[シリーズ] 一億総活躍社会の雇用 戦力として育てる障害者雇用 誰もが活躍できる社会を目指そうと掲げられた「一億総活躍社会」。
障害者雇用促進法も改正が進み、障害者雇用の重要性は益々高まる。
厚生労働省が発表する「障害者雇用状況の集計結果」によれば、昨年の雇用障害者数は過去最高を更新した。それでもなお、法定雇用率を達成していない企業の割合は52.8%と、実に半数以上の企業が法定雇用率を達成できていない。
企業はいかにして障害者を雇用し、定着させていくべきか。障害者雇用率を高く維持し続ける企業事例を学ぶ。

Case study

本社人事部採用とし店舗の負担を軽減
株式会社ヤオコー常務取締役経営管理本部長/ 人事総務本部長/経営企画室長 上池 昌伸氏

 関東の一都六県に150店舗を構えるスーパーマーケットのヤオコーでは、各店舗につき1〜2人の目安で障害者を雇用している。平成27年度には障害者雇用優良事業所等厚生労働大臣表彰を受賞し、平成28年6月時点における雇用障害者数は215人。障害者雇用率は2.28%と、法定雇用率を上回る。「障害者であっても、その他の従業員と同じように育てて戦力としています」そう語るのは、株式会社ヤオコーの上池昌伸氏だ。店舗からも「いてくれて助かる」という声が届いているという。

 同社が障害者雇用を始めたのは15年以上前に遡る。初期は法定雇用率に届かずに行政指導を受けたこともあった。改善を図るため、特別支援学校、障害者就労支援センター、障害者職業センターをはじめとした各支援機関などへ積極的に働きかけて雇用を促進。ここ数年では年800万円ほどの障害者雇用調整金を支給されるまでになった。

特別支援学校との連携によりヤオコーで働くことになった、商品の陳列や補充を担当する高橋正広さん。「これから様々な種類の業務をやってみたい」と語る。
特別支援学校との連携によりヤオコーで働くことになった、商品の陳列や補充を
担当する高橋正広さん。「これから様々な種類の業務をやってみたい」と語る。

 それでも当初は、「障害者の受け入れを、店舗側から断られることが多かった」と上池氏。

 店舗側は、人件費に見合う業務がきちんとできるのかという、経営コストのリスクを不安に感じていた。そこで、障害者を本社の人事部で採用することとした。そうすることで、各店舗は人件費の負担はゼロで、障害者の労働力を確保することができる。商品陳列や青果・精肉加工補助など個々に適した業務を担当してもらい、成功体験を積むことでモチベーションを高め、さらに業務の難易度を徐々に高めることで戦力として定着に至った。中には発注を任されるまでになった従業員もいる。「今では、障害のある従業員をもっと配属してほしいとリクエストされるようになりました」と上池氏は語る。これまで採用された障害者が、現場で高く評価されている結果といえよう。

 この春にも、特別支援学校からの実習を経て障害者を新卒採用した。その一人、ワカバウォーク店に配属された高橋正広さんは、商品陳列の仕事を任されている。陳列は丁寧で、時には接客にも応じる。仕事ぶりの評判は上々だ。任される業務はこれから増えていくが、「今後は売り場づくりをやってみたい」と意気込みを語る。

上司とコミュニケーションをとりながら、てきぱき作業する。
上司とコミュニケーションをとりながら、てきぱき作業する。
半数以上が5年以上勤務の安定した定着率

 ヤオコーの障害者雇用において特筆すべきは、何よりその定着率の高さである。全ての障害のある従業員のうち、勤続5年以上を占める割合が54.4%。半数を超える障害者が、5年以上定着していることになる。

 高い定着率の要因として、障害者個人との充分な対話が挙げられる。同社では店舗担当者との年2回の育成面談、社内のジョブコーチ(職場適応援助者)を中心とした年1〜2回の巡回面談を行っている。「直接個人と向き合う時間を設けることで、本人の悩みなどを聞き出すことができています」と上池氏が語るように、地道に、丁寧に向き合うことが、育成と定着に結びついている。

 その結果生まれた取り組みもある。「障害を持った従業員同士で集まりたい」という要望をきっかけに、全店舗の障害のある従業員を対象としたフォロー研修を毎年1回行うこととした。「研修では、身だしなみや挨拶などを振り返りながら、班ごとに分かれて身近なテーマについて話し合い、実際に発表もしてもらっています。最後に感想をレポートにして提出してもらっていますが、『参加して良かった』というポジティブな意見が多いです」と上池氏。「仲間との交流や情報交換によって、勤労の決意を新たにしている従業員も多い」という。

 2年前から勤続3年・5年の従業員への表彰制度も導入した。様々な取り組みが、職場定着につながっている。

 入社後、さらなる昇格を目指す障害者もいる。「実は今年、障害のある従業員が初めて中級へと昇格したんです」。そう語る上池氏の表情は明るい。

 今年4月より、障害者雇用促進法で「差別の禁止」と「合理的配慮の提供義務」が施行されることとなった。同法の影響についても「現状は、ほとんど混乱がない」と、上池氏は言い切る。「これまで私たちが行ってきた数々の工夫によって、法改正にもしっかりと対応できる仕組みを作り上げることができました」。しかしながら、個々の障害は千差万別。平成30年には法定雇用率の算定基礎に精神障害者も加わるため、それに伴って法定雇用率の引き上げも予想される。「今後も一人ひとりと向き合いながら、その先の法改正にも備えていきたい」と上池氏は語ってくれた。

平成27年度 障害者雇用優良事業所等厚生労働大臣表彰 株式会社ヤオコー【業  種】 飲食料品小売業
【業務内容】 食品スーパーマーケットチェーン
【従業員数】 14,106人(平成28年6月1日現在)うち障害者215人(知的障害134人、
          精神障害19人、身体障害等62人)
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2014年
障害者の戦力化と、企業の成長
2015年
障害者雇用が高める企業価値
障害者雇用の理解を深める「働く広場」

障害者雇用事業所の職場ルポなど最新の雇用事例を中心に、身近な障害者雇用問題を取り上げた事業主向けの啓発誌(毎月25日発行)。ホームページではデジタルブックを公開中。

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障害者雇用の好事例に学ぶ「職場改善好事例集」

雇用管理や職場環境の整備など様々な改善・工夫を行った好事例を紹介。平成27年度のテーマは、「就職困難性の高い障害者のための職場改善好事例集-精神障害者、発達障害者、高次脳機能障害者-」

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