第3章 - ルワンダ ICT立国編 : その2

日本企業もルワンダのICTを応援!

ルワンダのICT戦略のベースには、JICAをはじめとする日本の国際協力があるということがよくわかりましたが、実はそれだけではなく、民間企業の中にも、ルワンダのICT立国を後押しするところが出てきているそうです。

そのうちの1つが、東京都千代田区に本社を置くレックスバート・コミュニケーションズです。2009年に設立された同社は、PCや携帯電話、スマホ向けのサービスの企画や開発を行ってきました。

同社の特徴は、日本国内のみならず、海外でソフトウェア開発を行っていることです。俗に言う「オフショア開発」ですね。日本のソフトウェアベンダーはこれまで、ベトナムや中国などでオフショア開発を行ってきました。が、ルワンダにそれを求めている企業が、同社というわけです。もともとはアフリカの別の国でオフショア開発を行っていましたが、2011年からルワンダでソフトウェア開発を行い、現在は同社の開発業務のかなりの部分をルワンダの関連企業「ワイヤードイン社」に任せています。

レックスバート・コミュニケーションズの田中秀和社長とは、
ケニアのTICAD Ⅵでお会いしました

なぜ、ルワンダでオフショア開発を始めたのか。社長の田中秀和さんに伺います。

—ルワンダでソフトウェアを開発し始めたきっかけは?

ルワンダ人の真面目一徹なところが、ソフトウェア開発にぴったりだからです。

もともとオフショア開発は、国内人件費を削減するために行われるようになった側面があります。このため、オフショア開発には安かろう悪かろうのイメージがつきものです。

一方、ルワンダの人件費はけっして安くありません。つまりコストだけを考えたら、ルワンダでのオフショア開発は難しい。でも、私たちがオフショア開発に求めているのは、値段ではなく、顧客のニーズを満たせるものをつくること。ですから、ルワンダでのオフショア開発には、日本人に求めるのと同等の技術力を求めています。

以前、私が担当していた開発プロジェクトにおいて、IT技術者が不足しており、人を探していました。そこでとある知人がルワンダのエンジニアを紹介してくれたんですね。試しにアプリ開発の一部をお願いしたのです。すると、こちらの要求水準をあっさり満たしてくれました。開発レベルもスピードも、まったく遜色ない。これはいけるぞ、となったわけです。

しかも、ルワンダの人は責任感が強い。自分の仕事が完了するまでコツコツと取り組んでくれるし、たとえば私がキガリの事務所で残業をしていると「あなたが残って仕事をするなら、私も」となったりします。

—なるほど。弊社のエチオピア人スタッフとはだいぶ様子が異なりますね。自分の仕事が終わってなくても、時間が来たら帰ってしまう人の方が多いですから(笑)。真面目な人を選んで採用しているのでしょうか。

採用時に気を付けているのは、同じチームのメンバーとして一緒に働けるかどうかですね。彼らはこちらの説明にはかなり前のめりな質問をしてきたりと、成長したいという意欲を強く感じます。まだ要求スピードに達していない部分がありますが、この問題はこれからの経験と彼らの努力が解決してくれるでしょう。

—ルワンダの人たちと仕事をすることは、日本のスタッフにもいい影響を与えているのではないでしょうか。

それはあります。ICT立国宣言をしているルワンダには、世界中の先端企業が集まってきています。最新のテクノロジーもどんどん入ってきています。何年か後には、日本とルワンダのICT環境の充実ぶりは逆転し、ルワンダのほうが優秀な技術者が育っている可能性もあります。そのときには、いま構築している人脈をベースに、ルワンダでさらなるビジネスチャンスを見出せると期待しています。

—大事な役割を担う現地のパートナーはどうやって探したのですか。

私たちのビジネスパートナーのワイヤードイン社を率いるアランさんとは、人の紹介で出会いました。彼はアメリカの大学を卒業していますが、ルワンダを復興するために帰国しました。若いリーダー層には、母国ルワンダに貢献したいという思いが強いのです。

日本のレックスバートと提携して日本向けソフト開発も行う
ワイヤードインのアランさん

では、ワイヤードイン社を率いるアランさんにもお話を聞いてみましょう。アランさんは、k ラボにいた若手起業家たちよりも少し年上の39歳。内戦のときは10代後半ですから、自国の悲劇を目の当たりにした世代です。

—アランさんの会社は日本からのオフショア開発を請け負っているんですね?

今日現在は、3つのパートナー企業——そのうちの2社は日本企業です——のオフショア開発を手掛けています。レックスバートの田中さんには、ワイヤードイン・ジャパンの社長にも就任してもらっています。田中さんからお声がけいただいて、よしやろうと決めたのは、あ、この仕事内容だったらできるな、と思ったからなんです。

—ワイヤードインは、ルワンダでナンバーワンのICT企業ですか?

いえいえ、まだまだです。ルワンダのICT関連企業には優秀な若者が次々と参入してきています。うかうかしていられませんね。

—レックスバート・コミュニケーションズのような日本企業との協業は、どのような意味を持つのでしょうか。

日本人とビジネスをするのは、私たちにとって大きな挑戦です。ビジネスの仕方、開発方法の世界基準を学べるので、それをルワンダ・ローカルのビジネスに応用することができます。日本の企業で、オフショア開発の場を探している方がいたら、ぜひルワンダを試してもらいたいと思います。たくさんの開発者がいますから。

—この会社でどんなことを目指しますか?

いいアプリ、いいサービスとは、より多くの人を幸せにするものだと思っています。ですからいいアプリ、サービスを提供して、より多くの人の生活にインパクトを与えて、この会社を国際的な会社にしたいですね。できれば、世界のトップ企業500社に名を連ねられるように。遠い夢ですが、夢は望まないとかないません。この会社がトップ500に入れば、「ルワンダはジェノサイドの国」というイメージもきっと変わることでしょう。

実は、この出張中ルワンダ人の口から直接「ジェノサイド」という言葉を聞いたのは、これが最初で最後でした。今でも現地でその言葉を使うのはタブーだと聞いていましたが、虐殺のあった1994年にすでに20代だったアランさんの胸中には、k ラボで出会った当時3歳以下だった青年たちとは少し異なる思いも去来しているようでした。

キガリにあるワイヤードインのオフィスで

k ラボとファブラボで、ルワンダの若者たち、ルワンダの起業家たちにたくさん会って、いちばん元気をもらったのは、一起業家でもある私自身かもしれません。自分が起業したてのときの、傲慢なまでの自信と裏腹の不安の交差した、ジェットコースターに乗っているような日々を思い出しました。まっすぐな起業家たちと直接話をして、この国の未来は明るいな、とまぶしく感じました。

それから、ルワンダ人の気質も、よくわかりました。多くの人がシャイで優しくて真面目。本音でコミュニケーションがとれるようになるまで、ちょっと時間がかかるけれど、打ち解けるととてもフレンドリー。確かに日本人と共通する部分がいろいろありそうです。レックスバートの田中社長が、ルワンダにオフショア開発を任せるのも納得です。日本はこれから少子高齢化および人口減少が進み、ICT業界でもますます人材不足が進むでしょう。そのときにルワンダの人たちが私たち日本人を助けてくれるかもしれません。