第4章 - ルワンダ 農業立国編 : まとめ

ジェノサイドから立ち直ったルワンダの希望と課題
JICAルワンダ事務所 高田浩幸所長に訊く

ルワンダ編の最後にJICAルワンダ事務所所長の高田浩幸さんに、ルワンダの経済と日本の協力の関係について、まとめてお話をうかがいました。ルワンダの未来に何が必要なのか、疑問を全部ぶつけてみました。

JICAルワンダ事務所所長の高田浩幸さん

1、ルワンダで日本はどんな協力を展開しているんですか?

1994年のジェノサイド以来、ルワンダへの支援はストップしていましたが、10年たった2005年に事務所を再開しました。ルワンダの特徴は、ポール・カガメ大統領の強いリーダーシップのもと、自国の開発について当事者意識が非常に高いことです。途上国の中には、先進国からの国際協力に対して「待ち」の姿勢で止まってしまうケースがしばしばありますが、ルワンダには、政府も民間も国民も一体となって、一度崩壊した国を明るい未来に連れて行こうという強い意志があります。実際、経済成長率も年率7%程度で、アフリカ諸国ではモーリシャスに次いで、2番目に投資環境が良い国との評価を受けています。

そんなルワンダの自律的な成長の補助になるような支援、それが日本に求められています。

柱は4本。1:経済インフラ(電力、運輸交通)の整備、2:農業、3:水および衛生の改善、4:人材育成です。人材育成に関しては、取材いただいたICT系の人材もたくさん育てようとしています。

2、国際協力の観点からみたときのルワンダの特徴は?

私自身はアフリカに初めて来てから約28年、10カ国以上で直接的に国際協力に関わってきましたが、ルワンダの特徴は、「自ら中期的、長期的なビジョンを持って、そのうえでこんなパートナーが欲しい、こんな支援が必要だ、と発言する。つまり、当事者意識が非常に高い。国際協力の現場では、ドナー=援助する先進国に頼りきりになってしまい、援助が終わると成長も終わる、というケースが少なくありません。ルワンダがジェノサイドの悲劇を越えて、安心安全なまちづくりに成功し、年率7%で成長を続けているのは、まさにその証左ですね。

3、一方で、ルワンダにはいくつかの制約条件があります。まず国土が四国の1.5倍程度と狭い。人口は1200万人と決して多くない。四方を他国に囲まれた内陸国で、海に接していないため、独自にアフリカ以外の国との貿易が難しい。この制約条件をどう考えますか?

おっしゃる通り。通常の途上国がとるような穀物生産を行ったり、下請け工場の集積地になる、といった低価格戦略を、ルワンダはとることができません。このため、本文でもご紹介いただいたような、高付加価値のICT事業や、換金性の高い商業作物の栽培、ゴリラに代表される競争力のある観光事業に特化せざるを得ないわけです。

また、国内市場が小さいので、内需で成長するのが難しい。そこで、ICTに関しては、自国にとどまらず、周辺国を巻き込んだICTサービスの開発が急務となります。実際に、「スマートアフリカ」というアフリカ諸国を巻き込んだICT活用・研究を推進する国際機関を誘致して、国を横断したICTの実験をやっていこうという機運が起きています。

また、ドローンベンチャーを海外から誘致して、世界初のドローン空港の整備の計画が立ち上がったり、小国だからこそ、トップダウンで自在に政策を決定できることを長所として打ち出せば、ルワンダがアフリカでユニークな地位を占めることは決して不可能ではない、と思います。

4、k ラボでも多くの現地の起業家たちにお会いしました。

神戸市と神戸情報大学院大学、それに山中専門家などの尽力もあり、多くの起業家たちが育ちつつあります。ルワンダでは、携帯電話が8割以上普及しており、都市部ではほぼ100%です。

2000年にルワンダ政府はビジョン2020という長期目標を打ち出しました。このとき、すでにITに注力しようというのを明確な国家方針としたんですね。結果、いまルワンダでは国内に光ファイバーが張り巡らされ、インターネットの普及率は98%。ちなみに電化率はいまだに22%。インターネットのほうが電気よりはるかに普及しているんです。限られた資源を投資するための優先順位をちゃんと決めている。ルワンダの急成長の裏にはそんな「選択と集中」がありました。

5、今後ルワンダの成長に欠かせないものは?

ひとつはやはり学校教育ですね。とりわけ大学機関や高等専門教育機関の充実が急務です。

国立のルワンダ大学の教育水準の向上が課題ですね。もうひとつは、k ラボのオフィスの下にも米国のカーネギーメロン大学が分校を持っているように、海外の大学を誘致する必要もさらに出てくることでしょう。

今後、首都キガリの郊外にイノベーションシティを新たにつくり、大学をはじめとする高等教育機関や研究機関を集約する構想も出てきています。

また、ジェノサイドのせいでいまの中堅世代の人材が極端に薄い。このため高等専門学校のような機関で、ICTなどの実践的な専門教育を施す必要がある。

それから、国のサイズも人口も小さい内陸国なので、国内の市場だけでなく、国際的なICTなどの集積地・ハブになろうという取り組みも重要です。ルワンダ政府は、空港の施設充実のために新空港の建設を予定しています。同時に、フラッグシップ・キャリアのルワンダ航空の便数を増やし、アフリカ域内の各国や先進国とのつながりを物理的に増やしつつあります。アフリカの地図を見ればわかりますが、ほぼど真ん中に位置しているんですね、ルワンダは。アフリカそのもののハブ空港になる可能性は地政学的に見れば十分にあり得ます。

6、起業はしやすいんでしょうか?

はい。世銀のランキングでも、ルワンダはモーリシャスに次いでアフリカでは2番目にビジネスがしやすい国です。なにせ、企業登録は、オンラインだと6時間以内でも可能です。若い国、ルワンダは今後国内外からもっともっとベンチャーが立ち上がってくるはずです。JICAとしても今後は、こうしたベンチャーへの協力を効果的に行える仕組みを整えていきたいですね。

ルワンダ農業立国編 まとめ

ルワンダの農業に関わっている日本の起業家の方々の話を伺い、いくつかの事実がわかってきました。

まず、ルワンダは農業に向いている国。

川が多く水に恵まれているだけでなく、標高1500メートルで1年を通してマカデミアナッツやヒマワリなどの収穫ができます。

「千の丘の国」と呼ばれるほどに高低差が激しく斜面の多い地形については、JICAルワンダ事務所の室谷龍太郎さんも言っていたように、日本の「棚田」を思わせる風景で、千枚田のような日本で培われてきた知恵と技術と、ルワンダ人の努力で乗り切れるように思います。考えてみれば、川が多く平地が少ないのは日本と同じ。日本で培ってきた農業の技術が、これからはさらにルワンダでお役に立てるかもしれません。

それに加え、多くの方が指摘していたように、ルワンダの真面目でおだやかな人たちは確かに農業に向いているかもしれない、と感じました。取材前からルワンダは農業国と聞いていましたが、でも、アフリカには他にも農業国が多いし、そこと何が違うのだろうとも思っていました。実際に話を見て聞いてみると、納得です。ルワンダの農業は、土地を耕し作物を育てるタイプの農業であり、ほかの多くの国で行われている採取型の農業とは違うのです。氾濫する川、乾いた高台とうまく付き合って、人の手をかけて農業に取り組んできた歴史があるので、この国には農業が根付くし、これから効率化も進むだろうと思いました。

ルワンダは内陸国なので、農作物を輸出するには不利ではありますが、しかし、マカデミアナッツや花、そしておいしいコーヒーのように、輸送費がかかり高くてもかまわないと市場で評価されるものをつくれば、十分に勝負できるはずです。また、農業の技術が上がって、今は輸入が多い米などを自給できるようになれば、米の購入に使っている外貨を他のところへ回すことができます。ミカフェートの川島さんの、ゴリラという観光資源があるのだから、ゴリラ目当てでルワンダを訪れた人たちに、ルワンダのコーヒーのおいしさを広めてもらおうというアイデアには、なるほどと目から鱗(うろこ)が落ちる思いでした。

ルワンダはいいものをつくるポテンシャルを持っているし、それを広める力もある。農業は、ルワンダという国の基礎体力をつけるために重要な存在なのです。

ルワンダの農業に関わる無私の人たちにも心打たれました。私腹を肥やすことより、その土地に還元したいという佐藤芳之さん、ルワンダの農業に取り組む原田俊吾さん、片田舎のミビリジ村までこれぞというコーヒーの品種を探しに行った川島さん。皆さん、ルワンダと一緒に成長すること、生きることを選んだ人たちばかりです。日本の国際協力が、国と民間がタッグを組むことで、うまくワークすることも知りました。

では、今後、日本はアフリカとどう関わっていけばいいのでしょうか? 最終回は、JICAの北岡伸一理事長に伺います。

首都キガリの夕方。徒歩で帰路につく沢山の人々