デジタルは経営と店舗をサポート 分析結果をビジネスに活用。予兆を検知し、適切なアクションへ

「一人ひとりのお客さまが求めるコーヒーを、必要なときに」
顧客の心にタッチする
ライフタイムバリューの向上を目指す
スターバックス コーヒー

オーダーされたコーヒーを出しているだけではない。スターバックス コーヒーも、顧客を分析し、予兆を検知したうえで適切なアクションを講じることで「顧客の心」にタッチし、感動を与える取り組みを推し進めている。「スターバックス カード」によって収集されたデータを、商品開発や個別店舗の状況分析、デジタル・マーケティングなどに活用。これにより、2つのことを目指しているという。

人間の得意分野は各店舗に委ね、
デジタルは経営と店舗をサポート

スターバックスの掲げるミッションは「人々の心を豊かで活力あるものにするために一人ひとりのお客さま、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」。スターバックス コーヒー ジャパンのデジタル戦略を統括する長見明氏は次のように語る。

「当社のミッションは、アルバイトも含めて現場にも広く浸透しています。また、一人ひとりのお客さまに向き合う姿勢などについて徹底した教育を行っています。こうした取り組みの結果、お客さまにとってかけがえのない体験が生まれることも多い。いくつもの感動的なエピソードが個人ブログなどで語られています」

一人ひとりを大事にする姿勢は、接客やコーヒーの淹れ方にも表れている。たとえば、店舗を訪れた5人のグループが同じ種類のコーヒーを注文したときも、コーヒーは1杯ずつつくられる。このような顧客との接点は人間の得意分野だ。

「デジタルですべてをカバーできるとは思いません。ホスピタリティーや味覚体験などの領域は各店舗に委ね、店舗や経営をサポートする情報としてデジタルを活用する。そのように割り切って考えています」と長見氏はいう。

同社におけるデータの入り口で主要な役割を担うのは、プリペイドカードの「スターバックス カード」である。多彩なカードが用意されており、デザインを気に入って繰り返し購入する顧客も多い。そのほとんどがロイヤルカスタマーである。

デザインを気に入って繰り返し購入する顧客も多いというスターバックス カード。
このほかにも、一部店舗限定や地域限定のカードがある。

「新しい出会い」の先に目指す
ライフタイムバリューの向上

各店舗でスターバックス カードによって収集されたデータは、商品開発や個別店舗の状況分析、デジタル・マーケティングなどに活用されている。こうした取り組みにより、長見氏は2つのことを目指しているという。

「第1に、ワン・ツー・ワンでのマッチングの精度を高める。これは、多くの企業が実行していることだと思います。ただ、当社の扱っている商品バリエーションはあまり多くありません。たとえば、『この商品を買った人はこういう商品も合わせて購入しています』といった協調フィルタリングなどの一般的なやり方では有効な結果にはつながりにくい。当社の商品特性などに応じたアプローチを探しながら取り組みを進めています」

もう1つは、予兆の検知である。言い換えると「いいカンジの異常値を検出したい」(長見氏)とのこと。どんな予兆や異常値なのか、長見氏はこう説明する。

「たとえば、いつもコーヒーだけを飲んでいたお客さまが、ある日突然フラペチーノを注文したとしましょう。その場合、何らかの環境変化があったと推測することができます。もしかしたら恋人ができたのかもしれません。とすると、新しい情報を求めている可能性があります。そんな予兆を見つけたうえで、お客さまと新しい出会いをしたい。それが大きな狙いです」

ただ、こうした予兆検知は簡単ではない。長見氏は「予兆を見つけるのはとても大変です。分析チームには『千本ノックと思ってやってくれ』と話しています」と続ける。

試行錯誤には手間がかかる。しかも、マスプロモーションとは異なり、何百、あるいはそれ以上の購買パターンについて分析しなければならない。しかし、その積み重ねはやがて独自ノウハウに結実するに違いない。

長見氏のいう「新しい出会い」は、新しい機会でもある。たとえば、朝の出社前にしか店舗を訪れなかった顧客が昼にも顔を出すようになるかもしれない。飲み物だけだった顧客が、ある日からフードと一緒に購入する場合もあるだろう。予兆を検知したうえで適切なアクションを講じることにより、顧客のロイヤリティーをより高めることができる。

「お客さまとの新しい出会いを通じて、ライフタイムバリューの向上を目指す。まだまだ道半ばですが、そこまでできれば大成功だと思っています」と長見氏は打ち明ける。

データ活用するユーザーの数が
データの価値を左右する

スターバックスのデータ分析チームでは、社内のユーザーづくりにも熱心に取り組んでいる。つまり、分析結果をビジネスに活用しようと考え、積極的にそれを実行する社員を増やすということ。長見氏はこう話す。

「データの価値は、ユーザー数にほぼ比例すると思います。いくら有用なデータがあっても、それを使う人がいなければ意味がありません。社内に提供するデータの精度を確保したうえで、できるだけ多くのユーザーがデータを活用するようにしたい。そうでなければ、私たちのチームが社内で評価されることもないでしょう」

そこで、店舗ごとのロイヤルカスタマーの人数や属性など、現場が活用しやすい分析結果を提示するようにしている。ただし、データを使えばすぐに実行すべき施策がわかるというケースは少ない。

「データを見て謎が解ければ、たいていの場合、次の謎が浮かび上がってきます。すると、また次の謎を知りたくなる。その繰り返しですが、このようなプロセスを通じてお客さまの顔が次第にくっきりと見えてきます。そのプロセスが重要。お客さまのイメージを思い浮かべながらマーケティングに取り組んでいるかどうか、その違いは大きいと思います」(長見氏)

今、あらゆる分野で消費者の好みや嗜好は多様化しており、多くの企業が苦労しながら消費者の後を追いかけている。

「消費の多様化はますます進むでしょう。これからの企業にとって、個々の顧客への個別対応は必須のものになると思います。そのとき、顧客のニーズに合ったものをマッチングさせるだけでは十分ではなく、顧客の心にタッチする体験も重要です。商品やサービスそのものと心を満たす何か、その両方を追求する必要があるのではないでしょうか」と長見氏はいう。

以前から、スターバックスは商品や店舗でのサービスだけでなく、店舗の雰囲気などを含めた顧客体験を重視してきた。データを活用してこれらすべての要素、そしてブランドを磨きながら、スターバックスはさらなる競争力強化を目指している。

先進テクノロジーがフードサービスを変える 世界の食品産業の改革事例はこちら

お問い合わせ先
日本アイ・ビー・エム株式会社