“見える化”でムダが見えてくる  新時代の業務改善「HIT.s法」

シナノケンシ株式会社 100年企業は未来創造企業へ 7つのポイントが“働き方改革”を成功に導く

推進チーム構築による活動の活性化

S-BPI活動の“司令塔役”のひとつである業務連携改革本部 BPR推進室 業務改革チームのミーティング風景。活動をしっかり推進させるため、他部門との兼任体制ではなく、専任チームによって運営が行われている。

HIT.s法の活用により、改善提案書には年間削減できる時間まで記載することができる。書類の転記など、複数の部署で同じ作業をするムダでリスキーな業務は、チャートに落とし込むことで一目瞭然だ。

すでに基礎活動、専門活動の段階を終え、現在は全社を挙げて定着活動を推進。個別テーマごとにHIT.s法のチャートを使って課題を浮かび上がらせ、改善策を検討する。HIT.s法のカウンセル活動と一般的なコンサル活動との大きな違いは、活動終了後もこうして企業が自主的、継続的に活動できる定着方法にある。

シナノケンシのS-BPI活動は、2014年9月から全社における定着活動に入った。

活動開始から2年余りの間に全16部門、44ブロック、470名の社員が基本活動、専門活動をひと通り終え、部門ごと、ブロックごと、社員ごとに個別のテーマに沿った改善活動に取り組んでいくフェーズに移行したのである。

この段階に至って、同社はS-BPI活動を継続的に活性化させていくため、それまで兼任体制で編成していた活動推進チームを専任スタッフによる固定組織に変更した。清水氏が成功ポイントの3つ目として挙げた「推進体制の構築」である。

2016年度には、活動推進チームを格上げして「業務連携改革本部」を新設。その下にBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)推進室を置き、業務改革、IT改革の2チームを設けて全社の改革活動を支援する体制を整えた。

また、4つ目のポイントである「進捗管理の仕組みづくりと見える化」については、全44ブロックのブロックリーダーが毎月末に改善の進捗状況を「進捗管理表」「改善提案一覧表」「有効工数表」など6種類のファイルにまとめて報告・共有する仕組みを確立。社員1人ひとりが毎月2件以上の改善提案を行うという目標を掲げ、その達成を“見える化”の仕組みによって促している。

このように活動の舞台をしっかりと整えた上で、シナノケンシは現在、清水氏が5つ目のポイントとして挙げる個別テーマに沿った改善活動を推し進めている。

HIT/S-BPI活動運営チームの功績
シナノケンシ株式会社
業務連携改革本部BPR推進室
業務改革チーム 係長

小池 伸一

Shinichi Koike

BPR推進室 業務改革チームの係長として活動を率いる小池伸一氏は、「基本活動、専門活動に取り組んだ約2年間は準備段階。それらを終えた2014年9月から、いよいよ『S-BPI活動』の本番がスタートしました。当然ながら、テーマ活動は非常に多岐にわたります。例えば『新機種の立ち上げ』というテーマについては、『HIT.s法』に基づいて『案件登録』から『開発着手』『設計審査』『設計検証』『妥当性の確認』というプロセスに沿った『Mチャート』を作成し、その中から、営業、見積もり、開発、生産などの機能ごとに抱えるテーマ(課題)を浮かび上がらせ、解決していきます」と語る。

営業関連のテーマであっても、営業だけでなく設計担当も関わり、開発テーマについては営業・設計・調達担当の三者が一体となって課題解決に取り組むといったように、部門の垣根を越えた活発な活動が繰り広げられている。

社員のモチベーション向上のためにできること

膨大な量の書類の廃棄など、HIT.s法のムダ取りによって新たに生まれたスペースがミーティングで活用されている様子。離れた会議室まで移動せずに打ち合わせができるようになったため、その分のムダな時間も削減できている。

シナノケンシのS-BPI活動において、社員のモチベーション向上にひと役買っているのが6つ目のポイントである「S-BPI社内資格認定制度」だ。(図-1)

シナノケンシのS-BPI活動をグローバルに展開するとともに、徹底した業務の効率化を図り、最少投入で最大効果を生み続ける風土を作る」という目的のもとに設立された同社内制度の資格には、HIT.s法の資格制度である一般社団法人可視経営協会の「事務革新士(ベーシック)」に準じる「BPI-B(ベーシック)資格」と、同じく「業務革新士(ミドル)」に準じる「BPI-M(マネジメント)資格」の2種類があり、前者は係長以上、後者は課長以上が取得必須としている。社内の有資格者は2016年12月1日時点で「BPI-B」が221名、「BPI-M」が10名に達した。

このほか、同社では22名の社員が可視経営協会の「事務革新士」、9名が「業務革新士」の資格を取得しており、改革への“やる気”がいかに社内に満ちているのかを示している。

7つ目のポイントである「表彰制度」では、前回、金子代表取締役社長も挙げたように、毎月の「アウトプット検討会」で行われる改善提案への表彰がモチベーションアップの大きな原動力になっているようだ。社員の改善提案2.5件につき500円分の図書券を進呈するこの制度は、S-BPI活動を推進する大きな力のひとつとなっている。

また、2016年9月には「S-BPI改善提案賞」「BPRⅡテーマ活動賞」という社内の表彰制度を新設。それぞれ月間MVP、年間MVPを選出するという取り組みも始めた。

7つのポイントでビジネスプロセス革新を成功に導いたシナノケンシ。part.3では、実際の現場や個別業務ごとの具体的な改革の成果について見ていくことにしよう。

S-BPI資格認定と昇格試験の流れ(図-1)

「S-BPI資格認定」と昇格試験の流れ。「BPI-B資格」は係長以上、「BPI-M資格」は課長以上の必須資格となっており、資格認定後も3年に1回、スキルチェックが行われる仕組みだ。なお、元となるHIT.s法の活動推進メンバーになるためには、可視経営協会の資格取得が必要。

用語 解説
カウンセル HIT.s法は、人材育成型カウンセル活動。一般的に「コンサル」はヒアリング方式でコンサルタントが業務の可視化を行い改善手法を示唆するのに対し、「カウンセル」では、活動の主役は活動する担当者自身が行う。
基本活動 HIT.s法の前半6カ月の活動を指す。社内で1人ひとりが分担する業務をSチャート化し、身の回りのムダ取り改善を通じてHIT.s法の基礎を習得。6カ月で15%の節減効果を目指す。
専門活動 HIT.s法の後半6カ月の活動を指す。基本活動の成果を基に、システム構築の見直しや人材育成の仕組みづくり、リードタイム短縮などの企業ニーズに合わせた活動を行う。
テーマ活動 基本活動で見つけた大きな改善(改善テーマ)について、問題となる業務を業務体系から特定し、各種チャート精度を向上しながら改善方法を策定し実施していく。
Sチャート StraightChart(ストレートチャート)の略語。HIT.s法の基本となるチャートで、各業務の作業手順を表す図。 Sチャートで使用する作業記号により、作業のムダを誰もが同一目線で把握することができる。
Bチャート BlockChart(ブロックチャート)の略語。業務体系図をベースとし、部門内の業務の流れをマクロ的に把握することができる。
Mチャート ManagementChart(マネジメントチャート)の略語。Bチャートを全社的に網羅し、全社機能を一目で把握することができる。
業務体系 業務の機能を4階層構造でまとめたもの。一番下の階層である4次業務にはSチャートが格納されている。
アウトプット検討会 HIT.s法基本活動の進捗状況と成果、および課題を経営者・管理者・担当者の三者で共有するための月に1度の報告会。各部門リーダーからの進捗発表、改善提案書の事例発表、活動における課題の共有と解決を目的に開催する。
進捗管理表 各担当者ごとの可視化進捗状況を数値で可視化した一覧表。
改善提案書 自身の業務プロセスにおいて、共通フォーマットにテーマや改善内容、Sチャートを使った改善の詳細、改善効果(年間作業量・リードタイム・年間削減費用)を記載したもの。
有効工数 Sチャートを構成している作業の原単位(単位作業)で、作業間に中断・手待ち・休憩などのロスを含まない最短時間を指す。
可視経営協会 2011年に発足したHIT.s法の教育・資格認定などの事業、および普及活動を行うための一般社団法人。
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