「経済センサス‐活動調査」経営判断やビジネス上の意思決定に活用

平成28年6月1日を調査日とする「経済センサス‐活動調査」。この調査結果は主に行政施策に活用されるが、実はビジネスや経営戦略にも役立てることができるという。そこで今回はこの調査結果を企業はどのように活用すべきかについて、統計家の西内 啓氏に話を聞いた。

統計データが経営にもたらす価値とは

——さて、「経済センサス‐活動調査」のような公的な統計を企業が活用する価値についてどのようにお考えでしょうか?

西内氏:単純に言えば、これを利用することで調査のコストを抑えられるかもしれないということです。実のところ企業が行う調査の中には、すでに公表されている公的統計を見れば分かるものが意外と多い。単純な集計をして現状把握をしたいだけなら、公表されているものだけでも、結構データは揃ってしまうものです。調査を行う際は、とりあえずわからないから実施するというのではなく、まずは公的な統計などにどのような調査結果があるかを踏まえるべきでしょう。そこで分かること、分からないことを把握して、分からない部分を調査するのが効率的です。

——今や「統計を活用することはビジネスの成功を左右する」とまで言われるようになりましたが、ビジネスで統計を活用する意義について改めて教えてください。

西内氏:きちんとデータを活用することによって、人間には見切れない情報が見られるということです。人間の経験や勘は、その領域の中では精度が非常に高いのですが、今まで見てこなかった領域や、やってこなかった領域ではそれほど役に立ちません。統計データはそういう部分で役に立ちます。それによって、今まで考えもしなかったことや自分が思っていたこととまったく逆の発想、新たな気付きを与えてくれるのです。

統計の活用が日本の経済成長を促していく?

——大企業では統計データの活用については様々な取り組みがされていると思いますが、中小企業はどのように取り組めばよいのでしょうか?

西内氏:初めから、新たに大がかりな組織を構築したり、分析ツールを導入したりする必要はありません。どのような企業でも、社内で表計算ソフトを活用するスキルがある人が1人はいるものです。そういう人の役割を少しずつ拡大していくのが、多くの日本企業にとって現実的でおすすめの方法だと思います。例えば政府統計のポータルサイトである「e-stat」から誰でもダウンロードできる統計データの中には「投資の効果を高める」「よいマーケットを探す」などの課題に対するヒントは眠っています。それほどコストを掛けずとも、そしてそれほど高度な分析ではなくても役に立つ情報を得ることはできます。現在では市販されている本の中にも、初心者でもわかりやすい統計活用の手引書がありますし、例え独学でも担当の方が少し勉強すれば、活用の幅は広がるのではないでしょうか?

——そのような活用の仕方でもビジネスに与えるインパクトはあるものでしょうか?

西内氏:私の経験からお話しすると、今までまったくデータ分析をやってこなかった企業なら売上が数%変わるというところはかなり多いです。例えば十億円の売上がある企業なら売上を数千万円アップできるアイデアが統計データの中には潜んでいるのです。そして、そういうことを毎年繰り返していく企業とそうでない企業の差が、どんどん開いていくのは明らかです。特に「経済センサス‐活動調査」のような公的統計だと、同じ税金を払い、同じ手間を掛けて調査の回答をしているのに、調査結果を活用していく企業は伸びていくし、そうでない企業は競争力を失っていく——。そう考えると活用しない手はありません。また、一つひとつの企業の効果は数%の売上増かもしれませんが、今後統計データ活用が企業のスタンダードとして広がれば、日本全体の経済の底上げにもつながっていくでしょう。

——統計の活用で成功する企業と失敗する企業には何か違いがありますか?

西内氏:統計データをきちんと価値につなげるために必要なことは大きく4つのファクターがあります。1つ目が「データが揃っていること」、2つ目が「分析ができること」、3つ目は「分析後に意思決定できること」、そして、4つ目が「現場を動かすこと」。簡単に言えば、この4つを1サイクルとして回し続けられる企業は成功します。そして、“トライ&エラー”を繰り返して、少しずつそのサイクルを大きくしていくことが重要です。現実にはこのサイクルの内、3つ目、4つ目の要素で壁にぶつかる企業が多く、データを集めて分析して、いざ現場に持っていくと、責任者がデータ活用にあまり積極的ではないということがしばしばあるのです。そこで、私が企業のサポートを行う際には、データ活用に拒否反応がなさそうな部門を探し、そこから導入を進めていきます。それで結果が出れば、はじめは批判的だった他部門でも「じゃあやってみよう」となる。そうやって、サイクルの輪を大きくしていくのが成功させるコツです。データ活用といっても、このような組織的な部分が実は最も難しい点なのかもしれません。

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統計家

西内 啓

兵庫県出身。32歳。統計家。株式会社データビークル取締役。
平成17年、東京大学医学部(生物統計学専攻)卒業。東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長などを経て、経て現在多くの企業のデータ分析および分析人材の育成に携わる。
著書に『コトラーが教えてくれたこと』(ぱる出版)、『サラリーマンの悩みのほとんどにはすでに学問的な「答え」が出ている』(マイコミ新書)、『世界一やさしくわかる医療統計』(秀和システム)、『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)など。

INDEX

  • 第1回インタビュー 総務省統計局長 會田 雅人氏
  • 第2回インタビュー 統計家 西内 啓氏