日経ビジネスonline
ADVANCED INDUSTRIES 2017 イスラエルのテクノロジー最前線 セミナーレビュー 中東のシリコンバレー、イスラエル進出への第一歩
講演:「Join the Best」 –製造の革新 イスラエルのケース GEヘルスケア DCD REHOVOT ゼネラルマネージャー Noam Zilbershtain氏
医療の未来を担う核医学というイノベーション

この手に収まる小さな物体は、ごく微量の放射線を検出して直接デジタル信号に変換できる検出器です。これが核医学の未来であり、ヘルスケアの未来。GEヘルスケアがイスラエルで行っている事業の成果物です。当社は従業員4万6000人で売り上げ180億ドルのビジネスを展開しています。私が最も強調したい数字は2000年以降の特許数3万5800件。これはまさにイスラエルで起きたイノベーションを表すものだからです。当社は1950年にイスラエルに進出し、640人以上の人員で10以上の事業を行っています。事業は、メイクセンターとエンジニアリングセンター、その他サービス提供と大きく3分野に分けることができます。イスラエルはエンジニアリングに非常に強い国であり、当社はCTやMRIのエンジニアリングセンターと、Ultra sound Point of Care and Nuclear Medicineを同国に持っています。一方、メイクセンターにも注目していただきたい。研究開発はモノづくりと一体となって有用なソリューションが生まれるものであり、当社は研究開発とサプライチェーンを併せたメイクセンターをイスラエルに構築しています。

さて、私たちが取り組む核医学とは何でしょうか? CTやMRIが解剖学的に体を見るのに対し、核医学は機能的に体を見る。つまり体の異常を可視化するものです。核医学は、放射性物質を投与して異常のある患部に送り込み、それを検出器でスキャニングすることで、機能を詳細にチェックすることができるのです。高画質画像でがんの転移の詳細を把握し、有効な治療法を検討することが可能になります。

この検出器の心臓部は、3種類の金属から作った結晶でできた半導体であり、440もの洗練された技術の工程で作られます。このイノベーションは20年前にイスラエルのスタートアップ企業から始まりました。その後、いくつかのM&Aを経て5年前にGEが買収しました。そして、GEはこの技術への投資を決めました。これこそが医療の未来だと確信したからです。GEは品質管理・経営手法であるシックス・シグマに基づいて生産工程を徹底的に見直し傾倒してきました。過去5年で製品の重大な故障は発生していません。さらに、生産コストは大幅に改善されました。イスラエルのスタートアップから生まれた医療の未来を担う芽が大きく成長したのです。

イノベーションを起こすために大切なのは、できると信じることです。そして、イノベーションが自分のDNAに組み込まれていると自覚すること。誰もがリーダーであり、イノベーションを担う人材であると認識することです。また、挑戦する勇気と変化への情熱も不可欠です。そのような一人ひとりがチームとなることが重要です。イスラエルにはイノベーションに必要な豊かな土壌が広がっていたのです。

核医学診断装置
講演:イスラエルにおける製造業のイノベーション TDKラムダ 代表取締役社長 矢代 博行氏
本の高品質文化を習得させ、自発的な開発を促す

TDKは東京電気化学工業として1935年に、画期的な磁性材料であるフェライトを製品化するために創業し、東京工業大学の大学発ベンチャー企業の先駆けとして誕生しました。TDKラムダは1978年に創業し1991年にイスラエルに進出しました。TDKラムダの主力事業は交流から直流を作るスイッチング電源であり、この技術なくしては電車も病院も機能しないというものです。イスラエルでは可変電源やサーバーなどで使われる大容量の電源を開発しており、インフラ関連の産業機器市場の顧客が中心です。産業機器市場では長年シェア1位を守っています。技術に頼っていては首位を守るのは難しい。リードし続けるためにはイノベーションと変化が不可欠であり、イスラエルのメンバーはそれを実現してきたと言えるでしょう。

イスラエル進出は、米国のラムダが1973年イスラエルに営業拠点を設立したことに端を発します。1979年に開発・生産拠点を開設し、1991年に日本法人であるネミック・ラムダ(現TDKラムダ)がイスラエルの事業を買収しました。

なぜ、イスラエルだったのでしょう? 目的の一つは先進的な発想と高い能力をもつエンジニアの確保です。当時はロシアや東欧にいたユダヤ人が大量に引き上げてくる時期でした。マーケットインの海外展開が加速する中で、開発と生産を緊密に連携できるイスラエルの高い技術力は魅力でした。また欧州進出を見据え日本との中間地点である同国を橋頭堡(きょうとうほ)にしたいという意図もありました。実際の進出に当たっては、日本の品質文化を理解してもらい、現地の文化と融合させることを基本方針としました。また、現地が主体的に意思決定をするローカルマネジメント、ローカルエンジニアリングを重視し、心に低いパーテーションを作ってお互いの文化・宗教を認め合うことを大切にしました。

当初は経営の立て直しが課題でした。日本向けの新製品開発で品質文化の習得に努めました。その後自発的に画期的な大容量可変電源の開発に成功し、収益が改善。マネジメントとエンジニアリングのローカル化が進み、中国のグループ工場でのモジュール生産が始まるなど、グループ相乗効果の創出と新規ビジネスへの動きも出るようになってきました。イスラエルの能力活用はTDKラムダグループの重要な戦略の一つとなっています。

KFS(成功のための重要な要素)としては、「技術力を生かしたコア製品の開発」「人と人との信頼関係の構築」「イスラエルの人たちに任せること」「グループ連携による技術、QCD、販売の相乗効果」です。個人的には日本の押し付け的な指導や管理はかえってブレーキになると実感しました。一方、ローカルマネジメント化したことで自律的・主体的な活動が活発化し、結果的に先進技術が生まれました。マネジメントを信頼する、信頼し合える関係の構築が大切です。イスラエル進出で得たものは、先端技術開発力と高収益製品もさることながら、なによりも「人」と「縁」だったのです。

図版
NEXT パネルディスカッション:日系グローバル企業との連携で相乗効果を生むイスラエルのイノベーション・エコシステム

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お問い合わせ先:イスラエル大使館 経済部
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