てるために必要な4つの鍵

 現在は「特にグローバルで、いままでデジタルマーケティングにフォーカスされてきたデジタル化の波が、企業の基幹システムというところにシフトする動きが強まってきています」と安井氏。

 その先進的な例として紹介されたのが、デロイトのアムステルダムオフィスが入るスマートビル「Deloitte Edge」だ。スマートフォンでコーヒーの注文ができたり、すべての照明がセンサーで制御されていたりと、さまざまな機能を自動化しているという。

 セッションの後半では、企業の内部プロセスやワークスタイルを大きく変革すると予想されるこのような技術を支えるビッグデータ・アナリティクスの話に及んだ。

 デロイトでは、今後のビジネスを変革する要因となりえるテクノロジーの動きをまとめた「Global Tech Trends」を毎年発行しているが、安井氏は「Global Tech Trends」の2016年版の中からアナリティクスに関する内容を紹介。

 「将来的には企業全体をデジタル化していくというところに軸足を移していき、そうなってくるとまた違ったアナリティクスの形になっていくだろう」と予見されているということだ。また、アナリティクス成功の鍵として、

1.ビジネス価値を生むアプリケーションへ品質の高いデータを集約/提供するデータストア
2.エンドユーザーのビジネス分析や意思決定の役に立つデータを提供する仕組み
3.ビジネスユーザーのアクセスを容易にする適切に関連付けられた論理的または物理的なデータ表現
4.全社でさまざまな事業用途に使われるデータに対し統制を利かせるためのツール群

の4点が挙げられていることにも触れ、日本企業では特に1のデータストアの部分ができていないことを指摘した。この現状に対して安井氏は「日本企業にはバランスを各企業が考えたうえで、(4つのポイントのうち)どこからやる必要があるかということを考えていただきたい」と語った。

エコシステムの活用を視野に入れて組織を構築

 日本企業の多くがアナリティクスに取り組む際に直面する壁が「組織」の問題だという。現在、データ・アナリティクスというと、各事業部門が必要に応じて、バラバラに取り組んでいることが多いが、これからの時代の要求に応えるアナリティクスを実行していくには、経営層のコミットを得た専門組織の存在が必要不可欠だ。

 この専門組織はデータを扱うが、システムの保守が主な業務である従来型のIT部門とは一線を画すものだ。

 「守りのIT活用ではなく、データをいかに効率的に活用していくかや、どんな技術を入れればユーザーがもっと使ってくれるのかということを考える組織が求められます」(安井氏)。

 組織には、アナリティクスのほか、「顧客とのデジタル上のコミュニケーションの企画や運用支援」や、組織内を横断した情報が見られる唯一の部門であるため「イノベーションの創出」という役割を果たすことが期待されるため、相応の人材が必要になる。しかし、最初からすべての要求に応えられる完璧な組織を構築するのは難しいだろう。

 そこで安井氏が提唱するのが、エコシステムを活用しながら組織を立ち上げること。

 専門組織の業務には、ブランディング戦略やビジネスモデルの設計など「ビジネスの根幹に関わる部分」をはじめ、「デジタル上のコミュニケーションの最適化」や「実際のデータ分析」などがある。そのうち、デジタルの根幹に関わる部分は社内で行い、その他の部分は外部の専門家や企業に任せるのである。そうやって“small start”し、ある程度の見通しが立ったところで、自社ですべてを行うかどうか、判断すればよいというわけだ。

 デジタル化にあたり、日本企業の態度変容を迫るかのような刺激的かつ有益な内容が語られた本セッション。安井氏の言葉一つひとつに納得するような表情を浮かべ、話に聞き入る数多くの来場者の姿が印象的な時間であった。

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