2016年9月28日(水)から30日(金)にかけて、「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016」が開催された。高度化・複雑化する社会課題の解決を目指し、セクターごとの枠組みを越えて「にっぽんの将来」を議論する本イベントには、3日間で延べ約2200人が参加。最終日の午後に行われたシンポジウムの模様を中心にレポートする。

複雑化する社会課題の解決にはセクター間の連携が欠かせない

CAPTER 01 複雑化する社会課題の解決にはセクター間の連携が欠かせない

 複雑化する日本の社会課題は、もはや従来の行政主導型アプローチでは対応しきれない。これからは行政や企業、NPO、研究機関などが有機的に連携し、一体となって解決に取り組んでいく必要がある。各セクターが手を取り合い、それぞれの得意分野を生かした新たなアクションのきっかけとなるべく、「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016」が開催された。

 本フォーラムに先立ち、日本財団はソーシャルイノベーター支援制度を創設した。ソーシャルイノベーターとは、革新的なアイデアと明確なビジョンの下でセクターを越えたチームを組成し、社会課題の解決に向けた活動を推進していくリーダー。公募により全国から集まった225件から選ばれた10組11人のソーシャルイノベーターには、選出と同時に上限1000万円の事業資金が提供された。

 本フォーラム最終日のシンポジウムでは、10組の中から3組の「特別ソーシャルイノベーター」が選定された。社会により大きなインパクトを与えると期待される3組に対し、日本財団から上限1億円×3年間の事業支援が行われる予定だ。

2200人の参加者のうち約4 割がビジネスパーソン

CAPTER 02 2200人の参加者のうち約4 割がビジネスパーソン

 3日間の参加者数は延べ2200人に上った。このうち、約4割は企業セクターに所属するビジネスパーソンだったという。従来、こうしたイベントの参加者はNPOや自治体の関係者が大半を占めていた。CSRやCSVの考え方が浸透するなかで、いかに社会課題と向き合うかについて企業の関心が高まっている表れといえるだろう。

 ジャーナリストの津田大介氏とNHKアナウンサーの伊東敏恵氏をコーディネーターとし、5人のパネリストを招いたシンポジウム第2部のパネルディスカッション「日本をソーシャルイノベーションする」でも、社会課題とビジネスの関係性について議論がなされた。

 パネリストとして登壇したヤフー株式会社 社会貢献推進室長の妹尾正仁氏は、「規制緩和や減税など、企業は基本的に“小さな政府”を求めます。ただ、そうすることで解決されない社会課題が出てきます。その責任の一端を担う存在であることを、企業自身が認識すべき時期に来ているのではないでしょうか。そのうえで、自分たちの会社が社会に存在する意義を改めて考えて行動に移すことが大切です」と話した。津田塾大学教授の萱野稔人氏は、「ビジネスの成功と社会課題の解決は、ニーズをいち早くつかむことが重要という点で共通しています。両者を切り離して考える必要はありません」と同意した。

分科会ピックアップ「ソ―シャルイノベーションという方法」

飽和の時代が社会に革新を求める

東京財団CSR委員会座長/東京大学第28代総長の小宮山宏氏、東京財団CSR委員会座長代理/東京大学名誉教授の岩井克人氏、東京財団研究員・政策プロデューサーの亀井善太郎氏が登壇し、参加者とともにソーシャルイノベーションの理念、原理、価値について深堀りした。

 「現代は極めて特殊な時代」と小宮山氏は語る。ひと、モノが飽和状態となった一方で、人類は量的な不安から解放され、質の高い社会を目指すステージに到達したという。岩井氏は、「世の中が豊かになったことで、産業が目に見えない情報やサービスに移りました。社会的認知や尊敬、ネットワーク参画への欲求――。そうしたお金で買えない“何か”が社会を動かし始めています」と見解を示した。

 本分科会に参加したソーシャルイノベーターの一人、手島大輔氏は、「ソーシャルイノベーションのプレーヤーが少ないのは、その活動と自身の生活の両立の難しさが原因では」と質問。岩井氏はフィンテックを例に挙げ、「資金調達の手段が多様化し、社会企業家が融資を受ける環境が整ってきています」と答えた。出資側の意識も徐々に変化してきており、「日本財団による本フォーラムの開催はまさにその表れといえます」と亀井氏は述べた。

これから10 年、20年と続くイベントにしていきたい

CAPTER 03 これから10年、20年と続くイベントにしていきたい

 参加者による投票も加味した選考の結果、特別ソーシャルイノベーターとして最優秀賞に輝いたのは、学校魅力化プラットフォーム共同代表の岩本悠氏だ。優秀賞には、Collective for Children共同代表の河内崇典氏・高亜希氏、Next Commons Lab代表の林篤志氏が選ばれた。

 岩本氏は、学校を核とした地方創生の革新的モデルを構築。受賞の理由は、典型的な過疎地である島根県海士町の高等学校の再生に成功したこと。そして、そのモデルを全国にスケールアウトさせつつあることだ。

 河内氏と高氏は、子どもの貧困をなくし、生まれてから社会に出るまで当たり前に地域で暮らせる社会を目指す。希薄になりがちなNPO同士の連携のあり方に一石を投じ、全国規模の協力体制を築く取り組みが支持された。

 林氏は、ポスト資本主義社会の実現を描く。共通の価値観をベースにした新しいコミュニティづくりが評価されるとともに、こうした壮大なビジョンを持つ人が日本にもっと出てきてほしいという期待を込めて選ばれた。

 本フォーラムの統括を務めた日本財団の青柳光昌氏は、「初開催にもかかわらず、これほど多くの人に参加いただいたことを心強く感じるとともに、日本の未来は明るいという確信を得ました。これから10年、20年と続くイベントにしていきたい」と話す。ソーシャルイノベーションのハブとして、日本財団は今後も大きな役割を果たしていく。