日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016 第6回 学校を核にした地域創生モデルを全国へスケールアウト

3日間で延べ約2200人の参加者が集まり、盛況のうちに幕を閉じた「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016」。連載の最終回を飾るのは、特別ソーシャルイノベーター最優秀賞に輝いた学校魅力化プラットフォーム共同代表の岩本悠氏だ。当事者の視点で本イベントを振り返ってもらうとともに、今後の展望について聞いた。

立場や役割を越えて支え合いコレクティブな力が生まれた

CAPTER 01 立場や役割を越えて支え合いコレクティブな力が生まれた

 「多くの応募の中から特別ソーシャルイノベーター最優秀賞に選ばれたことを、とても嬉しく思っています。これまでは取り組みの意義をなかなか理解してもらえないことが多かったのですが、今回評価をいただいたことで『重要な取り組みだから協力しよう』『自分たちも関わりたい』といった雰囲気が広がってきました。これから動きが加速していく手ごたえを感じています」。学校魅力化プラットフォーム共同代表の岩本悠氏は、受賞の喜びをこのように語る。

 学校を核にした地域創生のスケールアウト(拡散・増殖・普及)――。それが学校魅力化プラットフォームの取り組みだ。岩本氏は、人口減少や少子高齢化、財政難といった課題の超先進地である島根県の離島、海士町(あまちょう)へ10年前に移住。廃校寸前だった隠岐島前(おきどうぜん)高校を国内外から生徒が集まる人気校にV字回復することで、地域の活性化を果たした。そして今、その革新的モデルを全国の過疎化に苦しむ地域に展開することを目指している。

 学校魅力化プロジェクトを進める上で重要なポイントは、「閉鎖的な学校システムを地域社会に開く」ことにある。人材や自然、文化、産業などの地域資源を活用し、子どもたちが学校の外に出て社会に関わることで、学力だけでなく人間力を高められるような教育環境をつくる。これはつまり、地域全体を学びの場にするということだ。その実現にあたっては学校や行政、PTA、住民といったさまざまな関係者がチームとなり、協力して取り組むことが欠かせない。

 こうしたプロジェクトの性質上、岩本氏とともに事業を推進するメンバーのバックグラウンドも幅広い。島根県職員、国の教育関係者、民間企業の出身者、NPO代表、大学教授、ジャーナリストなど多彩な顔ぶれが集まっている。今回のイベントに向け、改めてメンバー同士で腹を割って話し合ったことで結束が強まったと岩本氏は話す。

 「それぞれが思い描く未来を重ね合わせ、多面的に検証することで、重層的なビジョンをつくることができました。みんな本業の仕事がありますから、時間が合う早朝や深夜にオンラインで会議をしたり、休日に集まったりして意見を交わしました。イベントの1カ月前くらいからはプレゼンの準備などで本当に忙しくなりましたが、共通の目的に向かって立場や役割を越えて支え合ったからこそ、コレクティブな力が生まれたと思っています」(岩本氏)

 セクターを越えた協力体制を構築する姿勢は「みんながみんなを支える社会をつくる」という今回のイベントの趣旨にまさに合致するものであり、高い評価につながった。岩本氏は、「イベント期間中にも、今後の取り組みにつながるような人たちとの出会いがたくさんありました。他のソーシャルイノベーターの方たちともこれから一緒にできることがありそうです。とても刺激的な3日間でした」と振り返る。

社会課題の解決に取り組む子どもたちのための舞台を用意したい

CAPTER 02 社会課題の解決に取り組む子どもたちのための舞台を用意したい

 学校の魅力化を通じて地域の人口減少に歯止めをかけ、逆に地域留学や教育移住、Uターンといった人の流れを生み出す。この取り組みを全国に広げていくにあたり、今後は民間企業との連携を強化していきたいと岩本氏は話す。

 「社会課題の発見・解決を目指すプロジェクト型学習の一環として、子どもたちと地域企業を結びつけたいと思っています。企業が直面する課題に子どもたちが参画する機会を用意できれば、貴重な学びの場になるでしょう。人材不足に悩む企業にとっても、地元の学生と接点を持つことの意義は小さくありません。地域に根差した企業の魅力や可能性を知るきっかけになり、子どもたちの将来の選択肢を広げることにもつながるはずです」(岩本氏)

 特別ソーシャルイノベーターに選ばれた岩本氏ら3組には、日本財団から上限1億円の資金が3年間にわたって提供される。その資金を元手に、岩本氏は全国の市町村で学校魅力化プロジェクトを立ち上げていくつもりだ。

 「今後3年間で、100地域のチームづくりを支援します。その際、『あの人だからできた』『あそこだからできた』と言われるようなモデルでは絶対に通用しません。そこで、学校を核にした地域創生を推進できる人材がどんどん育っていく仕組みづくりを計画しています。人材養成プログラムを教員研修などに組み入れるほか、カリキュラムづくりのノウハウをパッケージ化することで、普遍的かつ持続的な取り組みにしていきます」(岩本氏)

 さらに、そうして育った子どもたちを評価するシステムの開発を進める。これは従来の狭い意味での学力評価ではなく、社会に対する当事者意識や課題発見・解決力、協働力、共感力といった能力を測る新しい評価基準だ。岩本氏は、「子どもたちが身につけた力が社会にとってどれほどの価値があるのか。分かりにくい成果を“見える化”することで、将来的には入試のシステムにも組み入れていきたい」と意気込む。

 学校魅力化プラットフォームが推進する学校システムの改革は、次代のソーシャルイノベーションの担い手を育てる取り組みでもある。岩本氏は、社会課題の解決を目指す子どもたちのための舞台として、「ユースイノベーター甲子園」や「ユースイノベーターオリンピック」の開催構想を練っているという。課題先進国と呼ばれる日本を“課題解決先進国”に――。日本財団の支援を追い風に、岩本氏の挑戦は続く。