経営者なら必ず抱く疑問 第3回 「ITは難物、諸刃の剣だ」

社長の疑問その壱

なぜITは面倒なのか

某月某日、日本料理屋の個室にて

 社長:忙しいのに時間をつくってもらってすまんな。情報システムの件、いまどきはインフォメーションテクノロジー、ITというのかな、それで困っている。悩んでいたら君がITの担当役員をしていたことを思い出した。相談に乗って貰おうと声をかけた。

 友人:大学時代の昔話を肴に一杯飲むのかと思っていたよ。確かにシステムを見ているけれども、うちは流通業だし、そっちは製造業だから役に立つ話ができるかな。

 社長:聞きたいのは細かいことではなく一般論だから。この間、うちのシステム責任者がシステムの刷新計画を出してきた。仕事のやり方はさほど変わっていないのに、システムを新しくしたいという。しかも相当な金をかけて。色々聞くと「ソフトのバージョンアップ」が一番大きな理由のようだったが、何のことか分からない。

 友人:それは納得できないだろうね。食事中の話題ではないけれど、情報システムの構造について、おさらいをしてみるか。まずコンピューターそのものがある。その中で会計や生産管理といった業務処理を担うアプリケーション・ソフトが動いている。要するにアプリだな。アプリとは別に、ミドルウエアとかOSとか呼ばれるソフトが別にある。これらはアプリを支える土台みたいなものだ。例えばデータをまとめて管理するミドルウエアがあって、顧客情報や商品情報を貯め込んでいる。

 ミドルウエアやOSはソフトのメーカーが開発した既製品を使うことがほとんどだ。アプリにも既製品はあるけれども、手作りすることが多いね。

 バージョンアップの問題だけれども、既製品ソフトのメーカーが新バージョンを出すところから始まる。彼らは機能の追加や不具合の修正のために、新バージョンを定期的に出す。君の会社も新しいバージョンを使うようになる。

 ところが厄介なことに、ミドルウエアやOSをバージョンアップすると、アプリに影響を与え、場合によってはアプリが動かなくなってしまう。悪影響をあらかじめ検証して、必要があればアプリを修正しておく。この作業が厄介で時間と金がかかる。それならアプリそのものも作り直してしまおう、というのがおそらく君のところのシステム担当者の提案だろうね。

 社長:ソフトのメーカーには毎年、保守費を払ってきたはずだ。その上、なぜ我々が時間と金をかけるのかね。

 友人:その保守費はミドルウエアやOSに対してだ。アプリは別なんだよ。ソフトが複雑に組み合わさっていて、どこかを変えると他のソフトに影響が出る。コンピューターの泣き所の一つだな。

 社長:スマートフォンで新聞を読んだり、移動中にニュース動画を観たりしているけれど、そのアプリは俺でも簡単に入れられた。ああいう風にできないものか。

 友人:スマートフォンもコンピューターだから同じ問題がある。アップルのiPhone向けに開発したアプリは、Androidスマートフォンでは動かない。OSが違うから。iPhoneのOSをバージョンアップすると、前に入れたアプリが動かなくなって、アプリを入れ直さなければならないこともある。

 もうすこし細かいことを言うと、プログラミング言語というものを使って、人間がアプリを記述していくのだが、言語にも流行りすたりがある。ある言語がすたれてしまい、その言語で書いたアプリを別の言語で全部書き替える、ということすらある。

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社長の疑問その弐

なぜ“手工業”のままなのか

 社長:コンピューターを使っているのに、なんだか面倒だな。アプリを人間が記述するとか、人手で何とかしようとすることが多すぎやしないか。何かあると責任者は「人手がもっと必要です」と言ってくるし。

 友人:プログラミング言語というくらいだから、アプリの開発は文章を書くことに似ている。文法に従って、コンピューターに与える指示を一つひとつ書き連ねていく。これでは大変だから、ソフト開発を支援するソフトも登場しているが、全自動というわけにはいかない。

 社長:自動運転車が登場したり、コンピューターが囲碁で人間に勝ったりする時代だろう。もっと効率的に進められないのかな。

 友人:自動運転の仕組みだって、裏では人間がソフトを記述している。いまだに手工業から抜けきれていない。つまり、人海戦術なんだよな。

 社長:それなら既製品を使えばいいのでは。いちいち作るから金も時間もかかる。システム責任者にも言ったのだが、ソフトウエアメーカーが用意したアプリや、ネット経由で使えるクラウドサービスを取り入れれば済むのではないか。

 友人:その通りだけれども、君のところの業務に既製品の機能がどれだけ合致するか、見極めないといけない。合わない部分は別途ソフトを開発する。あるいは機能に合うように業務を変える。先進的なことをやろうとしているなら、おそらく世の中にそれを支えるアプリやクラウドはまだないから、独自のアプリを開発するしかない。

 社長:うちの仕事のやり方は先進的でも完璧でもないだろう。それでもアプリの機能に合わせて業務を変えろと言われたら抵抗があるな。といって自分で作ろうとすると、思ったように出来上がらないし。

 友人:うちの社長には「ITは諸刃の剣」だと説明している。武器になりえるが、マイナスの側面もある。ITの変化が激しくて使う側が混乱するとか、情報漏洩とか。後者に気を付けてITを使いこなすことが肝要だ。

 社長:何にでも一長一短はあるものだけれど、システムは短所ばかりが目につく。開発や維持にあれだけ金がかかり、何かあると追加の出費を強いられる。もう少し先をにらんで経営したいのだが、ITに足を引っ張られている気がする。何かあるたびに君に相談するわけにもいかないし。だれかいい人を知らないか。

 友人:ついこの間、リタイアされたばかりだが、適任がいる。システム担当役員の経験があるし、反対側のシステム開発会社にいたこともあるベテランだ。両方の事情がよく分かっている。紹介するよ。

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私の疑問はおかしいのだろうか
 AI(人工知能)の時代が来たと言われるが、社内で使っている情報システムを巡るドタバタを見ると、とてもコンピューターを“使っている”とは思えない。

 ITが進化するからソフトもバージョンアップせよ、と言われるが、金を払っている側がさらにお金を投じることになる。払う金の大半は技術者の手作業に支払われる。

 「ITは諸刃の剣、利用者側の使い方次第」と言われても困る。ITの提供側がもっとマイナス要素を減らす工夫をすべきではないか。

 私の疑問はおかしいのだろうか。

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疑問を抱く人が沢山います

~システムへの疑問 調査報告~

『経営者なら必ず抱く疑問』シリーズは読者の皆様のご意見を伺い、公開していきます。
第2回記事「ITが邪魔していないか」で実施した調査「システムへの疑問」の結果を報告します。

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「システムに納得がいかない」そういう経験がありますか?
例えば「システムを変更しようとしたら驚くほど時間がかかると言われた」
「なかなか思い通りのシステムが出来上がらない」など

第2回記事「ITが邪魔していないか」で実施した
調査「システムへの疑問」の回答を集計。

読者意見より

  • 社内システムを変更し、運用を始めようとするたびに、必ずシステムのバグ(瑕疵)が発見され、正式な運用が延期されてしまう。
  • システムの開発がどれだけ大変なことか。開発に必要な知識と経験の上に、対象となる業務についても知識と経験が求められてくる。
  • ソフトウエアの開発を外注する習慣(いわゆる多重下請構造)が日本の競争力を低下させているのではないか。ソフト開発会社に優秀なエンジニアが少ない気がしてならない。そもそも真に優秀な者は開発会社に入社しないか、入社しても長続きしないのではないか。
  • 本シリーズを続けて読んでいる。「システムの価値とは」もしくは「システムに携わる役割」といった点にまだ触れていない展開であり、どこに着地させるのか楽しみである。システムとは、コンピューターやそれに関わる人やツールだけではなく、使う人・企業・関連する他のサービスまで含めた総合的な業務そのものではないだろうか。このシリーズに出てくる社長はそういう意味のシステムに興味がない様に見えてしまう。システム責任者とのコミュニケーションも足りていない。解決の第一歩はそのあたりにあるのでは。
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人海戦術への疑問
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