2016年9月28日(水)から30日(金)の3日間、「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016」が開催される。ソーシャルイノベーションとはそもそも何か。企業にとってどんな意義があり、なぜ今必要とされているのか。本イベントのプロジェクト委員を務める京都産業大学の大室悦賀氏と日本財団の青柳光昌氏が語り合った。

イノベーションの経済的側面に焦点が当たりすぎている

CAPTER 01 イノベーションの経済的側面に焦点が当たりすぎている

青 柳  ソーシャルイノベーションという言葉をどう捉えていますか?

大 室 ビジネスの世界でイノベーションというと、テクノロジーを活用した技術革新といった意味合いが強いと思います。しかし、イノベーションとは本来、新たな価値を生み出して私たちの社会や生活を変化させるものです。つまり、イノベーションはそもそもすべてソーシャルなんです。
 それにもかかわらず、わざわざソーシャルイノベーションといわなければいけないのは、イノベーションの経済的側面にあまりに焦点が当たりすぎているからです。社会性を無視し、効率性を高めて競争に打ち勝つことばかりを志向する企業のあり方に問題があると感じます。

青 柳 イノベーションが経済に寄りすぎてしまっている現状は、小手先の対応策では変わりません。社会的な側面をきちんと備えたイノベーションが生まれる土壌をつくることが「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016」の意義だと考えています。

社会性を備えたビジネスが他社との差別化になり、独自の強みにできる

CAPTER 02 社会性を備えたビジネスが他社との差別化になり、独自の強みにできる

大 室 ソーシャルイノベーションを起こすなら、企業はまず、経済と社会を二項対立で捉える考え方を改める必要があります。昨今、事業活動を通じて社会的な課題を解決していくCSV経営が注目されていますが、部分戦略として実行してもうまくいかないでしょう。
 CSR活動も同じです。儲かっているときだけCSR活動を熱心にやる企業がありますが、そうではなく、最初から社会に配慮した儲け方をすればよいのです。経済に重きを置いて規模の拡大と効率性の追求ばかりに注力していると、みな同じビジネスモデルになってしまいます。
 最も重要なのは、経済と社会を統合することです。そこに新たなビジネスチャンスがあり、イノベーションが生まれます。オーガニック食品を扱う米国のホール・フーズ・マーケットや英国の家庭用品メーカーであるユニリーバなど、世界にはそうした企業が数多く存在しています。

青 柳 経済と社会を分けて効率性だけを求める方が楽ですよね。一方、統合は簡単ではありません。乗り越えるべきさまざまなハードルが出てきますが、そうした制約のなかでこそイノベーションが生まれます。

大 室 おっしゃる通り、社会性を加えた途端にビジネスは非常に難しくなります。だからこそ他社との差別化になり、独自の強みにできるわけです。
 伊那食品工業やサラダコスモ、群言堂など、どんなに儲かろうと社員や地域が幸せにならないようなことは絶対にしないという企業が日本にもたくさんあります。そのなかで、例えば伊那食品工業は50期以上連続で増益中です。そうした企業には良い従業員が集まり、結果として業績を伸ばしていくことができるのです。

青 柳 よくライフワークバランスといわれますが、バランスではないんですよね。仕事と生活が重なり合う企業が、これからは働く場として選ばれてくると思います。

イノベーションを生むには情報を整理しないあいまいさが必要

CAPTER 03 イノベーションを生むには情報を整理しないあいまいさが必要

青 柳 どうすればイノベーションは生まれるのでしょうか。

大 室 無駄なところにこそイノベーションは存在しています。ですから、無駄なものをどんどんそぎ落として効率化していくPDCAサイクルからは生まれません。過去の経験から排除されるものの中に、実はイノベーションの種があるんです。
 大切なのは、情報を無理に整理せず、あいまいなままにしておくことです。経験に則って自分が分かるように整理すると、過去の延長線上にない情報はその瞬間に排除されます。そうすると、気づくべきヒントを逃してしまうわけです。きれいな形ではなくて、でこぼこの岩のような形のまま情報を置いておくことがイノベーションを生む秘けつといえます。

青 柳 確かに、あいまいさを持っていないとソーシャルイノベーションのリーダーは務まらないかもしれません。あらかじめきちんと分析していて、ゴールはこれ、やり方はこうというリーダーは、効率は良いですがイノベーションは生まれないですね。
 社会のためにという大きな目的を持ち、社会をよくするためにいろいろな人と話をしながら一つの方向へ持っていく。それがこれからのリーダーに必要な素養ではないでしょうか。

大 室 そのあいまいさを受け入れて、「なんか面白そう」「社会の役に立ちそう」といった主観的な目線でソーシャルイノベーターを選ぶのが、今回のイベントの最も面白いところだと思います。シリコンバレーにしてもボストンにしても最初はみんなそうなんです。「これをビジネスでやったら大化けするかもしれない」というすごくあいまいで感覚的なものなんですよ。

青 柳 確かに、10名のソーシャルイノベーターの選出の理由は説明しにくいですね。分析して評価するのではなく、単純に面白くて応援したいと思える人たちを選んだからです。

大 室 事業がある程度軌道に乗ればさまざまなところから資金調達ができますが、そうした初期段階から支援を行う日本財団の役割は非常に大きいと思います。本当の意味で社会に目を向ける企業がどんどん増えていけば、日本はあっという間に変わっていくでしょう。そのきっかけになりうる「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016」に、私も精一杯協力させていただきたいと思っています。

日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016 詳細はこちら日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016 チケット申し込み

日本財団

9月28日~30日開催
日本財団ソーシャル
イノベーションフォーラム
2016

日本財団は、これまでのアプローチでは解決が困難な社会課題に対し、ソーシャルイノベーションのハブとしての役割を実行するため、各セクターからの参加を募った大型イベント「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016」を開催
時期:2016年9月28日~30日
場所:虎ノ門ヒルズフォーラム
参加人数:延べ2,200名

フォーラム詳細

日本財団とは

ボートレースの収益金や寄付金を活用し、子ども、障害者、高齢者、災害などの分野で社会貢献活動を行っている公益財団法人。国内外の様々な社会課題解決に向け、企業や行政機関との連携事業にも力を入れている。

日本財団公式サイト

CONTENTS