「経済センサス‐活動調査」経営判断やビジネス上の意思決定に活用

平成28年6月1日を調査日とする「経済センサス‐活動調査」。この調査結果は主に行政施策に活用されるが、実はビジネスや経営戦略にも役立てることができるという。そこで今回はこの調査結果を企業はどのように活用すべきかについて、統計家の西内 啓氏に話を聞いた。

同じような企業データと比較して経営資源を最適化

——かつて行われていた「産業統計」では、各産業についてそれぞれ所管する各府省がバラバラに調査を行っていましたが、平成21年に初めて実施された「経済センサス」が整備されたことによって全産業分野の経済活動の状態を同一時点で網羅的に把握することができるようになりました。

西内氏:統計を分析する際には、対象となるデータの条件や調査方法が統一されていた方が都合がよいものです。その点において「経済センサス」の実施で、全産業を一元的に捉えたデータセットが構築されたことは、日本の統計において大きな進歩だと思います。また、データが一元化されている上に、同じ企業に対して横断的な質問が聞かれているので、統計を分析することで意外な関係性を発見できるデータになっていることも有益です。

——「経済センサス‐活動調査」の結果は、どのように経営に生かすことができるのでしょうか?

西内氏:活用方法はいろいろあると思いますが、まず考えられるのが会社の“通信簿”的な使い方。事業領域や規模、売上高などが同じような企業の集団データを自社の現状と様々な切り口で比べてみることができます。例えば、売上高に占める人件費の割合などを見ることで、自社の人件費が掛かり過ぎていないか? あるいは逆に、もっと給料を支払うことで良い人材を獲得することが必要なのではないか? などという判断ができます。また、競合する企業群の投資の状況などと比較することで自社の状況を第三者的な視点から捉えることが可能です。多様な側面で、経営判断、意思決定に活用できると思います。

顧客獲得につなげる—BtoBビジネスへの活用

——その他に考えられる利用方法にはどのようなものがあるのでしょうか?

西内氏:もう一歩踏み込んで活用するなら、同じような産業・地域・規模で業績を上げている企業群の様々なデータを、クロス集計といいますが——掛け合わせて分析してみる。その結果、例えば「IT投資を積極的に行っている企業の業績が良さそうだ」ということが見えてくるかもしれません。または「IT投資が大事だと言われているけど、果たしてIT投資比率が高い企業と低い企業では、労働生産性がどのくらい変わってくるのか?」ということが分析できる。これにより投資に対する的確な判断が可能になります。

——そのような分析は専門的な知識がなくてもできるものなのでしょうか?

西内氏:表計算ソフトなどを使えば簡単にできるので、それほどハードルは高くありません。先の例で言えば、最低限IT投資の割合を5段階くらいに分けて、それぞれについて労働生産性や売上に占める営業利益の割合を見ていけばよいのです。

——なるほど。それならデータ分析の専門知識がなくてもできそうです。

西内氏:また、「経済センサス‐活動調査」の結果は、BtoBの領域でビジネスをしている企業にとっては大いに役立つものだと考えています。例えば自社が営業のターゲットと考える「この産業のこのくらいの売上高の企業がどのエリアにどのくらい存在するか?」ということが分かるので、ターゲットとなる企業を見つけやすくなります。具体的には、エリアごとのターゲット企業のボリュームに応じて、営業所を作ったり、集客イベントを行ったりという施策の展開に活用できるでしょう。コンシューマー向けのビジネスを展開する企業に比べると、BtoB企業はあまりマーケットリサーチを行っていません。それはデータが取り難いからという側面もあるのですが、だからこそ「経済センサス‐活動調査」を活用して顧客を捉えることに価値がある。BtoBビジネスというと人間関係だけで営業を展開するイメージが強いですが、これにより既存の人間関係外の潜在顧客とのタッチポイントを作ることが可能になります。

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統計家

西内 啓

兵庫県出身。32歳。統計家。株式会社データビークル取締役。
平成17年、東京大学医学部(生物統計学専攻)卒業。東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長などを経て、経て現在多くの企業のデータ分析および分析人材の育成に携わる。
著書に『コトラーが教えてくれたこと』(ぱる出版)、『サラリーマンの悩みのほとんどにはすでに学問的な「答え」が出ている』(マイコミ新書)、『世界一やさしくわかる医療統計』(秀和システム)、『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)など。

INDEX

  • 第1回インタビュー 総務省統計局長 會田 雅人氏
  • 第2回インタビュー 統計家 西内 啓氏