:【Report】Digital Marketing Conference BigData Conference 2016 Spring

今マーケターは悩んでいる!?デジタル化時代のデジタルとアナログの活用最適解とは何か?

デジタル化社会だからこそのDMのさまざまな優位点

Googleによる、DMとデジタルの複合施策

Googleによる、DMとデジタルの複合施策

 さて、パネルディスカッションの後半は、アナログのプッシュ型メディアを代表するDMについての議論が展開された。

 まずは、鈴木氏が、毎年優れたDMを表彰する「全日本DM大賞」の受賞作を紹介。

 その内の1つがGoogleによる検索連動型の広告サービス「Google AdWords」の新規顧客獲得を目的とした、サービス体験型のDMキャンペーンだ。

 このキャンペーンで送付されたDMは、箱型で南京錠がついているユニークな形状。鍵を開けるには、箱の外帯に書かれたキーワードで「Google検索」を行い、番号を入手しなければならない。入手した番号を使って解錠した箱の中には、サービスに関する情報が掲載された巻物とノベルティの扇子が入っており、結果、巻物から特設サイトへの誘客を促すという仕組みだ。

 DM送付先は数万社に上る企業データベースから優良企業1000社をリストアップして選定。アナログのDMを活用するにあたって、ターゲティングはデジタルで行ったというわけだ。そして、この取り組みによって、DM開封率95%、アンケート回答率51%、ROI 90倍」という結果を残したが、この数字は、通常のキャンペーンと比べ、アンケート回答率2倍、ROI 7倍という高水準だった。

ソフトバンクがDMとして送付した、組み立てるスピーカー

ソフトバンクがDMとして送付した、組み立てるスピーカー

 続いて紹介されたのがソフトバンクの事例だ。

 このキャンペーンの目的は、シャープ製スマートフォンの既存ユーザーを対象に、新機種への買い替えを促すもの。「音質がよい」という新機種の特徴を訴求するために、組み立てるとスマートフォン用のスピーカーになる紙の封筒をDMとして送付。スピーカーの組み立ては簡単で、封筒上の切り込みに沿って手で切っていき、折り曲げれば完成する設計にしたという。

 鈴木氏が「ユーザーさんが実際に手を動かして組み立てる──実際に体験してもらう点が肝かと思っている」と語ったこの取り組みは、通常のDMに比べて、開封率は1.3倍(開封率83%)、機種変更を行った率は1.8倍という好成果をあげた。

 以上、これまでのDMのイメージを覆すような先進的な事例紹介に続き、鈴木氏は、一般社団法人日本ダイレクトメール協会の調査データを交えて、DMの5つの特徴を説明。

 最初の特徴は「届く」。これは「DMは郵便なので電子メール(以下、メール)のパーミッションの壁など関係なく届く」ということを示している。また「住所が変わっていても郵便には転送サービスもあるので届きます」と鈴木氏は補足する。

 2つ目は「開ける」。これは「メールの開封率が年々低下しているなかで、DMの場合は8割近い78.7%の人たちが開封する」ということだ。

DMの開封・閲覧率は78.7%

 3つ目の「保存」については「4割以上の方がDMを保存している」と解説。確かにメールを始めとするデジタルメディアは拡散という点に関しては非常に優れている。しかし、情報の定着っていうところではDMに利があるのだ。

DMの保存率は44.3%

 4つ目の「待っている」という特徴については「81%の人がDMを待っている」というデータを紹介。この数字には鈴木氏も驚かされたというが、先の大山氏の発言「96%の消費者が自分に関係のない情報が送られてくることを不快に感じている」ことを考えると確かに驚異的な数字である。

顧客向けDMの受取意向は81%

 最後は「購買をはじめ、Web検索したとか、SNSに書き込んだとか、DMを受け取った人の内、16.2%の方が何らかの行動を起こしています」というデータが示す「動く」である。さらに「行動喚起率」と呼ばれるこの数字を細かく見ていくと、20代男性が最も高い数値になるという。これについて鈴木氏は「あくまで仮説ですが、デジタルネイティブほどアナログのDMが効くのではないかと思っています。普段、手紙をもらう習慣がない人ほど、すごく心に響くのではないでしょうか」という持論を述べた。

DMを見て、行動する人は16.2%

DMとメールの組み合わせで登録率が5倍に

 大木氏は、鈴木氏の発言を引き取り「(今日の議論の核になるのは)“メール VS DM”という対抗軸でなく、お互いのメリット、デメリットを理解して使いこなすという点かなと感じました」と語り「メールとDMの組み合わせのコツ」についてパネリストに尋ねた。

 それに対する北村氏の答えは次の通りだ。

「まず(DMの)開封率と受け取りたいと思っている方が8割というのは非常に驚異的です。メールと比べた時、そこを生かさない手はないと思います。メールとDMなど、チャネルを使い分けるときに、機能的な特性を考えながら、受け手の主観性をくんで(コミュニケーションの)設計をすることが非常に重要だと思いますね。例えば今デジタルとアナログということを言い換えると紙とスマホと言えます。スマホだと(画面が小さいので)小さい面積の中でやらないといけない。一方、DMであれば──例えばECで複数の商材があって多くの情報を伝えたい時には、紙の方がスクロールせずにパッと開けば情報を俯瞰することができる。この辺りの機能性はDMの方が圧倒的に高いと思います」

 メールを使ってメッセージを送るのは確かに手軽だ。しかし、伝えられる情報量には制約があるため、DMをうまく組み合わせた方がうまく訴求できることも多いのである。

 北村氏の発言に続き、マルケトの小関氏はある企業がセミナーの集客を行う際に行ったテストの結果を紹介した。

 それによれば「DMだけを送った場合とメールだけを送った場合のイベント登録率はどちらも1%くらいだった」が、「DMとメールを組み合わせたら登録率は5%に跳ね上がった」という。

 現在のデジタルマーケティングでは、メールを開封したかどうかということがリアルタイムに把握できる。そこで「例えばメールを送って開封した人にDMを送るとか、メールを読まない人にDMを送る」ということが簡単に実現可能なのだ。

 また、パネルディスカッションの後、鈴木氏に「DMを成功させるコツ」を聞いたところ、「重要なのはターゲティングです。なぜかというとDMの1人当たりのコストは高いから。後は、クリエイティブと戦略性。そして、『オファー』といって、そのDMを送ることでどのような得があるのかということ。でも一番大事なのはやはりターゲティングですね」との答えが返ってきた。

 繰り返しになるが、そのターゲティングが、デジタル技術の活用で精緻に行えるようになったのである。先に紹介したGoogleの事例のごとく、デジタル技術を活用して、DMの送付先を絞り込めば、DMの効果が向上するのは当然だ。そしてMAを活用するなら、DMを使ったシナリオを作成すればよい。例えば「メールを開封しない見込み客にはプッシュでコミュニケーションし、それでも駄目ならDMを送る──」というように。

DMは過去の産物だという認識を今すぐ改めよ

 さて、パネルディスカッションの最後に大木氏は、議論をまとめ「やはりデジタル、アナログ両方を行き来する生活者に寄り添うためには、複合的な活用が必要だと感じました。では、複合的な使い方に何があるのかというと『アナログで入ってデジタルで閉じるようなもの』、あるいは当然ながらオンラインが到達しないお客様もいらっしゃるわけで『同時多発的に情報を選り分けていくもの』、後は逆に『デジタルで創客して登録、アナログでクロージングするもの』がある。この3つが(デジタルとアナログの)活用最適解になろうかと思います」と述べた。

 DMは過去のツールだと思われている向きがある。しかし、デジタル化時代だからこそ、非常に力のあるコミュニケーションツールのひとつであると認識を改めたい。

 パネルディスカッションの中で大山氏が「データをつかったコミュニケーションは一歩間違えるとストーカーになってしまう可能性がある。いまのテクノロジーでリターゲティングとかありますけど、コミュニケーションを間違ってしまうと『ちょっと気持ち悪い』とか、『ストーカーにあっているみたい』というのが、デジタルに慣れていない消費者の言葉だったりするんです」と語ったが、そのような消費者に対して“おもてなし”のコミュニケーションが取れるのがDMなのである。

 さらに後に聞いた鈴木氏の言葉を紹介すれば「受け取る側は特別感が欲しいわけです。その点において、コミュニケーションをパーソナライズしていくというのがまさにデジタルの役目。そして、感動を与えたりとか五感に訴えるところはDMが適している」のだ。それは紙という実体があることや手紙というおもてなし感があるからこそだろう。

 DMなどのアナログメディアとデジタルメディアや技術をどう組み合わせればどのような成果が出るのか? まだまだ実績が足りない。今後、さまざまな取り組みの中で、各業界、商材ごとのベストプラクティクスが蓄積されていけば、新たなムーブメントが起こる可能性もある。そのためには企業同士の協力が必要不可欠だ。競合するデジタルマーケティングの先進企業3社、そして一見畑違いの日本郵便──これらの企業が、今回一堂に会して議論を行ったことを考えれば、組織の枠や壁を超えた取り組みによって、それを実現することも夢ではないだろう。

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