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“らしさ”の数だけ働き方を創っていきたい - TOP INTERVIEW - すべての人に役割のある社会の創造を目指して
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クルートホールディングス傘下で、人材派遣事業をはじめ、人材紹介事業、アウトソーシング事業を展開するリクルートスタッフィング。全国42拠点の事業所を構え、約95万人の登録スタッフを抱えている。今年4月、同社代表取締役社長にリクルートホールディングス執行役員を務める柏村美生氏が就任。リクルート入社後、29歳にして「ゼクシィ」の中国での販路開拓を目指して上海に6年間単身赴任するなど、持ち前の行動力を発揮してきた同氏に、これからのビジョンを聞いた。

社会を変える大きな可能性

――ブライダルや美容、出産・育児など多様なジャンルで事業サービスを展開してきましたが、人材サービス事業にはどのような可能性を感じていますか。

人材サービス事業に必要なのは「未来の習慣を創る」ことであり、当社はそれができる会社だと思っています。今は現実的でないと思われる働き方も、未来では当たり前のことになるはず、そう信じて取り組んでいます。私は大学時代から「すべての人に役割のある社会を創る」という目標を持っています。多様な働き方のスタイルを生み出すことで、この大きな目標に近づけると考えています。

――「すべての人に役割のある社会を創る」という目標を掲げた経緯は。

大学で社会福祉学を学び、ボランティア活動をしていく中で、障がいのある方が自分の力で成し遂げたいという思いが、環境によって制限されている現状を目の当たりにし、自分の使命について悩みました。ターニングポイントは筋ジストロフィーの方が仙台を旅行するのをお手伝いした時。身体障害者手帳を持っていても拝観料が必要なお寺があり、その方は拝観を諦めてお寺の周りを一周することを選びました。車いすを押しながら、このまま福祉の世界に入っても、障がいのある方が活躍できる社会づくりのために私は何もできない。社会の仕組み自体が変わらない限り、福祉はよくならないと強く感じました。そして、世の中の仕組みを創る側にいきたいという思いから民間企業に就職することにし、ライフイベントに関する多彩なビジネスを展開するリクルートを就職先に選びました。一人ひとりに合った働き方を創出するという当社の事業は、まさに私の使命と合致するものです。

――社長就任から数カ月。どのようなことを感じていますか。

スタッフの方の就業サポート面談に同席した時に、人材派遣会社はここまでやっているのだと驚きました。面談では労働条件だけでなく、家庭環境やライフスタイル、日頃の悩みから将来の夢までその場の空気感を大切にしながら、親身にヒアリングします。企業とスタッフをスペックだけでマッチングさせるのではなく、一人ひとりに寄り添い、長期的視点で伴走していくというスタンスを徹底しています。スタッフ一人ひとりに最適な就業を企業と共につくることで、社会に活躍の場を生み出していくことができます。理想は“らしさ”の数だけ、働き方がある社会。地道な取り組みですが、これこそが近道だと信じています。

――政府は「一億総活躍社会」に向けたプランを打ち出しています。リクルートスタッフィングは「一億総活躍社会」の実現にどう貢献していきますか。

「時短」や「週4日以下の働き方」に一つの大きなカギがあると考えています。人材派遣サービスは法律によって決まっていることも多く、融通が利かないというイメージがあるかもしれませんが、企業とスタッフの間に我々が入って交渉することで、スタッフの心理的負担を軽減するとともに、要望に少しずつ応えられるようになる可能性があると考えています。育児や介護などで就業を諦めている優秀な人材が本当に多く眠っています。短時間勤務はそのような方々に活躍いただく前向きな手段であることをしっかり伝えていきたい。当社では、短時間勤務で、なおかつ週3~4日の人材派遣の事例も増えています。

「時間と場」の制約は克服できる

――超高齢社会を突き進む日本の労働市場をどう捉えていますか。

日本にとってチャンスと捉えなおしています。労働人口の減少が加速する中、女性はもちろん、介護のために仕事を離れている人、これまではなかなか働けていなかった高齢者や障がいのある方の労働力への期待が大きくなっていきます。人材をマネジメントする側である企業は、多様な人々の多様な働き方を受け入れる仕組みを整えることで、ビジネスの源泉である人材の価値を最大限に引き出し、強く成長していくことができます。

柏村 美生氏

――多様な働き方を実現するためにクリアすべき課題とは何でしょうか。

日本企業が得意としてきたチームビルディングでは、「時間と場所」を共にし一緒に働くことが重視され、これが多様な働き方を妨げる要素にもなってきました。現在はこの「時間と場所」の制約を克服するIT技術が急速に進化しています。就業システムを改革することは簡単ではありませんが、トップの意識が変われば、着実に変わっていくはずです。当社は自社での働き方改革を進めると同時に、企業と共に歩みながら多様な働き方の可能性を広げていきたいと考えています。

リクルートスタッフィングのサービス一例
リクルートスタッフィングのサービス一例
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