3日間で約2000名の来場者数を見込む「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016」は、社会課題とその解決をテーマにした国内最大規模のイベントだ。連載3回目の今回は、日本財団の青柳光昌氏が各プログラムの注目ポイントを解説。後半では、分科会のプロデューサーがビジネスパーソンにとって必見のセッションを紹介する。

日本財団青柳氏に聞く3日間のスケジュールと注目ポイント

CAPTER 01 日本財団青柳氏に聞く3日間のスケジュールと注目ポイント

1日目 「基調講演」と「ソーシャルイノベーター紹介」

 イベント初日は、「基調講演」と「ソーシャルイノベーター紹介」の2つのプログラムで構成されている。基調講演を務めるのは、衆議院議員の小泉進次郎氏だ。

 「小泉さんは、人口減少という日本の大きな課題に危機感を持ちつつも、悲観することなく、具体的なアクションによって豊かな社会を次世代に引き継いでいこうという考えをお持ちです。まさに今回のイベントの趣旨に合致するものですから、基調講演をお願いするのにこれほどの適任者はいません。政治家という立場で日本の将来を担っていく小泉さんがどんなお話をされるのか、私自身も楽しみにしています」(青柳氏)

 基調講演の後、10組11人のソーシャルイノベーターが紹介される。ソーシャルイノベーターとは、社会課題の解決に向けた新たな発想と明確なビジョンを持ち、活動を推進していくリーダーのこと。日本財団の公募により集まった225件の中から約2カ月の選考期間を経て選ばれた彼らには、上限1000万円の事業資金が提供される。

 「本イベントのメインテーマは、『にっぽんの将来をつくる』というものです。ソーシャルイノベーターの選考でも、5年後や10年後の社会像を明確に描けているかどうかを重視しました。日本の将来を切り拓いていく強い意志と実行力を兼ね備えた10組11人からは、社会課題の現状と最前線の取り組みをうかがい知ることができます」(青柳氏)

2日目 「分科会」と「ソーシャルイノベーターによるブース発表」

 2日目は、分科会とソーシャルイノベーターによるブース発表が同時進行で行われる。分科会はプレゼンテーションや対談、パネルディスカッションなど約30のプログラムを実施。東京大学第28代総長の小宮山宏氏、東京大学名誉教授の岩井克人氏らが登壇し、ソーシャルイノベーションの意義を改めて考察する「ソーシャルイノベーションという方法」など、社会活動に関心のある人にとって興味深いセッションが目白押しだ。一方、ブース発表はソーシャルイノベーターと来場者のコミュニケーションの場として用意されている。

 「ソーシャルイノベーターには、自分たちの事業のために自由にブースを使ってくださいと伝えてあります。事業を一緒に行う仲間を増やしても良いですし、新しいアイデアを取り入れる場にするのも良いでしょう。来場者にとっては、最前線の取り組みに直接触れられる貴重な機会です。双方にとって有意義な場になることを期待しています」(青柳氏)

3日目 「分科会」と「シンポジウム」

 3日目は午前に分科会、午後に3部構成のシンポジウムが実施される。シンポジウムの第1部では、プレゼンテーションと有識者との質疑応答を通じて、ソーシャルイノベーターがあらためて事業プランを披露。「日本をソーシャルイノベーションする」と題した第2部のパネルディスカッションをはさみ、第3部では特別ソーシャルイノベーターの選出が行われる。選考委員と来場者の投票によって選ばれる特別ソーシャルイノベーターには、1億円程度の大規模な支援が3年間にわたり提供される予定だ。

 「特別ソーシャルイノベーターの選出では、10組11人のソーシャルイノベーターを選んだときと同様、日本の将来を変えるビジョンの明確さと意志の強さが問われることになるでしょう。今回は日本財団が事業資金を提供しますが、本イベントは今年だけでなく毎年行っていく予定です。そして、来年以降は希望があれば企業も資金支援の手を挙げられる場にしたいと考えています。企業セクターの来場者の方々には、事業の収益性や継続性の観点でもソーシャルイノベーターに注目してほしいと思います」(青柳氏)

分科会プロデューサーに聞くビジネスパーソンにとって注目のセッション

CAPTER 02 分科会プロデューサーに聞くビジネスパーソンにとって注目のセッション

 「分科会は『Vision-新しい社会の羅針盤-』『Entrepreneurship-社会変革の担い手-』『Collective Impact-集合知の新次元-』『Solution-ソーシャルイノベーションの最前線-』『Ecosystem-イノベーションを生み出す国へ-』というテーマを設定しています。この5つの要素がすべて合わさって起こるのがソーシャルイノベーションであるという仮説のもと、バランスを考慮して分科会の全プログラムを設計しました」。こう語るのは日本財団の花岡隼人氏だ。約30の分科会の中から、ビジネスパーソンにとって必見のセッションを紹介する。

  • "2枚目の名刺"が新しい社会を創る――
    ビジネスとソーシャルをつなぐ最先端の仕掛け

     本業以外に"2枚目の名刺"を持つ。NPO法人「二枚目の名刺」は、「社会人が本業以外に2枚目の名刺を持って、組織の枠を越えて新しい社会を創る活動を実践する」という新しい生き方を提案している。

     二枚目の名刺は、社会人がプロジェクトチームを編成し、NPO等と一緒になって、社会課題の解決に向けた事業推進に取り組むサポートプロジェクトを展開している。普段は接点の少ないビジネスパーソンと社会貢献活動に従事する人たちの交流の場ができることで、新たな視点を身につけ、互いに成長し、社会にインパクトをもたらすことを目指している。

    既に総合人材サービス業の、株式会社インテリジェンスをはじめ複数の企業で導入実績があり、イノベーティブな人材を育成するプログラムとして高い注目を浴びている。

     ビジネスセクターとソーシャルセクターはどのように協働できるのか。なぜ今、企業や行政の注目が集まっているのか、具体的な事例を紹介する。

  • 成長を加速する次世代の資金調達――
    社会的インパクト投資とベンチャー・フィランソロピーの可能性

     社会的インパクト投資とは、経済的なリターンと社会的なインパクトの両方を求める投資行動を指す。「2008年のリーマン・ショックは、金融本来の役割が見直されるきっかけになりました。自分たちの存続が危ぶまれるほど大きな危機を経験した金融機関が、社会的な価値を世の中に生み出すためにお金の流れをつくるという原点に立ち返ったのです。金融の価値が再定義された結果、世界中で社会的インパクト投資が加速しています」と日本財団の工藤七子氏は説明する。

     金融機関のみならず、事業会社も社会的インパクト投資を意識し始めている。社会課題の解決とともに、経済的価値を追求するCSV経営は、その表れといえるだろう。日本財団の藤田滋氏は、「社会的インパクト投資を推進している英国のロナルド・コーエン氏は、21世紀の投資はリターンとリスクに、インパクトの観点が加わるといいました。社会的インパクトはビジネスの世界でも資源配分の新たな判断基準になりえます。リターンやリスクだけにとらわれない、新たな経済モデルが生まれる可能性を秘めた概念です」と語る。

     本プログラムでは、欧州の最新動向と日本の先駆的事例をもとに、その可能性と課題、今後のアクションが議論される予定だ。

  • 見えない価値を可視化する――社会的インパクト評価の未来

     社会活動が生み出す価値は見えにくい。売り上げや利益のような財務情報と異なり、数字で表しきれないことが多いからだ。社会的インパクト評価はこれを可視化する試みであり、さまざまなセクターで議論されている。「ソーシャルセクターはもちろんですが、企業の関心を非常に強く感じます」と藤田氏は明かす。背景にあるのは、株主をはじめとするステークホルダーに対する説明責任だ。

     「昨今、CSR活動をどう本業と関連付けて取り組んでいくかが多くの企業の課題になっています。企業の担当者は、非営利の取り組みが長期的な企業価値の向上につながることをステークホルダーに示す必要があるのです。社会に対してどれほどのインパクトを生み出したかという新たな評価指標の重要性は、今後も増していくと考えられます」(藤田氏)

     本プログラムでは、第一線で社会的インパクト評価に取り組む事業者や資金提供者・仲介者らが評価指標の実現に向けた課題と対応策を議論する。

 ビジネスパーソンが本イベントに参加する意義のひとつは、社会の流れを俯瞰的に見られることと花岡氏は話す。「私自身の経験でもありますが、企業に勤めていると目の前の利益に追われがちで、自分の視点をふっと引いてみる機会が意外と少ないと思います。分科会にいくつか参加するだけでも、きっと世の中の大きな流れを感じていただけるはずです。社会の動きを俯瞰的に見ることで自分の常識が変わったり、認識の壁を越えたりすることもあります。それが今回、私たちが企業セクターの方々に提供できる一番の付加価値だと考えています」(花岡氏)