何もないからこそ、アフリカが世界最先端になる!

ー秋田さんの目標を教えてください。

何もないアフリカが、最先端の世界になる。そんな未来を創るお手伝いをしたい。

私たちはいま、電気のない地域に電気を届ける仕事をしています。電線もなければ電柱もない。地域には巨大発電所もない。ないないづくしです。でも、村のキオスクにソーラーパネルを1台置くだけで、村の生活が変わる。みんなが携帯電話を自由に使うことができるようになり、みんなの家に電灯がともるようになる。

かつて、アフリカの多くの人々は電話もインターネットもない生活を強いられていました。でも、携帯電話が普及し、スマートフォンが登場して、がらりと変わりました。有線電話がなくても、パソコンがなくても、みんなが携帯電話で会話することができ、スマホでインターネットを自在に利用できるようになりました。

DGが展開する「ワッシャ」も同じです。電線も発電所もない地域に「電気」を届ける。まさに携帯電話が普及したように。アフリカの未電化地域に電力を届けるビジネスで、トップシェアを目指したい。

未電化地域でも、ソーラーパネルとレンタルLEDライトがあれば、夜を明るくできる

私たちが提携している「キオスク」という業態は各地域の「ハブ」になる存在です。村人が集う場所であり、商品が集積する場所であり、商いが行われる場所です。そしてお金のやりとりが生まれる場所です。そこに私たちは「電気を売買できる場所」という付加価値をつけました。

これ、何かに似ています。日本のコンビニエンスストアです。もともと小売店のネットワークだったコンビニは、いまや金融から物流に至るまでさまざまなサービスの「ハブ」になりました。

アフリカのキオスクも、アフリカではまだまったく機能してない小口宅配サービスの拠点になるかもしれません。僕たちが行っている電力サービスのネットワークに別のサービスを乗せることも可能になるはずです。

電線も発電所も固定電話もパソコンも銀行もないけれど、どこよりも進んでいて、どこよりも豊かで、どこよりも楽しい場所にアフリカがなる。そんな未来を創るため、さらにアクセルを踏んでいきます。

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さらに、この原稿をまとめている10月20日、ニュースが飛び込んできました。

デジタルグリッドに、JICAが3億円を出資したとのこと。JICAではいま、インフラ、国連が定める「持続可能な開発目標」、気候変動の3分野をテーマにした事業に対して、出資するスキームがあるそうです。

アフリカの未電化地域に電力をもたらすデジタルグリッドは、重要なインフラビジネスを担っているわけですね。秋田さんは、今回の出資について「嬉しくて鼻血でそうです」と喜びの声をフェイスブックにアップしています。

日本のベンチャー企業のアフリカでの活躍に公的機関が投資の形で応援する。官民連携の新しいかたちが始まろうとしています。

第2章のまとめ

デジタルグリッドの秋田さんは断言します。

「アフリカが一番進んでいる時代がきっと来る」

インフラも整っていないし、貧困は解消されていないし、治安が悪いところもあるし、と、アフリカのネガティブな部分を挙げていったら、10本の指では足りません。

その一方で、欧米や日本が発展したのとは別に、アフリカならではの豊かになる道があるはず……。エチオピアでビジネスを行う私も同じ意見を持っています。
 
アフリカのプラス面に光を当ててみましょう。

たとえば、インフラや法律が整備されていない。一見、マイナス面にも聞こえますが、何もないからこそ既存の常識や仕組みを吹っ飛ばすような新しいサービス、新しい技術を普及させるには、うってつけの場所ともいえるのです。

その典型が、ケニアでスタートした携帯電話を利用した電子マネーのサービス、Mペサです。携帯電話を持っていれば、個人間であるいは個人とお店のあいだでお金のやりとりが簡単にできる。技術的には日本でも実現可能でしょう。けれどもすでに通信業界、金融業界、信販業界、さまざまな業界の規制と既得権益ががんじがらめになった日本のような先進国では、古い業種分類を飛び越えたようなMペサのサービスを導入しようとすると、さまざまな壁が立ち塞がります。

物流サービスもそうです。先進国の物流は、整備された道路と鉄道を前提としています。宅配サービスについては、住所が確定しているのが前提です。

でも、アフリカの地域によっては、道路や鉄道が未整備だったり、そもそも「住所」自体がなかったりします。私自身も、エチオピアの自宅に事実上の住所はなく、郵便や宅配便が届くことはありません。となると、高度な物流サービスをアフリカに展開するのは不可能のように見えます。

でも、スマートフォンと位置情報サービスとドローンを導入すると話はまったく変わってきます。

スマートフォンさえあれば、位置情報サービスを誰もが利用できます。緯度経度で自分の居場所を指定すれば、どこへ荷物を届けてほしいのかすぐに物流業者に伝えることができます。道路や鉄道がなくても、空飛ぶドローンを活用すれば、問題は解決です。

いずれは登場するであろう、緯度経度情報を頼りにドローンで物を届けるサービス。すでに物流網が完備し、既存サービスが席巻している先進国では、さまざまな規制に阻まれて、なかなか実現が難しい。けれども、アフリカならば、ドローンのサービスがいち早く登場してもおかしくありません。

実際、アフリカの物流サービスとITサービスに可能性を見いだした企業が、すでに動き出しています。

まず、大手物流のUPSが、ロボットベンチャーのジップラインと組んで、同社の開発したドローンを使い、ルワンダで輸血用の血液を輸送するサービスを開始する計画を打ち出しました。日本のエアロセンス社も、道路整備が乏しいザンビアの農村部で、自社が開発したドローンを用いた医療関連物資の供給や医療検査の検体の輸送に取り組もうとしています。

さらに、2016年9月、TICAD Ⅵの取材を終えて、ルワンダへと取材に向かったとき、こんなニュースが流れました。フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグ氏が、TICADが終わったばかりのケニアを訪れ、Mペサをはじめ、ケニアのIT事業を次々と生んだインキュベーション施設「iHub(アイハブ)」を訪問したというのです。

ルワンダで見たアフリカや英米のメディアには、「フェイスブック、Mペサを買収か?」という刺激的な見出しが付いていました。

世界中で十数億人がユーザーになっているフェイスブックは、アフリカでも大人気です。ケニアでも600万人近いユーザーがいるそうです。

フェイスブックでは、今後さらなるユーザーを獲得するため、特定通信会社と提携し、ユーザーのパケット通信料をフェイスブックが負担したり、3Gが導入されていない地域のユーザー向けに、容量を軽くしたサイトやアプリを用意するようです。

私の周りのアフリカの友人たちは、みんなフェイスブックが大好き。友達申請のハードルもとても低いため、アフリカスキャンの福吉さんも「ケニアの人たちは、フェイスブックで友達申請すれば、非常に簡単にアンケートに答えてくれるのでマーケティングにも使えるんです」と話していました。

Mペサを買収するかどうかはさておき、CEOのザッカーバーグ氏が自ら足を運ぶくらいですから、フェイスブックがアフリカを大きな市場とにらんでいることは間違いありません。

アフリカスキャンの澤田さんや福吉さん、デジタルグリッドの秋田さんのような日本の起業家たちから、フェイスブックに至るまで。いま、アフリカはさまざまな分野の「起業」のタネが転がっている場所です。私自身も一起業家として、ファッションの分野で新しい花を咲かせられるのでは、と日々仕事をしています。そしてもちろん、今回取材した以外にもさまざまなタネが隠れているはずです。