経営者なら必ず抱く疑問 第5回「業務知識が無いからITが高くつく」

企業の現実その壱

8割が「業務知識の消失」を指摘

ある社長の独白。

 情報システムはなぜ高コストなのか。開発をすると大抵、最後の頃になって「開発費が足りません」と言ってくる。かなりの金を使っているのに使い勝手は悪い。
 しかも「ソフト製品をバージョンアップするからシステムを直す」などと、当社の業務に関係ない理由で費用が発生する。情報システムが経営の足を引っ張っている。
 大企業でCIO(最高情報責任者)をしている、学生時代の友人に相談した。IT(情報技術)はうまく使えば効果があるものの、結局は人海戦術でシステムを開発せざるをえない面があり、舵取りが難しいとのことだった。
 CIOの友人に頼み、情報システムに詳しいベテランを紹介してもらった。そのベテランに私の疑問をぶつけ、助言を頼んだ。ベテランからは「システムに何をさせるのかという要件を経営者や事業部門が自分で決めないといけない」と指摘された。要件定義は我々システムを使う側の責任だという。続く一言は衝撃だった。
 「業務知識が御社から失われつつあり要件を定義できなくなっているのでは」

 業務のことなら自分たちで分かっているから、要件定義をしっかりやればいいのだろう。こう思っていたら、そもそも業務知識が無いと言われてしまった。社内に戻り、システム責任者を問い質すと本当だった。

 「現場がなかなか要件を決めてくれないのは本業で忙しいからだと当初思っていました。ところが話をよく聞くと、そもそも業務がどうなっているか説明できる人間がいないというのです。やむをえず、我々システム担当者が代理で要件を決めましたが、それではうまくいきません。こうしたことが何度かありました」
「組織が気付かないうちに業務知識が失われている」という指摘をどう思いますか。

第4回記事「うちの社員が業務を知らない」
で実施した調査の回答を集計

回答者の意見

  • 業務プロセスがブラックボックスに

    業務がシステム化され始めて半世紀が過ぎ、そのライフサイクルは社内にいる人よりも長くなり、システムの全容を知る人がいなくなっている。しかもシステムのアウトソーシングに伴い、自社の業務プロセスがブラックボックスになってしまった。今後、人口減少を補う生産性向上や、新たな課題の解決のため、AI、IoT、ロボットの活用を含め、システムを使った業務革新が必須になる。今のうちにシステムを含む業務プロセス全体の可視化・共有化に取り組むべき。自社の業務プロセスが分からなければ、いいツールがあっても活用できるノウハウや人材がない状況に追い込まれる。それこそが本当の意味での人口減少に伴う危機である。

  • 質問するとITベンダーに聞きに行く

    情報系のコンサルティングをしている。システムについて外に丸投げで、社内に業務知識の欠片もない大手企業が数多くある。業務のことをその企業の担当者に質問すると、お抱えのITベンダーに聞きに行く。「数年に一度、業務の棚卸が重要」と口が酸っぱくなるほど言っているが、理解できる経営幹部はごく一部、ほとんどは「何の話だ」という顔をしている。

  • 全体像を把握せず、細部は特定社員だけ

    全体像を把握している社員が少ない。また、特定の手続きや業務になると特定の社員、場合によっては長期勤務している契約社員しか把握していないことがある。こういう状態でシステムを作らざるを得ないが、業務の言葉をシステムの言葉に翻訳するスキルがITベンダー側にも不足している。

  • ドキュメントがあっても使えない

    業務知識を維持し、継承するには「知識の顕在化=ドキュメント化」と「そのドキュメントを使える能力」の二段構造が必要である。しかし一般にはドキュメント化することに力点を置き、それさえできれば大丈夫と勘違いしているところが多い。ドキュメントを整備してもそれは一種の「辞書」であって、何かの課題を解決するときに、どのドキュメントのどこに関連知識が記載されていて、それをどのように有機的に使えば良いのかを、もう一つの知識として継承し維持していなければ何の役にも立たない。後者の重要性を語らない組織が多いのが非常に気になっている。

***

企業の現実その弐

6割が「人海戦術に頼り切っている」

 我々の業務知識が失われ、システムの要件を曖昧にしたまま、開発を社外のIT企業に頼んでいるのであれば、確かにうまくいかないだろう。当社でよくあったことだが、システムができあがってきた頃になって、現場が「これは違う」と言い出すことになる。

 IT企業としては、技術者を当社に張り付け、「ここが違う」「こうしてほしい」と当社が言うたびに、システムを手直ししようとする。人海戦術にならざるをえない。だから高コストになってしまう。
システムの開発や利用に際し、「コンピューターを使っているにも関わらず、人海戦術に頼り切っていないか」と思われたことがありますか。

第3回記事「ITは難物、諸刃の剣だ」
で実施した調査の回答を集計

回答者の意見

  • 曖昧な部分が常に残る

    システムの開発にあたって最終的に人海戦術で押し切る形にならざるを得ないのは、次のような構図にあるから。
    業務ワークフローが「属人化したハウツー」に支えられてそれなりにうまく回っている状態をシステムにしようとする。だが「属人化したハウツー」を利用者本人に聞いてもうまく説明できないことが多い。IT部門の担当者は曖昧な部分を残したまま要件定義をして見積もりをとる。ITベンダーの担当者は曖昧な部分の修正やすり合わせ分のロスも見込んで対価を見積もる。経営者あるいは発注責任者は曖昧な部分の開発リスクを精査せず、納期と予算を決めてしまう。その後、出来上がったシステムを触ってみて、ようやく利用者は「何か違う。これでは(今まで通りの)仕事ができない」と言い出す。

  • データを何に使うのか誰も知らない

    システムの導入を担当する立場から見ると、プロジェクトに失敗する企業には共通点がある。まず、「ボタン一つで業務が進むようなシステム」を求めてくる。社内のどの部署と話しても「うちの業務は大変で、システムに間違いがあっては困る」と言う。ところが使っているシステムを確認すると、データは入力しているものの、何に使っているのか誰も知らないという事が多々ある。システム化によって業務知識が失われているのだろう。新システムの試験を嫌がる一方、「100%の品質のものを収めてくれ」と要求する。こういう企業におけるシステム導入プロジェクトは必ず失敗する。

  • 自分の力で作ってみる

    業務とシステムは表裏一体の関係にあるので、外注すれば業務知識が失われていくリスクを必然的に伴う。リスクを回避する手段はEUC(End User Computing)、つまり自分の力で作ること。そうなるとあやふやな業務知識ではどうにもならないことに気づく。自分で作れるようになれば、何を外注にすべきで何を内製すべきかということの判断がつき、外注先に伝えるべきポイントが明確な、正しい要件定義ができる。

 業務知識の欠落は大きな問題だ。情報システムのベテランに相談したら、「システムを内製し、業務が変わるたびにシステムを自力で修正していく。そうすれば業務知識を社内に蓄積できる」と言われた。

 理屈としてはそうかもしれない。だが、開発できる人材は社内にほとんどいないし、新たに雇うこともまずできない。このままでは当社のビジネスの未来が危ぶまれる。

***

何か良い手はないだろうか。

2016年11月22日、情報システムを長年利用してきた日本企業が抱える問題点を明確にし、解決策を考えました。

GENEXUS DAY 2016
Futureproofing Your Business
ビジネスの未来を守る
お問い合わせ

ジェネクサス・ジャパン株式会社

http://www.genexus.com/japan/futureproofing-your-business-jp?ja