経営者なら必ず抱く疑問 第4回 「うちの社員が業務を知らない?」

社長の疑問その壱

顧客である我々が悪い?

某月某日、社長室にて。

 社長:ご足労いただき、ありがとうございます。大手企業で情報システムの責任者であるCIO(チーフインフォメーションオフィサー)を務めた後、システム開発会社で辣腕を振るわれたこともあるそうですね。私の大学時代の友人と飲んだのですが、その時に聞きました。

 情報システムの開発でいつも苦労しています。納得できないことが多く、相談に乗っていただきたく、お招きした次第です。

 ベテラン:お役に立てるかどうか分かりませんが、何なりとご質問ください。

 社長:つい先日、出来上がってきたシステムに我々が要求したはずの機能が備わっておらず、システム開発会社に抗議したところ、先方は「その機能を実現するには追加の費用と期間が必要」と言ってきました。押し問答の末、条件をすべて呑んだのですが釈然としません。

 ベテラン:情報システムに何をさせるかを決める、いわゆる要件定義のところですね。システム開発の成否は要件定義にかかっています。ところがシステム開発会社との間でトラブルが最も起きやすい個所でもあります。

 社長:「一体どうなっているのか」と現場に問い質したところ、システム開発会社が出してきた機能一覧をそのシステムを使う部門がきちんと確認しておらず、必須の機能が一覧から漏れていたことに気付かなかったそうです。

 システム開発会社から「そちらが了承した機能はすべて作った」「きちんと確認せず、文句を言われても困る」とまで言われました。「客が悪い」と言わんばかりの態度に正直、腹が立ちました。

 ベテラン:お気持ちは分かります。ですがシステムの要件を定義する責任はシステムを発注する客側にあります。自分たちだけで要件定義をこなすのが難しければ、システム開発会社の力を借りることになります。その際、開発会社から依頼された確認事項にすみやかに返答しなければなりません。

 社長:現場は自分の仕事で忙しいし、そもそもコンピューターの素人ばかりです。専門家であるシステム開発会社に任せたいから、高い開発費を払っているわけで。

 ベテラン:顧客を適切に誘導することがシステム開発会社には求められます。いつまでにどんな情報を揃えるのか、どこでどのような判断を下すのか、といったことを分かりやすく説明するのです。

 社長:うちの社員は「システム開発会社は最初に通り一遍の説明しかしなかった」と言っています。てっきり開発会社にやってもらえると思っていたら、ぎりぎりになって『そちらでやっていただかないと進めません』と梯子を外してきたそうです。

 ベテラン:システム開発会社の役員に転じてから開発案件の進捗会議にたびたび出ました。「お客様に協力を求めているが、やっていただけない」という報告が多かったですね。CIOをしていた時、システム開発の打ち合わせに事業部門の連中を出席させるために苦労したことを思い出しました。

 社員は本業にかかりきり、情報システムどころではない。そういう状況は分かります。ですがシステムは本業を効率よく進めるための道具です。何に使いたいのか、それを決めることを他人に任せられません。

 少なくとも、システム開発の成否を握る要件定義だけは、社員の力と時間を投入して、「自分ごと」として取り組むことが大切です。

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社長の疑問その弐

業務知識が失われている?

 社長:なるほど。その要件定義ですけれども、自分でやるとして、どういう力が求められますか。

 ベテラン:何と言っても業務の知識です。業務の流れと、そこで使われている情報を把握することです。

 社長:コンピューターの知識ではないわけですね。それなら、うちの社員でやれそうです。

 ベテラン:そこに問題があります。御社の社員は業務知識を持っていますか。失礼を承知で言いますと、案外持っていないのでは。

 社長:どういうことですか。業務を日々こなしているわけですから、少なくとも自分が担当している業務について知らないはずがないですよ。

 ベテラン:実は今、多くの企業や組織から業務知識が失われつつあります。システムの要件定義ができず、開発に失敗する根本の原因はここです。

 「ご担当の業務の流れを説明してください」とお願いすると、情報システムの操作画面を持ち出してくる人がいます。画面に出てくる指示に従って「はい」か「いいえ」を選んだり、数字を入力しているだけで、大抵のことは済んでしまいますからね。

 社長:業務を自動化するために情報システムを入れたわけですから。

 ベテラン:そうです。実際、効果も上がっています。その反面、業務の流れや業務のルールをよく分かっていない社員が出てきています。自分の業務が全体のどこに位置づけられているのか、そのあたりも把握できていません。

 社長:今はそうなっているとしても、システムを開発する以前から業務はあり、その知識を持っていたはずです。

 ベテラン:そうしたベテランは企業からいなくなりつつあります。もともとの業務知識は情報システムの中に入っているから、とりあえず業務を進められる。しかし、システムを開発し直そうとすると、業務知識を持つ人がいなくなっていることに気付くのです。

 社長:本当に業務知識が失われているとしたら、システム開発だけではなく、企業の存続に関わる話ですよ。どう手を打てばよいのでしょう。

 ベテラン:荒療治としては、とにかくシステム開発に挑戦することですね。ビジネスや業務は変化していますから、業務を見直し、それに合わせてシステムを作る。この過程で業務の流れや情報について社員が再確認することになります。

 社長:業務知識がないからシステム開発で苦労する。その業務知識を取り戻すためにシステムを開発する、というわけですか。荒療治をしても、出来上がったシステムを使っているうちに、また業務知識が薄れていきませんか。

 ベテラン:そうならないためには、要件定義に加え、開発や出来上がった後の保守といった仕事を御社の中でこなす必要があります。いわゆる「内製」ですね。業務は変わり続けますから、システムも変化させていく。それを社内でやれば一定数の社員が常に業務知識を持っている状態にできます。

 社長:要件定義ですら苦労しているのに内製ですか。人材のことを考えると実行に移すのは難しそうです・・・。

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何か良い手はないだろうか。
 システム開発でトラブルが起きる原因は、顧客側、つまり我々にもあるということが分かってきた。自分で使うシステムだからその要件は自分で決めるべきだし、業務知識は我々が持っていなければならない。それはそうだろう。

 だが、業務知識を蓄積し、継承するために、システムを内製しろと言われてしまうと、これは苦しい。何か良い手はないのだろうか。
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