データで施策を評価―― 科学的アプローチで成功に導く「健康経営」

Think2

できるだけ多種多様なイベントやプログラムによって
健康増進に取り組むきっかけを作る

以上の様に一定の成果が出ている同社の健康経営実現への取り組みだが、このような結果が出ているのは、冒頭で触れたようにPDCAサイクルを回すという科学的なプロセスを踏んでいるからに他ならない。

ここで重要になるのが、具体的な施策としてのイベントやプログラムをいかに数多く実施し、検証していくかということ。

浅野氏は「やりたいことや取り組むタイミング、向いていることは人それぞれです。そのため選択肢は数多くあったほうがいいという考えの下、イベントは不定期でたくさんやっています」と説明した上で、

数多くの施策を実施する理由

その中でそれぞれがやりたいと思うものに参加してもらえればよいのです。いわば我々が行っているのは健康増進に取り組むためのきっかけづくりなのです

続ける。そして、たくさんのイベントを行った結果、効果のよいものは継続し、それ以外のものは改善していくというサイクルを回していく訳だ。

例えば、参加者に歩数計を携帯してもらい、イベント期間中の歩数や血圧などを計測する「歩数イベント」や「自転車通勤イベント」は、回を重ねるごとに参加人数が増えていることに加え、検証の結果、大きな効果が認められるということで継続的に実施されている。

「自転車通勤」は、千葉県佐倉市の拠点他で行っている取り組み。
こちらもその効果を「見える化」するため、
自転車通勤を2ヶ月行った社員に「時間管理」「身体活動」「集中力・対人関係」「仕事の成果」について
評価するセルフチェックを実施。自転車通勤をはじめると、各項目のスコアが大幅にアップすることが明らかになった

さらに、それ以外にも新たなイベントやキャンペーンが次々と実施されている。

その1例が、内臓疾患にも影響を及ぼす歯周病予防を目的に、今年実施された「お昼の歯磨きキャンペーン」だ。具体的には、製薬会社や健康保険組合の協力により、希望者に歯磨き粉と歯ブラシを配布し、期間を定めて昼休みに歯磨きを行うことを促したという。また、別の機会には風邪やインフルエンザ予防に、薬用せっけんを配布して、手洗いの習慣化を狙ったイベントを行ったが、いずれも反響は大きく、数多くの社員が参加したという。

さらに今年は、前回の取材時には本社の6階だけにあった「FHAB(ファブ、FUJIKURA HEALTH ACTIVITY BASE)」が、2階にも開設された。

2階に新設された「FHAB」では、健康に関する書籍は
もちろん経営・技術に関する書籍・雑誌が設置され、社員の貴重な情報収集の場になっている。

「FHAB」は、フロアや部門を越えた社員同士のコミュニケーションの場、かつリフレッシュの場として設置されているスペース。6階の「FHAB」には雲梯などがあるが、2階には、壁のマークに手を当てるだけでストレッチができる「ストレッチポイント」や、鏡を見ながらウォーキングすることで身体のゆがみが確認できるコーナーが設けられている。また、開放的な雰囲気の6階に比べると、ニュースが流れるモニターや数多くの雑誌が置かれた2階の「FHAB」は図書館のような落ち着いた雰囲気だ。

「6階は『コラボレーションの場』で、2階は『情報が得られる場』がコンセプトになっています。今後『FHAB』は各フロアに作っていく考えですが、コンセプトや趣きは全て異なるものにするつもりです。そうすることで、利用者はいつも同じところに行くのではなく、状況やシーンに合わせて使い分けるでしょう。その結果、限られた人だけでなく、様々な人と出会う機会が生まれることを狙っているのです」と浅野氏。社内のコミュニケーションが活性化すれば、業務に役立つアイデアが生まれるだけでなく、メンタルヘルスの向上にも好影響を与えるのは想像に難くない。そのため「FHAB」に対する期待も自ずと高まるが、既に社内の評判は上々で、利用者の数も着実に増えているという。

さて、健康診断の結果などにしっかり効果が現れ、社員の意識も変わりつつある――健康経営推進室としては、さぞ大きな手応えを感じているだろうと思いきや「ゴールはまだまだ遠いです」と中山氏と浅野氏は声を揃える。

そして、中山氏は

健康経営推進室が目指すゴール

最終的には、健康経営推進室が なくならないといけません。 つまり、我々の部署がなくても、 健康推進の取り組みが自律的に 動くようになるのが、 我々が目指すゴールなのです

と話す。これからはメンタルヘルス向上などに力を注いでいくという同社の先進的な取り組みが、健康経営を実現しようとする数多くの日本企業にとってのモデルケースになっていくのではないだろうか?

健康経営に取り組むことが
ステータスとなるような風土にしたい

「健康管理」(Health Management)から「健康経営」(Healthy Company)へ本フォーラムの目的は、これまで企業の人事・健保セクションで進められてきた従業員等の健康管理の在り方を経営という視点で捉え直し、健康経営の実践を通じて企業の新たな価値創造を促すという「攻めの経営」(「健康管理」(Health Management)から「健康経営」(Healthy Company)へ」に係る潮流を生み出していくことにあります。

そのため、本フォーラムでは本活動にご賛同頂く企業・団体様と協力し、下記に示す4つの活動フィールドにフォーカスを当て、企業価値向上に向けた各種取り組み情報を集約・共有化し、次代に求められる健康経営のプロトタイプを構築していきたいと考えます。

具体的には、企業にとっての「社会的価値」(Social Value)、「事業的価値」(Market Value)という2つの価値領域に、「Management」(管理)と「Action」(行動)という2つの実践的要素を組み合わせ、4つのフィールドにおける健康経営の価値と意義を可視化し、健康経営の重要性をより多くの経営者層に訴求していきます。