[シリーズ] 一億総活躍社会の雇用 人手不足の時代を勝ち抜く生涯現役の実現
日本の高齢化率が21%を超え「超高齢社会」となってから、まもなく10年を迎えようとしている。
今なお65歳以上の高年齢者は増え続け、平成27年のデータでは総人口に占める割合も26.7%と過去最高を更新した。
少子化による労働力人口の減少が見込まれている中、一億総活躍社会の旗印が掲げられ、企業にとって高年齢者の雇用は差し迫った重要課題となっている。
いかにして高年齢者の高い就労意欲と経験、技能を役立てるか。企業が実践すべき新たな改革の指針を探る。

Case study

生涯現役で働ける職場を目指し
希望者は全員70歳まで雇用
株式会社光真製作所代表取締役 池田  正秋氏

 滋賀県草津市に本社を構える株式会社光真製作所は、自動券売機や業務用電子秤といったメカコンポーネントの組立・調整・検査、電子機器関連のハーネス製作などを主な事業とする電気機械器具メーカーである。平成28年7月時点で従業員は84人(パート・派遣社員48人含む)であり、そのうち60歳以上がおよそ3割(25人)を占める。

「当社の定年は60歳ですが、本人の希望に応じて再雇用年齢を70歳までとしました。以降も運用によって年齢の上限なく勤務延長に対応しています」と代表取締役の池田正秋氏が語るように、70歳以上の嘱託職員も3人在籍している。最高年齢は81歳だ。多品種少量生産に求められる熟練従業員の高い技術を生かし、若手への技能伝承により自社の技術力を保ち続けたい思いから、高年齢者雇用に取り組んだ。

 まずは平成20年に「生涯現役で働ける職場」という方針を掲げた。定年を迎えた熟練者のスキルを継続して戦力とするために就業規則を改定し、希望者全員を65歳まで継続雇用できるようにした。平成24年には、継続雇用年齢を70歳にまで引き上げた。

 同時に、定年の3年前から、定年後の継続雇用について話し合う新対話制度を導入した。新対話制度では毎年一度面談を行い、本人の継続雇用の意思を確認しながら、雇用方法や賃金体系、勤務体系、年金などについて説明を行う。「十分に情報提供を行った上で本人と会社の意向をすり合わせることによって、定年後の不安解消とモチベーション維持を図ることができます」と池田社長。導入前はイメージしていた定年後と、現実とのギャップに悩む高年齢者もいたが、新対話制度導入によって定年前からじっくり話し合うことで大きく改善されたという。「ほとんどの従業員が定年後も継続雇用を望むようになりました」。また、役職のあった従業員は定年時に役職を降りることになり、その分賃金は減る。しかしそれも、3年前からきちんと話し合っており、また、責任の負担も軽減されることから「以前より働きやすい」という当事者の声も多いという。

高年齢者雇用のため、様々な環境改善を実施

 高年齢者が持つノウハウを伝承するための工夫として、生産ラインから離れた場所に「テクニカルトレーニングルーム」と呼ばれる、訓練や練習のための専用ルームを常設することとした。「従来は現場でのOJTが中心でした。しかしそれでは周囲が業務に集中できないという問題がありました。そこでテクニカルトレーニングルームを用意し、熟練技術を持つ従業員が十分に時間をかけて若手に教育指導できるようにしました。時には若手から率先して高年齢者に指導を求めることもあるようです」。

「テクニカルトレーニングルーム」には練習用の器具や部品が充実。
「テクニカルトレーニングルーム」には練習用の器具や部品が充実。

 高年齢者の雇用は、同社の従業員だった人材の継続雇用だけに留まらない。優れた技術や技能を有する人材であれば、年齢を問わず外部からの新規採用にも力を注いでいる。同社で働く最高齢81歳の平野晴康さんも、採用時は66歳だった。

「設計に携わっていたというそれまでのキャリアに期待し、採用しました。現在ではそのスキルを生かしてもらうため、ものづくりメーカーの業務として最後の砦でもある配線作業の検査を担当してもらっています」と、平野さんの活躍ぶりを語る。

配線作業の最終検査を担当する、81歳の平野晴康さん。週5日、半日勤務で働く。「体力の続く限り仕事を続けたい」と笑顔で語る。
配線作業の最終検査を担当する、81歳の平野晴康さん。週5日、半日勤務で働く。
「体力の続く限り仕事を続けたい」と笑顔で語る。

 高年齢者を雇用するためには、職場環境の改善も必要だった。まずは紙ベースだった作業指導書を電子化しディスプレー表示にすることで、画面上でのピンチアウトによる拡大に対応。文字の表示を見やすくすることで、疲労の軽減やミスの防止につながった。さらに、製品に合わせた専用台車やパワーゲート車を導入することで搬送作業の負担を軽減した。また、部品の格納ケースに品番・品名表示と併用して実際の写真を貼り付けることによって、部品の選択ミス・補充ミスを防止するよう努めた。これらは、高齢者以外の従業員の働きやすさにもつながっている。

 同社で働く高年齢者は、働くことに「"生き甲斐"や"やり甲斐"を感じている」と声を揃える。「今は社員時代に育てた若手とともに働き、みんなと会話をすることで、元気をもらっています」と25年勤務する65歳の土蔵伊左美(つちくら いさみ)さんは語る。73歳の景山ヒロ子さんは「若いスタッフと仲良くできているからこそ、これまで長く働けた」と笑顔を見せる。幅広い年代の従業員同士で良好なコミュニケーションが図れている証といえるだろう。

景山ヒロ子さんは、創業時から同社に勤める大ベテランだ。
景山ヒロ子さんは、創業時から同社に勤める大ベテランだ。

 高年齢者が継続して働くことのできるこうした様々な取り組みが評価され、平成27年度高年齢者雇用開発コンテストでは「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰優秀賞」を受賞した。それでもなお、現状に満足することなく「まだ課題はある」と池田社長は語る。

「今後は、モチベーションを高く維持してもらうため、現状の時給制から月給制の導入を検討しています。また新対話制度の中身をより充実したものとし、話し合いの開始時期も、本人のキャリア形成のために定年3年前から定年5年前に実施することを視野に入れています。さらに、貴重な若手をしっかり育成するための、熟練者の指導による社内教育プログラムを考えているところです」。

 企業と高年齢者の双方が満足する雇用に向けて、同社の改革はさらに続く。

平成27年度 高年齢者雇用開発コンテスト独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰優秀賞
  株式会社光真製作所
  【業  種】 電気機械器具製造業 
【業務内容】 メカコンポーネントの組立・調整・検査、電子機器関連のハーネス製作 他
【従業員数】 84人(平成28年7月29日現在)(うち60~64歳11人、 65~69歳11人、70歳以上3人)
次ページ 各都道府県で開催 地域ワークショップ
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Archive
2014年
経験、知識とスキルある高年齢者の戦力化
2015年
シニアの活力が企業を救う働き続けられる環境整備が鍵
最新の好事例・制度を知る「エルダー」

高年齢者雇用の好事例や助成金制度、高年齢者雇用問題等を取り上げた事業主向けの月刊誌。毎月1日発行。デジタルブックも公開中。

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高年齢者雇用開発フォーラム開催

10月の「高年齢者雇用支援月間」に合わせて「高年齢者雇用開発フォーラム」を開催。高年齢者が働きやすい職場環境改善事例を募集した「平成28年度高年齢者雇用開発コンテスト」の表彰式や記念講演、トークセッションなどを実施。

開催日 平成28年10月5日(水) 午前10時〜午後4時30分 場 所 イイノホール(東京都千代田区) プログラム 高年齢者雇用開発コンテスト表彰式 神代 雅春 氏(一般財団法人日本予防医学協会理事長)による記念講演 事例発表・トークセッション
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