“見える化”でムダが見えてくる  新時代の業務改善「HIT.s法」

シナノケンシ株式会社 100年企業は未来創造企業へ HIT.s法の導入で働き方改革を実現

100年企業の創造的働き方改革

S-BPI 活動 実績
				有効工数削減時間(累積時間)、実施済み改善提案(累積件数)

S-BPI活動の実績を示したのが上のグラフ。2012年9月の活動開始から4年余りで、実施済みの改善提案は累積7万3795件、有効工数削減時間は累積28万9216時間にも及んでいる。

――S-BPI活動の活動内容は多岐にわたるようですが、とくに毎月定例の「アウトプット検討会」(=別名改善提案検討会)が社員の意識改革を促す大きな仕掛けのひとつになっているようですね。

社員1人ひとりに日ごろから“業務のムダ取り”のための改善策を考えてもらい、私を含む経営陣らも参加する月例の「アウトプット検討会」で発表してもらいます。発表後の表彰式では、2.5件の改善提案につき500円分の図書券1枚を進呈します。

S-BPI活動を開始してから4年余りで支払った図書券代は約1400万円に上りますが、決して高いとは思っていません。なぜなら、これによって累積7万3795件もの改善提案が実施され、“業務のムダ取り”の成果を時間で表す有効工数削減時間も累積で28万9216時間に及んでいるからです(2016年11月1日時点)。もちろん今後も継続的な改善活動によって、創出できる時間はどんどん増えていくでしょう。

働き方改革が謳われる時代、経営は精神論ではなく理屈で行わなければなりません。ムダな作業に費やす時間が減れば、設計や技術開発といった生産性の高い業務により多くの時間が使え、一方では社員の残業時間が減ってワークライフバランスが改善されます。会社としての成長力アップと、社員1人ひとりの生活の質の向上が両立できるわけです。

実際、S-BPI活動を開始してからの4年余りで、当社の社員1人当たりの月平均残業時間は、それまでの約11時間から約7時間に短縮されました。世間的に見てもかなりの低水準だとは思いますが、まだ満足はしていません。創業100周年を迎える2018年までには、現在も実質的に週4日の「ノー残業デー」を週5日にするつもりです。つまり、原則毎日を「ノー残業デー」とすることが当面の目標です。

――HIT.s法に基づく業務改善は、時間短縮以外の部分でも成果を上げているようですね。

社員への自己研鑽機会の提供や、人員配置の最適化などにも結び付いていますね。ムダな間接業務の時間が減れば、当然ながら社員が新しい技術やスキルを学べる機会は増えます。

システム科学からのアドバイスで取り入れたことのひとつに、共通業務をマニュアル化し、人員が足りないときは、ほかの部門などの人員がバックアップするという仕組みがありますが、これを実現するには、より多くの社員が共有マニュアルを活用して、自分の持ち場以外の業務にも柔軟に対応できる体制を整えなければなりません。実際、業務改善による効率化によって社員に「学ぶ余裕」が生まれたことで、繁忙期でも限られた人員で対応できる底力がついてきたように感じます。

また、HIT.s法を使って業務プロセスを”見える化”すると、それぞれの業務に誰が対応できて、誰ができないのかという現状も把握できます。適切な人材配置を実現するだけでなく、スキルアップが求められている人材が見つけやすくなるわけです。

このほか、働き方と直接の関わりはありませんが、HIT.s法を使うと業務システムの要件定義が合理化できることも大きなメリットだと言えます。ムダをそぎ落とした業務プロセスに沿って設計できるので、余分な機能がなくなり、開発コストも抑えられるのです。

――創業100周年に向けての抱負を聞かせてください。

当社もS-BPI活動を通じて、社員の業務改革に対する意識や行動力はどんどん高まっていますし、HIT.s法という改革のための“共通言語”を得たことで、部門同士のコミュニケーションが以前にも増して緊密になっていることを実感しています。

当社はこれまでも独自技術で勝負してきましたが、社員が創造的に働ける時間をより多く手に入れたことで、その強みにますます磨きがかかり、次の100年に向けてさらなる成長を遂げていくことを期待しています。

シナノケンシ株式会社 代表取締役社長
金子 元昭氏 Motoaki Kaneko
用語 解説
カウンセル HIT.s法は、人材育成型カウンセル活動。一般的に「コンサル」はヒアリング方式でコンサルタントが業務の可視化を行い改善手法を示唆するのに対し、「カウンセル」では、活動の主役は活動する担当者自身が行う。
基本活動 HIT.s法の前半6カ月の活動を指す。社内で1人ひとりが分担する業務をSチャート化し、身の回りのムダ取り改善を通じてHIT.s法の基礎を習得。6カ月で15%の節減効果を目指す。
専門活動 HIT.s法の後半6カ月の活動を指す。基本活動の成果を基に、システム構築の見直しや人材育成の仕組みづくり、リードタイム短縮などの企業ニーズに合わせた活動を行う。
テーマ活動 基本活動で見つけた大きな改善(改善テーマ)について、問題となる業務を業務体系から特定し、各種チャート精度を向上しながら改善方法を策定し実施していく。
Sチャート StraightChart(ストレートチャート)の略語。HIT.s法の基本となるチャートで、各業務の作業手順を表す図。 Sチャートで使用する作業記号により、作業のムダを誰もが同一目線で把握することができる。
Bチャート BlockChart(ブロックチャート)の略語。業務体系図をベースとし、部門内の業務の流れをマクロ的に把握することができる。
Mチャート ManagementChart(マネジメントチャート)の略語。Bチャートを全社的に網羅し、全社機能を一目で把握することができる。
業務体系 業務の機能を4階層構造でまとめたもの。一番下の階層である4次業務にはSチャートが格納されている。
アウトプット検討会 HIT.s法基本活動の進捗状況と成果、および課題を経営者・管理者・担当者の三者で共有するための月に1度の報告会。各部門リーダーからの進捗発表、改善提案書の事例発表、活動における課題の共有と解決を目的に開催する。
進捗管理表 各担当者ごとの可視化進捗状況を数値で可視化した一覧表。
改善提案書 自身の業務プロセスにおいて、共通フォーマットにテーマや改善内容、Sチャートを使った改善の詳細、改善効果(年間作業量・リードタイム・年間削減費用)を記載したもの。
有効工数 Sチャートを構成している作業の原単位(単位作業)で、作業間に中断・手待ち・休憩などのロスを含まない最短時間を指す。
可視経営協会 2011年に発足したHIT.s法の教育・資格認定などの事業、および普及活動を行うための一般社団法人。
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