鮫島弘子のアフリカビジネス入門2017

まとめ

アフリカ大陸のケニア・ナイロビで初めて開催されたTICAD。
ルワンダのICTと農業のベンチャー。

2つのアフリカを取材して、たくさんの日本のビジネスパーソンにお会いしました。大企業、地方の中小企業、そしてベンチャー。20代半ばの若者から、70代の長老まで。

多様な日本人が、多様な仕事をアフリカで展開し、現地の人々と新しい市場を創ろうとしている。

エチオピアで起業し、いまも試行錯誤を重ねている私自身が、いちばん勉強させていただいた旅でもありました。

連載の最後に、今回の取材でもっとも心に残った言葉を、ここに記したいと思います。

「ケニアで稼がせてもらったんだから、最後はケニアの人に全部返そうと思ったんだよね」

ケニアで単身マカデミアナッツ事業「ケニアナッツカンパニー」を創業し、アフリカ有数のナッツカンパニーに育て上げた佐藤芳之さんは、2008年、この会社をケニア人のスタッフにタダ同然で譲りました。

なぜ? あまりにもったいないじゃないですか?
私の疑問に、笑って、佐藤さんは、こう答えたのです。

佐藤さんはいっさいの未練もなく、次なる地ルワンダでまたいくつものベンチャーを立ち上げました。今回、ルワンダで取材したマカデミアナッツ事業も、フラワービジネスも、バイオベンチャーも、全部佐藤さんがその中心にいます。

私自身、アフリカでビジネスを始めた起業家の1人です。かの地でビジネスをゼロから立ち上げて、あの規模まで育て上げるまで、佐藤さんにどれほどの努力と苦労とがあったのか。自分の経験を鑑みても想像がつきません。

なのに、佐藤さんはあっさりとケニアナッツカンパニーをケニアに「返し」、今度はルワンダでゼロからビジネスをスタートしています。

そしておそらく成功して軌道に乗ったら、ルワンダの人に返すのでしょう。

みんな、アフリカでビジネスをやるんだったら、佐藤さんをお手本にしようよ!……とは、とても言えません。誰もが真似できることじゃない。

でも、「このビジネスはいつかはアフリカに返す」と思っていたからこそ、「ほんとうにいいものをつくって、アフリカの人たちの雇用を増やして、アフリカに新しい市場を創って、楽しんでくれる消費者を育てよう」という明確な目標を持ち、ぶれずに進むことができたのではないか? この佐藤さんの「魂」だけでも、アフリカでビジネスを始めた日本のみなさん、ちょっと真似してみませんか?

大先輩のいさぎのよさに脱帽しながら、私は勝手にそう思っています。

そして、私もちゃんと自分のビジネス、アンドゥアメットの革製品ビジネスをエチオピアの人たちに「返すことができる」よう、育てていきたい。その日が来るまで、あの国、あの大陸に身を置き続けるつもりです。

長い連載、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

この連載を読んで、1人でも多くの人が、アフリカに興味を持っていただければ幸いです。