:D3 WEEK 2016 REPORT

海外メーカーの事例から読み解く良質なリードを生み出す仕組みのデザイン手法とは

デジタルマーケティングの活用が前提となり、より良質なリードを生む仕掛けづくりに悩む担当者も多い。このセッションでは、先行する海外メーカーの取り組みを例に、そのデザイン手法が明かされた。

株式会社ミックスネットワーク デジタルマーケティングアーキテクト 渡部知記氏

株式会社ミックスネットワーク
デジタルマーケティングアーキテクト
渡部知記氏

コンテンツありきのデジタルマーケティング

 企業のマーケティング担当者にとって、デジタルマーケティングへの取り組みは、すでに必須のものとなった。7月29日のセッションに登壇したミックスネットワークの渡部知記氏は、「デジタルを活用して顧客とどう向き合い、どのような価値を提供できるか」を考えることが急務であると説く。

 渡部氏によれば、マーケッターの大きな悩みは「いかに集客するか?」であるという。これに対し強力な答えとなりうるのが、「リードを生み出す仕掛けづくり」だとする。

 ただしそれは「ただの集客ではなく、その先の価値を生み出す“良質な”リードであることが重要」だと強調する。そういった良質なリードを生み出す仕掛けづくりに成功した海外メーカーの先行事例をもとに、そのデザイン手法に迫るのがこのセッションのメインテーマである。

 渡部氏の挙げたデータによれば、2015年の国内デジタルマーケティングサービス市場は、前年比30.8%増の272億円に上るという。大きく成長する市場に合わせるように業界再編も進み、海外ではIBMがドイツのデジタルエージェンシーであるアペルト、ecx.ioを相次いで買収し、話題となった。国内でもアクセンチュアが制作会社であるIMJを子会社化したり、電通が電通デジタルを、博報堂が博報堂DYデジタルを新たに設立したりするなど、めまぐるしい動きを見せている。コンサルティング、IT、エージェンシー、Web制作会社などがデジタルマーケティング市場へ次々と参入し、なかでもコンサルティング企業とエージェンシー企業の動きが激しいという。

 そんな成長市場において、渡部氏は、米国のマーケッターが注目しているトレンドをSmartInsight社の調査結果から紹介。「ビッグデータ」や「マーケティングオートメーション」などのホットワードを抑えて最重視されているのが「コンテンツマーケティング」であることを指摘した。さまざまな施策も、マーケティングオートメーションの活用も「結局、すべてはコンテンツありき」であることを、マーケッターは気づいているのだ。

海外メーカーによるコンテンツマーケティング事例

 では、海外メーカーはデジタルマーケティングにどのように取り組んでいるのだろうか? 渡部氏は複数の事例を取り上げて解説した。

 某アナログ半導体製造会社では、製品ページに、スペックはもちろん、製品比較や購入のための情報、サポート窓口やトレーニング資料など、ページを訪れたエンジニアが必要とするであろうあらゆるリソースにアクセスできる構成になっている。またFacebookやTwitterで同じ内容を投稿し、そこから同社のエンジニアと訪問者が交流できる専用サイトへ誘導する仕組みがある。

 また、別の会社では、製品スペックを掲載するだけでなく、どう使うべきかを解説している。そのため検索エンジンで「半導体部品名+使い方」など、曖昧なキーワードを入力してもこのサイトがトップに表示されるので、リードを呼び込む入り口としての大きな効果が期待できるという。さらに、無料サンプルの請求ページへとリンクするなど、訪れたエンジニアにとって有益なつくりとなっている。渡部氏は、「単純な製品情報だけでは、こうした有用なコンテンツには勝てない」と明言する。

 これら海外メーカーの取り組みは、
・顧客の興味・関心に合わせたカテゴリー分け
・応用範囲などの周辺情報の提供
・製品情報へのアクセスや、サンプルの申し込みがしやすい
・メーカーのエンジニアのサポートを受けられる
といった点が特徴として挙げられる。つまりは、「研究開発者がストレスなくアクセスでき、明日にでも開発を始められる至れり尽くせりなつくり」であり、この点だけをとっても、国内メーカーのサイトには、まだまだ改善の余地があると指摘する。

 さて、ここまで紹介されたコンテンツ例は、実は内容に関しては「業界内のエンジニアであれば常識的なこと」だ。であれば「なぜ、わざわざコンテンツのひとつとして用意する必要があるのか?」という疑問を持つかもしれない。その答えを、渡部氏は自動車業界を例に示した。

 電気自動車やコネクテッドカーなどの開発により、いまや「タイヤのついたコンピューター」と揶揄されるほど、製品においてコンピューターが占める割合は大きくなっている。そのため旧来の業界内エンジニアだけでなく、家電やITなど異業種から参入した人材が活躍する環境に変化しつつある。他業界から参入する未経験のエンジニアにとっては、従来の常識を知らないことは多いにありえることだ。

 懇切丁寧なコンテンツは、そうした新規参入のエンジニアをすくいとり、情報と知識を提供することで、自社製品の利用へとつなげるシステムとして機能する。であれば「自社にとって当たり前となっているコンテンツを見直すことで、ビジネスチャンスを広げる可能性があるのでは」と渡部氏。

 続いて紹介されたのは、某IT企業サイトの例。従来のように製品主体ではなく、製品を使うことでビジネスにもたらす価値を、ストーリーベースで紹介するコンテンツを中心に構成されている。「こうした構成は既存のコーポレートサイトでは実現の難しい面もあるが、特設サイトを用意することなどで対応できる」と渡部氏は提言する。

動画コンテンツで見るB2C・B2Bで求められるものの違い

 さらに、2つの動画コンテンツを取り上げ、B2CとB2Bではコンテンツへの要求が異なることを解説した。
・B2C…商品やサービスそのものよりブランドイメージを、キャンペーンなど企画のおもしろさで短期的に訴求
・B2B…商品やサービス自体の価値や魅力を長期にわたって訴求

 2つの例を通し、渡部氏は「誰がコンテンツを必要としているのか」を意識する重要性を説いた。対象者や顧客ステージにより求められるコンテンツは変わるため、それらに対応したコンテンツの提供が必要だという。たとえ作り込まれたリッチなコンテンツであっても、顧客目線から離れていてはリードを呼ぶ効果は期待できないだろう。ここで例として挙げられたのが、某自動車メーカーのサイト内にある、安全性について謳うページだ。技術シミュレーションやバーチャル人体モデルでの実験結果などを動画付きで紹介し、コンテンツとしては充実しているといえる。しかし、顧客から実際に求められる安全性に関する情報は、たとえば「赤ちゃんや小さな子どもの安全な乗せ方」「ウィンドーロックの事故と注意点」といった、暮らしに生かせる具体的な内容だ。求められる情報から遠い場合、検索にもヒットしない可能性が高い。

 セッションの終盤、渡部氏は「デジタルマーケティングで自社サイトを活用するためには、顧客目線でのシナリオを考える必要がある」と総括した。それには、
・顧客が何に困っており、会社としてどんな貢献ができるのか?
・顧客が製品を導入する際、どのような人たちが関わっているのか?
・顧客が製品を理解するために必要なステップは?
・顧客が製品を比較検討できる仕組みになっているか?
といった問いかけが役立つという。

 ともすれば自社目線に終始しがちなデジタルマーケティングにおいて、海外メーカーの顧客重視のコンテンツづくりはおおいに参考になりそうだ。

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